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第5話 あの日から今日までの出来事 俯瞰視点(4)
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「サイモン殿下。お願いしたいことがあるのですが、聞いていただけますでしょうか?」
それはビアンカが快復し、ようやく全ての治療が終わった日のこと。新たな住居に案内するべく、サイモンが自ら馬車へと案内をしていた時でした。
ずっと綻んでいたビアンカの顔が、急に神妙なものへと変化したのです。
「もちろん。……ただならぬことがあったようですね。どうされたのですか?」
「あの日力尽きて倒れ、殿下に助けていただいた場所。私は今すぐに、そちらに行かなければならないようなのです」
サイモンの隣を歩いていると、突然胸の奥――身体の中心が熱くなり、あの場所に魂が呼ばれているような感覚が生じるようになりました。そのため用意してもらった住居へと向かう予定がありましたが、このように訴えていたのです。
「これから向かおうとしている場所とは、正反対になってしまうのですが……。殿下。どうか、お願い致します」
「そういうものが発生しているのであれば、感覚に従っておくべきでしょうね。分かりました。それではまず、そちらに向かいましょう」
性質上サイモンは元々、現地まで自らが案内をすると決めていました。ですので9人の御者と初老の女性にその旨を伝えたあと、ビアンカと共に馬車に乗り込みました。
2人や護衛達が乗る馬車と、その後ろに続く馬車7台。
計8台の馬車が清々しい空の下を走り、やがて目的地に到着。サイモンの臣下が周囲の安全を念入りに確認したあと2人は馬車を降り、あの大樹の傍へと――ビアンカの魂を呼んでいる場所へと、移動しました。
「『何か』は私がここに立つことを望んでいて、その感覚は――体内にある熱さは、次第に大きくなってきています。恐らく…………この方向から、もうすぐ何かしらがやって来るようです」
「森の中から、ですか。いったい、何がやってくるのでしょうね?」
サイモン自身にも、剣の心得がありました。ですので念のため臣下と共に得物を抜いた状態で待ち、そうしているとやがて――
「あ、貴方は……。サイモン、でんか……!?」
ビアンカの心身を傷付けた元凶である、グスターヴが現れたのでした。
こうして『希望』と『絶望』は、静かに動き始めたのでした――。
それはビアンカが快復し、ようやく全ての治療が終わった日のこと。新たな住居に案内するべく、サイモンが自ら馬車へと案内をしていた時でした。
ずっと綻んでいたビアンカの顔が、急に神妙なものへと変化したのです。
「もちろん。……ただならぬことがあったようですね。どうされたのですか?」
「あの日力尽きて倒れ、殿下に助けていただいた場所。私は今すぐに、そちらに行かなければならないようなのです」
サイモンの隣を歩いていると、突然胸の奥――身体の中心が熱くなり、あの場所に魂が呼ばれているような感覚が生じるようになりました。そのため用意してもらった住居へと向かう予定がありましたが、このように訴えていたのです。
「これから向かおうとしている場所とは、正反対になってしまうのですが……。殿下。どうか、お願い致します」
「そういうものが発生しているのであれば、感覚に従っておくべきでしょうね。分かりました。それではまず、そちらに向かいましょう」
性質上サイモンは元々、現地まで自らが案内をすると決めていました。ですので9人の御者と初老の女性にその旨を伝えたあと、ビアンカと共に馬車に乗り込みました。
2人や護衛達が乗る馬車と、その後ろに続く馬車7台。
計8台の馬車が清々しい空の下を走り、やがて目的地に到着。サイモンの臣下が周囲の安全を念入りに確認したあと2人は馬車を降り、あの大樹の傍へと――ビアンカの魂を呼んでいる場所へと、移動しました。
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「森の中から、ですか。いったい、何がやってくるのでしょうね?」
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「あ、貴方は……。サイモン、でんか……!?」
ビアンカの心身を傷付けた元凶である、グスターヴが現れたのでした。
こうして『希望』と『絶望』は、静かに動き始めたのでした――。
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