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第2話 それぞれの翌日~母ミアと妹クララの場合 俯瞰視点
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「ふぅ。良い気分だわ」
次の日の午後4時前。ミアはお屋敷にの二階部にあるバルコニーで、優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいました。
「うふふ。わたくし色に染まってゆく『城』で飲むお茶は格別ね」
昨日(さくじつ)マドゥレーヌがいなくなったことでお屋敷の中に前妻の血はなくなり、完全に前妻の『影』はなくなりました。
お屋敷からも使用人の記憶からもドンドンと、自分ではない色が消えていく。ようやく名実ともに、自分自身が真の当主夫人となれる。
それが、嬉しくて仕方がなかったのです。
「次の世代はクララの血を引く者が担うことになるし、この先もずっとわたくしの『血』が頂点を担っていく。くふふ。最高ね。素晴らしいわ!!」
パンパンパンと手を叩いて高笑いを響かせ、アールグレイを満喫する。
ミアはここ数年で最も充実した時間を過ごし――ていたのですが、それからおよそ30分後のことでした。最近お気に入りの甘いガレットを食べている最中に、心の中が快晴から雷雨となる出来事が発生してしまうのでした。
「ふふ、美味しい。いくらでも食べられてしまう――きゃあ!? なんなのよこの虫! 落としてしまったじゃない――…………」
突如顔に虫が飛んで来て、驚き立ちあがる。その拍子にナイフとフォークを床に落としてしまい、舌打ちをしたミアの顔があっという間に真っ青になってしまいました。
なぜならば――
「交差してる……」
床に転がっていたカトラリー2つが、重なり合って落ちていたから。
不幸が起きる前触れとされていることが、起きていたからです。
「……こんな形になることなんて、有り得ない……。今までの人生の中で、なったことも見たこともないわ……。…………まさか――」
〇〇〇
「……………………」
同時刻。招待されたお茶会からお屋敷へと戻る途中、馬車に不具合が発生したため止まって修理の完了を待っている時のことでした。『わたしが乗っている時に壊れるだなんて……!』と顔を真っ赤にして怒っていたクララは、顔を真っ青にして身体を震わせていました。
なぜならば――
「ぎゃあ!? なんなのよもう……! こんな時に――く、黒猫……」
待つために座っていた椅子の脚が突然壊れ、地面に尻もちをついてしまう。そんな状態のクララの前を、黒猫の親子4匹が目の前を横切ったから。
不幸が起きる前触れとされていることが、起きたからです。
「……急に椅子が壊れた上に……。1匹でもダメと言われているのに、4匹もだなんて……! なにかあるとしか、思えませんわ……。…………まさか――」
次の日の午後4時前。ミアはお屋敷にの二階部にあるバルコニーで、優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいました。
「うふふ。わたくし色に染まってゆく『城』で飲むお茶は格別ね」
昨日(さくじつ)マドゥレーヌがいなくなったことでお屋敷の中に前妻の血はなくなり、完全に前妻の『影』はなくなりました。
お屋敷からも使用人の記憶からもドンドンと、自分ではない色が消えていく。ようやく名実ともに、自分自身が真の当主夫人となれる。
それが、嬉しくて仕方がなかったのです。
「次の世代はクララの血を引く者が担うことになるし、この先もずっとわたくしの『血』が頂点を担っていく。くふふ。最高ね。素晴らしいわ!!」
パンパンパンと手を叩いて高笑いを響かせ、アールグレイを満喫する。
ミアはここ数年で最も充実した時間を過ごし――ていたのですが、それからおよそ30分後のことでした。最近お気に入りの甘いガレットを食べている最中に、心の中が快晴から雷雨となる出来事が発生してしまうのでした。
「ふふ、美味しい。いくらでも食べられてしまう――きゃあ!? なんなのよこの虫! 落としてしまったじゃない――…………」
突如顔に虫が飛んで来て、驚き立ちあがる。その拍子にナイフとフォークを床に落としてしまい、舌打ちをしたミアの顔があっという間に真っ青になってしまいました。
なぜならば――
「交差してる……」
床に転がっていたカトラリー2つが、重なり合って落ちていたから。
不幸が起きる前触れとされていることが、起きていたからです。
「……こんな形になることなんて、有り得ない……。今までの人生の中で、なったことも見たこともないわ……。…………まさか――」
〇〇〇
「……………………」
同時刻。招待されたお茶会からお屋敷へと戻る途中、馬車に不具合が発生したため止まって修理の完了を待っている時のことでした。『わたしが乗っている時に壊れるだなんて……!』と顔を真っ赤にして怒っていたクララは、顔を真っ青にして身体を震わせていました。
なぜならば――
「ぎゃあ!? なんなのよもう……! こんな時に――く、黒猫……」
待つために座っていた椅子の脚が突然壊れ、地面に尻もちをついてしまう。そんな状態のクララの前を、黒猫の親子4匹が目の前を横切ったから。
不幸が起きる前触れとされていることが、起きたからです。
「……急に椅子が壊れた上に……。1匹でもダメと言われているのに、4匹もだなんて……! なにかあるとしか、思えませんわ……。…………まさか――」
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