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第21話 最後の幸せを味わうのは 俯瞰視点(5)
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「あっ、貴方様はっ! 貴方様はあのおん――えっ、エレーヌに特別な感情を抱かれているのですよねっ? それ故に、激しくお怒りになられているのですよねっ?」
自称『名案』が浮かんだ、アルノー。エレーヌへの好意が前提にあると確信していた彼は、低姿勢でリュドヴィックを見つめました。
「エレーヌはっ、大切なおん――たっ、たびたびすみませんっ! エレーヌはとても大切な人っ! ゆくゆくは婚約、結婚をされたい人っ。そう思われているのですよねっ?」
「……そうだね。それがなにか?」
「リュドヴィック様っ、そちらは非常によろしくない選択肢だと献言#致します! その理由を速やかにお伝えしますのでっ、可及的速やかに言い切りますのでっ! どうかそのままお聴きくださいませっ!!」
遮られてしまったらお仕舞だ。そんな理由でアルノーは高速で舌を動かし、リュドヴィックからの返事がやって来る前に、再び口を開きます。
「エレーヌはですねっ、つい先週まで俺の婚約者候補でしたっ! 俺の婚約者になりたいという強い強い意思を持ち、3年間それだけを目標にし続けてきたのでございますっ!」
「……そこに関しては、ご本人の口から聞いている。アルノー、それがなんなんだ?」
「そしてっ、最終試験直前で起きたトラブルを原因としてっ、俺のために辞退をしているのですっ! つまり彼女の心は、未だに俺へと向いているのですっ!」
アルノーはずっと、あれは苦渋の決断だと思っています。ですのでそう明言し、
「なのにわずか数日で、貴方様とのご縁が生まれましたっ! 貴方様と出会い、恋に落ちたということになっていますっ!」
殊更、ラストを強調。そうではないと暗に伝え、続けます。
「俺を今なお想っているものが、数日後に恋をするっ? そんなことが起こり得るはずがありませんっ! エレーヌには大きな大きな他意がありっ、貴方様の地位っ、有力侯爵の夫人という部分に強く興味を持っているのです! ですのでその実そこに愛はなくっ、その関係は打算しかないひどいものなのでございますよっ!」
この御方は大切な人を傷付けようとしたから、激しくお怒りになられている。
だったら、エレーヌを『大切な人』ではなくしてしまえばいいっ!
実際にヤツはその通りなのだから、ちゃんと説明をすればいける! 成功できる!!
彼は事実の誤認によってそんな計画を立て、上手く振る舞えば今を乗り切れる、と確信していました。そのためここから更に、上手く振舞おうとするのですが――
「そもそもっ! 実を言いますと、エレーヌ・エリュレールという女は以前からそういった節があったのでございますっ! 俺ではなく侯爵を目当てにしているどうしようもない女と感じていて、婚約者候補の中でも下の下っ。断トツの最下位に位置し続けた、クソ女なのでございますよ!」
彼はその方法として、嘘を交えてエレーヌをこき下ろす、というものを使用してしまいました。それによってアルノーは、知らず知らず地雷を踏んでしまい――
自称『名案』が浮かんだ、アルノー。エレーヌへの好意が前提にあると確信していた彼は、低姿勢でリュドヴィックを見つめました。
「エレーヌはっ、大切なおん――たっ、たびたびすみませんっ! エレーヌはとても大切な人っ! ゆくゆくは婚約、結婚をされたい人っ。そう思われているのですよねっ?」
「……そうだね。それがなにか?」
「リュドヴィック様っ、そちらは非常によろしくない選択肢だと献言#致します! その理由を速やかにお伝えしますのでっ、可及的速やかに言い切りますのでっ! どうかそのままお聴きくださいませっ!!」
遮られてしまったらお仕舞だ。そんな理由でアルノーは高速で舌を動かし、リュドヴィックからの返事がやって来る前に、再び口を開きます。
「エレーヌはですねっ、つい先週まで俺の婚約者候補でしたっ! 俺の婚約者になりたいという強い強い意思を持ち、3年間それだけを目標にし続けてきたのでございますっ!」
「……そこに関しては、ご本人の口から聞いている。アルノー、それがなんなんだ?」
「そしてっ、最終試験直前で起きたトラブルを原因としてっ、俺のために辞退をしているのですっ! つまり彼女の心は、未だに俺へと向いているのですっ!」
アルノーはずっと、あれは苦渋の決断だと思っています。ですのでそう明言し、
「なのにわずか数日で、貴方様とのご縁が生まれましたっ! 貴方様と出会い、恋に落ちたということになっていますっ!」
殊更、ラストを強調。そうではないと暗に伝え、続けます。
「俺を今なお想っているものが、数日後に恋をするっ? そんなことが起こり得るはずがありませんっ! エレーヌには大きな大きな他意がありっ、貴方様の地位っ、有力侯爵の夫人という部分に強く興味を持っているのです! ですのでその実そこに愛はなくっ、その関係は打算しかないひどいものなのでございますよっ!」
この御方は大切な人を傷付けようとしたから、激しくお怒りになられている。
だったら、エレーヌを『大切な人』ではなくしてしまえばいいっ!
実際にヤツはその通りなのだから、ちゃんと説明をすればいける! 成功できる!!
彼は事実の誤認によってそんな計画を立て、上手く振る舞えば今を乗り切れる、と確信していました。そのためここから更に、上手く振舞おうとするのですが――
「そもそもっ! 実を言いますと、エレーヌ・エリュレールという女は以前からそういった節があったのでございますっ! 俺ではなく侯爵を目当てにしているどうしようもない女と感じていて、婚約者候補の中でも下の下っ。断トツの最下位に位置し続けた、クソ女なのでございますよ!」
彼はその方法として、嘘を交えてエレーヌをこき下ろす、というものを使用してしまいました。それによってアルノーは、知らず知らず地雷を踏んでしまい――
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