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第19話 翌朝~目を覚ましたヴァイオレットは~ ヴァイオレット視点(3)
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「マードック? なんのつもりですの、それは?」
《パクパク パクパク パクパクパクパク》
突如おかしな動きが始まり、わたくしは眉をひそめながら問いかけてみた。するとまた同じ――さっきよりも必死な、口パクパクが返ってきましたわ。
「だ・か・ら、なんのつもりなんですのよ。言葉にしなさいっ!」
《パクパクッ パクパクッ パクパクッ》《チョイ チョイチョイッ》
目を吊り上げ強めに怒鳴りつけると、今度は口をパクパクさせたあと、右手の人差し指で自分の口を指し始めた。
? ?? それは…………。
「口を、見ろ……? …………もしかして、口パクで何かを伝え――」
「おっ、お嬢様ぁぁ!! 本日は天気が非常によろしいですねぇっ!! お外には心地よい快晴の空が広がっておりますよっ! あっはっはっはっはあっ!!」
彼は激しく戸惑ったあとものすごい勢いで首を縦に9回も動かし、口の前で人差し指を立てて胸の前で力強く手を組んだ。
………………。『口パクで伝えたい』。『声に出さないで欲しい』『お願いします』。どうやらマードックは、こう伝えたいみたい。
「??? なんでわざわざそんな回りくどい真似をしますの?」
《チョイチョイチョイ! パクパクパク! パクパクパク!!》
出入口を一瞥して、また自分の口を指さし、口を何度も何度も動かす。
ええ……? ええ…………? マードックは、なんて言ってますの……?
《パクパク パクパク! パクパクパク!》
「…………そばをにる……? そばをにるからひをつけて……!?」
そば? そばってなんなんですの? そんなもの聞いたことがありませんわ。
《ブンブンブン! パクパクパクパク! パクパクパクパクパク!》
「……そばに…………だっさんまが…………いらっしゃい? いらっしゃいからひをつけて……?」
いらっしゃい……? だっさんまというお店があって、そこには『そば』という物? 食べ物? があって、それを煮るから火をつけて欲しい?
「…………マードックっ、なんでわたくしがそんなことをしないといけませんの……! わたくしは筆頭侯爵家の令嬢ですのよっ⁉ 煮たいのなら自分で火をつけなさい!」
《ブンブンブン! ブンブンブンっ! パクパクパクパク!! パクパクパクパクパク!!》
「ああもうっ、全然分かりませんわ!! もういいから声にしなさいっ!! わたくしは早くアリシアに復讐をしたいんですの!! 作戦台無しとボロボロにさせられたお返しを一秒でも早く怒りをぶつけたいんだからっ、そんなことをせずに作戦を練りなさい――な、なんなんですの……!?」
我慢の限界になって大音声をあげたら、マードックはへなへなと崩れ落ちてしまった。
ど、どうしましたの……? なんで急に、まるでこの世の終わりのような顔をしていますの……?
わけがわからない――
「………………ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁ……」
マードックが顔面蒼白になっている理由。それをわたくしは、すぐに理解することになった。
なぜ、なら…………。
「ヴァイオレット……。どうやらお前は、わたしの知らぬところで悪さをしていたようだな」
突然、部屋の扉が開いて……。
レオンお父様が、現れたのだから…………。
《パクパク パクパク パクパクパクパク》
突如おかしな動きが始まり、わたくしは眉をひそめながら問いかけてみた。するとまた同じ――さっきよりも必死な、口パクパクが返ってきましたわ。
「だ・か・ら、なんのつもりなんですのよ。言葉にしなさいっ!」
《パクパクッ パクパクッ パクパクッ》《チョイ チョイチョイッ》
目を吊り上げ強めに怒鳴りつけると、今度は口をパクパクさせたあと、右手の人差し指で自分の口を指し始めた。
? ?? それは…………。
「口を、見ろ……? …………もしかして、口パクで何かを伝え――」
「おっ、お嬢様ぁぁ!! 本日は天気が非常によろしいですねぇっ!! お外には心地よい快晴の空が広がっておりますよっ! あっはっはっはっはあっ!!」
彼は激しく戸惑ったあとものすごい勢いで首を縦に9回も動かし、口の前で人差し指を立てて胸の前で力強く手を組んだ。
………………。『口パクで伝えたい』。『声に出さないで欲しい』『お願いします』。どうやらマードックは、こう伝えたいみたい。
「??? なんでわざわざそんな回りくどい真似をしますの?」
《チョイチョイチョイ! パクパクパク! パクパクパク!!》
出入口を一瞥して、また自分の口を指さし、口を何度も何度も動かす。
ええ……? ええ…………? マードックは、なんて言ってますの……?
《パクパク パクパク! パクパクパク!》
「…………そばをにる……? そばをにるからひをつけて……!?」
そば? そばってなんなんですの? そんなもの聞いたことがありませんわ。
《ブンブンブン! パクパクパクパク! パクパクパクパクパク!》
「……そばに…………だっさんまが…………いらっしゃい? いらっしゃいからひをつけて……?」
いらっしゃい……? だっさんまというお店があって、そこには『そば』という物? 食べ物? があって、それを煮るから火をつけて欲しい?
「…………マードックっ、なんでわたくしがそんなことをしないといけませんの……! わたくしは筆頭侯爵家の令嬢ですのよっ⁉ 煮たいのなら自分で火をつけなさい!」
《ブンブンブン! ブンブンブンっ! パクパクパクパク!! パクパクパクパクパク!!》
「ああもうっ、全然分かりませんわ!! もういいから声にしなさいっ!! わたくしは早くアリシアに復讐をしたいんですの!! 作戦台無しとボロボロにさせられたお返しを一秒でも早く怒りをぶつけたいんだからっ、そんなことをせずに作戦を練りなさい――な、なんなんですの……!?」
我慢の限界になって大音声をあげたら、マードックはへなへなと崩れ落ちてしまった。
ど、どうしましたの……? なんで急に、まるでこの世の終わりのような顔をしていますの……?
わけがわからない――
「………………ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁ……」
マードックが顔面蒼白になっている理由。それをわたくしは、すぐに理解することになった。
なぜ、なら…………。
「ヴァイオレット……。どうやらお前は、わたしの知らぬところで悪さをしていたようだな」
突然、部屋の扉が開いて……。
レオンお父様が、現れたのだから…………。
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