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3話(1)

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「シャルロッテ姉さん。……情報が手に入ったよ」

 次の日の、午後7時過ぎでした。昨日(さくじつ)のように私のお部屋にお通ししたら、アロイス様は気まずそうな顔を作りました。

「ただしソレは、かなり伝えにくい内容になってるんだ。注意して、聞いてね?」
「はい。お願いします」

 真実に繋がるかもしれませんから、どんな内容でもお聞きします。アロイス様が手に入れた情報とは、一体なんなのでしょうか?

「うん、じゃあ伝えるね。……兄様は、昨日の深夜――厳密に言うと、今日の深夜だね。お屋敷をコッソリ抜け出して、異性の家に行ってたみたいなんだよ」

 深夜。抜け出す。異性。
 短い台詞の中には、念を押すだけの要素が沢山詰まっていました。

「午前3時、くらいかな。たまたまトイレになって起きたら、兄様と従者が裏門からコッソリ入ってきてるのが見えたんだよ。それで隠れて聞き耳を立てていたら、家に入る前に『殿下、せめて自分にだけはお教えください。なぜこのタイミングで、モリワール侯爵家を訪問されたのですか?』と話してたんだ」
「…………モリワール家。生徒会の副会長、アリナ・モリワール様のお家ですね」

 生徒会長・ノルベルト様の片腕として学内で活躍されている、太陽のように明るく元気な方。容姿端麗で頭脳明晰、なのに少しも威張らないため、学舎内外で人気が高い同級生の方です。

「次の国王になる王太子が夜中に内緒で、しかも外出用の護衛ではなく従者のみで出掛けるなんて普通じゃない。おまけにヒソヒソ話によると、従者は馬車内で待機させてた――極力周りに漏れないようにしていた。だとしたら兄様がやっているコトは、知られたらマズイこと。つまり、浮気の可能性が高いんだよ……」
「実は婚約中もモリワール様と会っていて、そちらへの愛が上回ってしまった。そのような理由での婚約の破棄はかなりの非難を浴びるため、どのみちダメージを受けてしまうものの、よりソレが少ないものを選んだ。そういう推理、なのですね?」
「……うん、そうだよ。兄様は昨日までは、顔だけじゃなくて性格もよくって、小さな頃から女の子に大人気だった。きっと今回も好意を打ち明けられていて、その相手は美人でよく知ってる人――良い部分を、たくさん知ってる人。そうなっちゃう可能性は、かなりあると思うんだ」

 殿下と会って、好感を抱かない女性はいない。そう言われるほどに、魅力的でおもてになる方です。
 そしてお相手は同性の私でも素敵と感じる長所が多くある人なのですから、仰る通りその可能性はありえますよね。

「昨日の悲しげで苦しそうな顔は、姉さんへの愛があるにはあったから。罪悪感が一応心の中にあったから、ああなったんじゃないかな?」
「…………。そう考えるのが自然………………なのかもしれませんが……。私には、違うように思えるんですよね……」

 あの表情には、そういった意味が含まれていなかったように見えました。そして一昨日までは、私だけに愛を向けてくださっていたように感じます。
 理路整然とはしているですが、しっくりはきません。

「折角伝えに来てくださったのに、すぐ否定してしまいごめんなさい。失礼をお許しください」
「どんなに正解っぽくてもコレは所詮俺の推測なんだし、謝らないで。それに俺がここに来たのは、これを伝えるためだけじゃないんだしね」

 正面に頭を下げていると、横への首振りが3回ありました。
 ぁ、他にもあったのですね。そちらは、なんなのでしょうか?

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