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第3話 だから私の返事は マーティン視点(2)
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「ここっ、3枚目のこの部分! 噂の調査をしていた際のっ、俺の行動!! ここがまるで違うんだよっ! この資料では『調査2日目の夜に、行きつけのリストランテでディナーを摂っていた』とあるだろうっ!? その時も俺は必死になって噂の発生源を探していた!! そんな事実はないんだよ!!」
実際その日は、最高の素材が手に入ったと聞いて食事を行っていた。だがそこを認めてしまうと、復縁はあり得なくなってしまう――最高金賞受賞者を妻にできなくなってしまう。
だからそれが記載されている部分を、力強く叩いた。
「解決を誓った次の日に、呑気にそんなことをしているはずがないっ。それにだ! 仮に実際に行っていたとしても、その情報が手に入るわけがないんだよっ。なぜならそのリストランテは父上の旧友が経営している上に、客や客がする会話などには守秘義務が発生する場所なのだからね!」
オーナーと父上は固い絆で結ばれていて、情報が洩れるような真似はしない。一応は作戦中だったため輪をかけて人目の有無を気遣っていて、入退店も間違いなく目撃されていない。
どこにも隙はないのに、なぜ事実を掴まれているのかは分からない。だが把握される要素がないのだから、押し通せるっ。挽回の切っ掛けにできる!
「よってここは捏造で、一つ捏造なら他の部分も捏造の可能性がある。……あいにくと他の部分は、この場で証拠を出して否定することはできない。だが時間を貰えれば、証拠を出して否定することも可能だと思う」
はっきり言って、そうできる術は思い浮かばない。
しかしウチにはお抱えのブレインなど、優秀な人材が複数いる。ソイツらにも協力させれば、上手くやり過ごせるはずだ。
「……マーティン様。私は、この情報を信じていて――」
「そう感じるのも、無理はない。でも俺の言葉に嘘はない、自作自演なんかではないんだ。あれは全て、君を想っての行動なんだ。できるだけ早く証明してみせるから、少しだけ待っていておくれ」
そうして俺は余裕たっぷりに微笑み、馬車に乗り込むと急いで屋敷へと走らせる。
最高金賞受賞者で文化勲章持ちは、大きなステータス。すぐ他の貴族達も目をつけ、群がってくるはずだ。だから――
「ん? なんだ、あの馬車は?」
レンダユス邸を離れて、間もなくだった。見慣れない馬車とすれ違い、ソレはレンダユス家の敷地内へと消えていった。
「どこかで、見た覚えがあるな……。どこだったか…………」
「マーティン様。あちらの馬車は、調律師殿のものと記憶しております」
「ああ、そうだそうだ。そうだったな従者。……調律師なら、気にする必要はないか」
一瞬『情報の収集者』もしくは『ステラを狙う貴族』かと思ったが、調律師ならどちらもない。そこで俺は存在を無視して屋敷に戻り、大急ぎで作戦会議を始めたのだった。
※次のお話は、ステラ視点となります。
実際その日は、最高の素材が手に入ったと聞いて食事を行っていた。だがそこを認めてしまうと、復縁はあり得なくなってしまう――最高金賞受賞者を妻にできなくなってしまう。
だからそれが記載されている部分を、力強く叩いた。
「解決を誓った次の日に、呑気にそんなことをしているはずがないっ。それにだ! 仮に実際に行っていたとしても、その情報が手に入るわけがないんだよっ。なぜならそのリストランテは父上の旧友が経営している上に、客や客がする会話などには守秘義務が発生する場所なのだからね!」
オーナーと父上は固い絆で結ばれていて、情報が洩れるような真似はしない。一応は作戦中だったため輪をかけて人目の有無を気遣っていて、入退店も間違いなく目撃されていない。
どこにも隙はないのに、なぜ事実を掴まれているのかは分からない。だが把握される要素がないのだから、押し通せるっ。挽回の切っ掛けにできる!
「よってここは捏造で、一つ捏造なら他の部分も捏造の可能性がある。……あいにくと他の部分は、この場で証拠を出して否定することはできない。だが時間を貰えれば、証拠を出して否定することも可能だと思う」
はっきり言って、そうできる術は思い浮かばない。
しかしウチにはお抱えのブレインなど、優秀な人材が複数いる。ソイツらにも協力させれば、上手くやり過ごせるはずだ。
「……マーティン様。私は、この情報を信じていて――」
「そう感じるのも、無理はない。でも俺の言葉に嘘はない、自作自演なんかではないんだ。あれは全て、君を想っての行動なんだ。できるだけ早く証明してみせるから、少しだけ待っていておくれ」
そうして俺は余裕たっぷりに微笑み、馬車に乗り込むと急いで屋敷へと走らせる。
最高金賞受賞者で文化勲章持ちは、大きなステータス。すぐ他の貴族達も目をつけ、群がってくるはずだ。だから――
「ん? なんだ、あの馬車は?」
レンダユス邸を離れて、間もなくだった。見慣れない馬車とすれ違い、ソレはレンダユス家の敷地内へと消えていった。
「どこかで、見た覚えがあるな……。どこだったか…………」
「マーティン様。あちらの馬車は、調律師殿のものと記憶しております」
「ああ、そうだそうだ。そうだったな従者。……調律師なら、気にする必要はないか」
一瞬『情報の収集者』もしくは『ステラを狙う貴族』かと思ったが、調律師ならどちらもない。そこで俺は存在を無視して屋敷に戻り、大急ぎで作戦会議を始めたのだった。
※次のお話は、ステラ視点となります。
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