どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず

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第3話 なんですの、あれは……? ~困惑、そして~ ヴァイオレット視点(1)

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「…………………………」
「…………………………」

 わたくしとアルマ様は、呆然となってビュッフェスペースを眺めていました。
 なんで……。なんで…………。

(泣きながらローストビーフばかり食べてますの!?)(泣きながらあんなにもローストビーフを食べているの!?)

 今新たに取った分を合わせると、21枚目。アリシアはこんなにも大量のローストビーフを、ボロボロ涙を零しながら食べているんですの……!!

(な、なんですか、あれは……!? 悲しんで、いるんですよね……!?)
(ま、間違いありませんわ。アリシアは思い出深いメニューを見て食べて、間違いなく悲しんでいますわ……!!)

 だってわたくしが、そうだったんですものっ! アリシアはあの頃のわたくしと同じように相手を愛していたのだからっ、そちらは確実ですわ!

(で、でしたら、なぜ、あんなことに……? アリシアの中で、何が起きているのでしょうか……?)
(……あ、アルマ様、ヴァイオレット様。私には、アリシアが泣きながら食べ続けているように見えるのですが……。私だけ、特殊な幻覚を見てしまっているのでしょうか……?)

 戸惑っていると、そばかすの女性――ミーシャル伯爵家のマチルド様がやって来て、わたくしとアルマ様は揃って首を横に振った。

(ちゃんと、わたくしにも見えていますわよ)
(マチルド様……。アレは、現実で起きているものですわ……)

 明らかにおかしいけれど、幻などではない。確かな出来事ですわ。

(私、混乱しています……。どうして、あのようなことに……?)
(今頃は、ショックを受けて崩れ落ちているはずなのに……。なぜ、想定とはまるで違うことになっているのでしょうか……?)
(わ、わたくしにも分かりませんわ。あまりに異常で、見当がつきませんわ――いいえっ、つきましたわっ!)

 そうでした、そうでしたわっ。思い当たることが、ありましたわ。

(さすがヴァイオレット様ですっ!)
(ヴァイオレット様っ。あの原因は、なんなのでしょうか……?)
(アリシアが、今行っている行動。それは、俗にいう『ヤケ食い』によってもたらされたものなのですわっ!)

 かつて失恋――誤った感情を抱き、別れを酷く悲しんでいた時のこと。わたくしはとにかく食べて、その悲しみを紛らわした。
 あそこで起きているのは、ソレですわっ。

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