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3話(2)

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「『この件は、誰にも言えないんだ。すまないが明日の夜も、黙ってついてきてくれ』。あのあと兄様は、従者にこう返してたんだよね」

 首を横に3回振ったアロイス様は、ニヤリ。小さな犬歯を覗かせました。

「時間帯と小声で油断をして、俺に次の日の予定まで教えちゃった。だから現場に行って証拠を押さえられて、その件に関してしーっかりと問い詰められるんだよ」
「なるほど……。昨日は、そういうやり取りもあったのですね」

 よくよく考えてみると、先の従者さんの台詞は質問でした。問われたのなら当然、答えていますよね。

「参加メンバーは俺と、いま下で待ってくれてる俺の従者と王直属の護衛数名、あとできれば姉さん。家族、お城の人間、お城外の人間であり張本人に見られたら、隠蔽のしようがない――全てを吐かざるを得なくなる。ここに来た一番の目的は、事情聴取のお誘いなんだよ」
「仰る通り、ですね。その数でしたら、説明が不可欠になります」

 目撃者のバランスが取れていて、捏造と言い訳もできません。これなら、こちらが知りたいものを聞き出せます。

「この世で一番真実を知りたいのは、シャルロッテ姉さん。絶対に参加するよね?」
「はい。お父様とお母様に説明をして、同行させていただきます」

 外出と帰宅が深夜になりますが、今回は特別な事態です。それにアロイス様達もいてくださいますから、必ず許可をいただけますよね。

「兄様達がいつ出発するかは不明で、俺は気付かれないように二人を見届けてから出る。到着したらすぐ発てるように、準備をしててね」
「分かりました。常にお外を確認して、馬車が停まったら急いで向かえるようにしておきます」

 合流に時間がかかると、私達が着いた頃には帰っている危険性があるにはあります。折角のチャンスを逃さないよう、しっかりと支度をしておきましょう。

「ん、ヨロシクね、姉さん。他に、伝えとかなきゃいけない内容は………………ああそうそうっ。もう一つの肝心なコトを忘れてたよ」

 アロイス様は、懐に左手を突っ込みゴソゴソ。白いブラウスの中から手紙を取り出しました。

「これは、パパ――国王からの手紙なんだ。読んであげて」
「わざわざありがとうございます。拝見致しますね」

 王家の判が捺されたものを開け、紙面に目を落とします。国王様からのお手紙には…………。


 息子がとんでもない迷惑をかけてしまい、申し訳ありません。今は王ではなく一人の父親、人間として、謝罪をさせていただきます。

 今回の件はあまりに身勝手で、あの者には厳罰をくだすつもりです。決まり次第内容をお伝えいたしますので、今しばらくお待ちください。


 このような内容が、若干震えた文字で記されていました。
 陛下は私を気に入ってくださり、婚約を心から喜んでくださっていましたから……。自分のことのようにショックを受け、お怒りになってくださっているみたいです。

「バカ兄様のせいで、もう滅茶苦茶。今日は俺も、溜まってるものを全部ぶつけるよ」

 アロイス様は私とお城のある方角を見て、ふぅと一回深呼吸。複雑に入り混じった感情を引っ込めると「それじゃあまたあとで。バイバイっ」と手を振り、私達は一旦お別れをしました。


 アロイス様のおかげで今夜、ノルベルト様とじっくりお話ができそうです。
 あの方は、どうして……。あんなことをして、こんなことをしているのでしょう……?
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