どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず

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第14話 仕込みが逆効果になってしまった ヴァイオレット視点(1)

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((ああもうっ! もうっ!! あの嘘がこんなことになってしまうだなんてっ!!))

 お父様が一時間半以上も早く戻ってきて、パーティー会場に顔を出された理由。それを知ったわたくしは、あの日の自分自身を怨んだ。
 折角、戸惑う姿を楽しめる時間となっていたのに……っ。デゼールデザートが台無しになってしまいましたわ……!!

((お父様がお屋敷のなかにいたら、下手な真似はできない……。最悪ですわっ!!))

 白色のユリによって、あの出来事を思い出す。最高のひとときだったのに……! まだまだ愉しむつもりだったのに……! もう味わえなくなってしまいましたわ……!!
 しかもっ。しかもっ!

((そのエッグタルトはっ、わたくしが今一番食べたいものじゃないですのっ!!))

 大衆向けに販売されているスイーツなんて、たかが知れている。『本物』を知らない令嬢がもてはやしているだけ。そう思っていたのだけれど、昨日友人のお茶会で出されてからすっかり虜になっていた。

 大好物のスイーツとなっているものですの!!

 それが目の前にあって、お父様からアリシアへと渡ったから……! 叫びそうになるくらい腹が立っていますのっ。

((……あの日のわたくし、なにをやっていますの……!! あれは、やりすぎ……っ。もっと控えめにしておくべきでしたわ……!!))

 ほどほどにしておけばお父様の帰りが早まることはなかったし、目の前でエッグタルトが大嫌いな女に渡されることもなかった。
 最低ですわ!!

((…………………………ま、まあ、まあいいですわ。いいでしょう。やりすぎたおかげで、たっぷりとダメージを与えられているんですしね))

 ボヌール管弦楽団による『蒼海』の生演奏や、ムカデのブローチ。『過剰』がなければそれらは実現しなかったのだから、よしとしましょう。

((幸いお父様は、これ以上アリシアに介入はしないようですしね。今夜は9対1で、わたくしの勝ち。すでに大勝利となっているのだから、これくらいは目を瞑っておきましょう))

 なので戸惑う姿の観察は終わりにして、再びアリシアに白色のユリを差し出す。
 楽しめないのなら、この女の存在は邪魔なだけ。不愉快だから、さっさと渡してさっさと追い出しましょう。

「……アリシア様、こちらをどうぞ。お待ちしておりますわね」
「ヴァイオレット様、光栄でございます。ですが、申し訳ございません。こちらのお色ではなく、そちらのお色をいただけますでしょうか?」

 差し出していたらアリシアは首を振り、白ではなくて薄ピンク色のユリを見つめた。
 ……え? 薄ピンクを? なぜ……?

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