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第4話 嬉しい来訪~約束と~ ステラ視点(3)

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「……………………」

 ペンダントに刻まれていた、ライオンと剣の紋章。それを目にしたあとに行われた、ご説明。それを経た私は、銅像のように固まってしまっていました。
 3年間のお付き合いがある、調律師のヴィクター様。頼りになる優しいお兄さん。そんな方には真のお姿があって、しかもそれは雲の上の存在だったのですから。そうなってしまうのは必然でした。

「僕はそういった理由でステラ様に救われ、どうにか恩返しをしたかった。そこで生来持つ絶対音感を活かして調律師を目指し、こうして貴方様のお傍に居させていただいていたのですよ」
「…………そう、だったのですね。先生が素性、身分を口外できないと仰られていた理由が、ようやく分かりました」

 それらを知ってしまったら、恐れ多くて契約など出来ていません。あれはあまりにも大きすぎる部分を、隠すためのものだったのですね。

「そして……たった1日で私を救ってくださった理由も、ようやく分かりました」

 侯爵家でさえも足元にも及ばない、圧倒的なお力。それがおありだったから、いとも容易く成し遂げられたのですね。

「ええ。それらの裏には、そういったものがありました。……ステラ様。これまで偽っていたことを、お許しください」
「……レオナ――ヴィクター様。そちらは避けられない、貴方様には必要不可欠な行為です。そういったものは不要でございますよ」

 できることなら最初から本当の御名前を使い、本当のご自分として接触したかった――。調律師を志した理由や感謝の気持ちなど、本当のことをずっと伝えたかった――。
 そういった感情を、ご説明の最中からひしひしと感じていましたので。私は即座に、首を左右に振りました。

「有難きお言葉、感謝いたします。…………ステラ様。僕はこういう身分ですので、心配は要りません。彼がどう動こうとも、貴方様の心身、そして僕自身にも、一切害は発生いたしません」
「はい。今はもう、真実を存じ上げて――知っていますので。そういった不安は、消えてしまいました」

 畏まらないで欲しい、どうかこれまで通りに接していただきたい。そう希望されていますので、変わってしまいかけていた口調を戻して顎を引きました。

「あの頃も、今も。ありがとうございます」
「こちらこそ、本当の僕を受け入れてくださり、変わらず接してくださり、ありがとうございます。……それと――ずっと行いたいと思っていたお話があるのですが、今は最優先事項がありますので。これより、そちらに関する行動を始めます」

 そうしてヴィクター様は名残惜しそうにしつつ、退室されて――邸外へと移動され、馬車の前に着くと「ピュウ」と指笛を吹かれました。
 ?? これは、なんでしょう……?


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