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第2話(3)

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「会長殿に、殿下を暗殺するメリットがありません。だとすると彼は手先であり、犯人は別にいることになりますよね?」

 左手をあげていたライアンさんは、苦虫を噛み潰したようなお顔でお口を動かしました。
 ええ、そうなのです。どこかに指示を出した者、即ちアシル様を亡き者にしようとしている者がいます。

「……一体誰が、僕を狙っているんだ……? 混入させられるのはシェフのみなのだけれど、彼らにもメリットがない、が……」
「実行犯である料理人も十中八九、指示を出された一人ですよね。……考えたくは、ないのですが……」

 ライアンさんは更に難しい顔をして、続けます。

「専属薬師と城内のシェフを操ることができて、殿下がお命を落とせば得をする人物……。それは、陛下の御兄弟……」
「そうですね。その方々しか、いません」

 第二王子の、ヤウヘル様。第三王子の、サザレ様。第四王子の、ベルス様。王位継承権があるこの3人の誰かが――あるいは3人全員が、犯人です。

「……僕も疑いたくはないけれど、そう判断せざるをえないね……。弟の誰が、黒幕なんだ……?」

 一番怪しいのは、序列2位のヤウヘル様。ですがヤウヘル様に何かがあればサザレ様、サザレ様になにかあれば、ベルス様が次期国王となります。
 その気になれば何人でも病死として排除できるので、序列だけで判断はできません。

「陛下にお伝えすれば、王子といえど徹底的に調査をできますが……。この行為は大罪、発覚すれば処刑は免れません。自身に矛先が向かないようあれこれ対策をしているはずで、下手に動くと犯人特定の好機を逃してしまいますね……」
「はい。わたしも、そう思います。ですのでこれからわたしが、薬師の知識を使って見つけだしますよ」

 前世のわたしは、もしも来世で何かあっても助けられるように、という気持ちも持って、薬師としての腕を磨き続けました。今世ではそれらを活かして、愛する人を支えます。




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