どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず

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第2話 涙の理由 アリシア視点(2)

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((さすが筆頭侯爵家。お料理のクオリティーも桁違いだわ……!!))

 1枚のローストビーフを味わった私は、感動の涙を流していた。

 弾力、歯ごたえ、脂加減、火の通り具合まで、どれも完璧。
 溢れ出す肉汁、なのにしつこくない。素材本来の味を最大限に活かす仕様なのに、しっかりとしたものを感じる、充実感をたっぷりと得られる味付け。

 そんな矛盾のような出来事が、口内で立て続けに発生して……! 最高の食材と最高の料理人による奇跡的なマリアージュが、無意識的な感涙をもたらしたのだ!

((ローストビーフは、今まで何度も食べたことがある))

 ウチは財も下の下――『ほんのちょっとだけ裕福な平民』レベルで、食卓にそういったものが並んだことは実はない。とはいえ招待されたパーティーやロイス様のお屋敷では口にする機会があって、これまでちゃんと味わってきている。

 でも、まるで違う……!!

 本当に同じ、ローストビーフと呼ばれるものなの!? まったく異なる食べ物だと錯覚してしまうほどの、異次元のクオリティーが秘められている。

((私はヴァイオレット様に忌み嫌われ、憎まれているから……。このローストビーフを味わう機会は、二度と訪れない))

 だから――食べたい。もっと食べたい。食べ納めをしたい!
 そんな貴族令嬢には相応しくない感情が湧いてきて、『自重しないと』と理性がストップをかけるのだけれど、本能があっという間に制止を跳ねのけてしまった。

((ここに並んでいるお料理は私のために用意された特別仕様で、なかでもローストビーフは大量に用意されているんだもの。……なにも、問題はないわね))

 悪いのは、断れないように根回しをしてここに連れてきたヴァイオレット様。そう思うようにして、

「…………ぐすっ。すみません。もう少し、いただきますね」

 私はポロポロと涙を零しながら所謂『おかわり』を行い、感動と幸せの涙をボロボロと流しながら、絶品ローストビーフを味わっていったのでした――。

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