前世で薬師だったことを思い出したので、今度こそ愛する人を救います

柚木ゆず

文字の大きさ
8 / 31

第2話(4)

しおりを挟む
「ソフィア……。薬師の力で、そんなことができるのかい……?」
「世界一の薬師なら、できてしまうのですよ。ただそれには複数の素材や作業が必要でして、しばらく時間がかかってしまいます」

 あらゆる素材や道具を保管していたかつての工房は、とっくになくなっていますからね。最低でも、1週間前後は必要になります。

「ソフィア様。人員を割いて、それらを調達――してしまえば、相手に悟られてしまいますね」
「他にも仲間がいて犯人に知られたら、こちらのアドバンテージがなくなってしまう。そこで『気付いていないフリをして泳がせる』が一番だと思う、けど……。そうしたら、毒を飲まないといけなくなってしまうね……」

 料理人が仲間であるのなら、食べ具合をチェックして都度報告しているはず。残すなどをしていたら怪しまれて、同じくアドバンテージを失いかねません。

「自分が別の食事を用意して、本来の夕食は捨てる。それ自体は簡単なのですが、仲間の数などが不明でしたら……。目撃、されてしまう可能性もありますね……」
「かと言って一週間飲み続けるのは、危険……。参ったな……」
「いえ、そこは問題ありませんよ。同時に有害成分を出す薬を服用すれば、それは無害となりますからね」

 先述した、排出を手伝う薬。あれを飲みつつ過ごせば、敵に微塵も悟られずに済みます。
 言わずもがな、それまで故意に毒を飲むのは好ましくないのですが――。完成は明日ですしその日に排出を始められるので、悪影響はほぼありません。

「ですので目的の薬を作る前に、排出用のお薬を作りたいと思います。こちらはその日のうちに完成しますから、そうですね。明日は山で回復を祈るなどと偽り外出して、薬を作って戻ってきます」
「……ソフィア、ありがとう。僕は独りでも大丈夫だから、ライアンに同行をお願いしするよ」
「回復祈願でしたら、自分がご一緒しても怪しまれません。お供させていただきます」
「ぁ、いえ。お気持ちはとても有り難いのですが、ライアンさんは念のため、こちらに残っていて欲しいのですよ」

 ないとは思いますが、犯人が新たな手を追加する危険性があるにはあります。もしかしたらお一人では対処しきれないケースがあるかもしれませんから、頭を下げて不参加をお願いしました。

「畏まりました。ですが、それでしたらほかの――失礼致しました。ご実家には、彼女がいましたね」
「はい。メリッサさんにお願いして、ついてきてもらいます」

 美人で頭がよくて、何でもできてしまう完璧なお姉さん。ライアンさんの婚約者がいるので安心で、こうしてわたしの予定は決まったのでした。


 ……待っていてくださいね、アシル様。今度こそ、お助けしますから。














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を交換しましょう!

しゃーりん
恋愛
公爵令息ランディの婚約者ローズはまだ14歳。 友人たちにローズの幼さを語って貶すところを聞いてしまった。 ならば婚約解消しましょう? 一緒に話を聞いていた姉と姉の婚約者、そして父の協力で婚約解消するお話です。

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

処理中です...