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プロローグ 突然の異変 ミリア・ローマック視点

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「……これは……。どうなっているのでしょうか……?」

 ローマック侯爵邸の1階にある、エントランス。その中央でわたくしは、困惑しながら周囲を見回していました。

 7月7日の午前5時半。今日は婚約者であるロンド様のお見舞いをする日で、ロンドの好物のクッキーを焼くためロンド様へのお土産を用意するため少し早起きをしました。
 そうしたら…………お屋敷の中に、誰もいなかったのです。
 お父様もお母様もルーナマルクも、侍女アンリもシェフたちもいない。すべての部屋を回ってみたものの、誰にも会えなかったのです。

「……わたくし以外、全員が外出するなんてことはあり得ませんし……。外に警備の方が誰一人いらっしゃらないのは、もっとあり得ないことです……」

 ここは、ローマック侯爵家の拠点。家宝を含めいくつもの重要な物が存在していて、24時間どんな時も侵入者などを警戒しなくてはなりません。
 なのに、誰もいない。
 これは……

「もしかして、夢を見ているのでしょうか……?」

 そう思って、腕を抓ってみると――痛みがありました。
 夢の中では、痛みを感じないといいます。
 ということは、ここは現実ですよね。

「でしたら、ますますおかしな状況です……。皆さん、どこにいってしまったのでしょうか……?」

 一生懸命理由を考えてみますが、いくら考えても原因が思い付きません。あまりにも異常な状況ですから、まともな推測すらできません。

「……仕方ありませんね。危険ですが、外に出てみましょう」

 わたくしはローマック侯爵家の長女。単独行動はそれこそあり得ない、様々なリスクが伴う愚行中の愚行です。
 けれどすでに1時間以上経っていて、待っているだけではなにも解決しないと思います。ですので、息を3回吸って吐き――

「ふふふ、戸惑っていますわねぇ。わたしが理由を教えてあげますわよぉ」

 ――ちょうど、息を吐き終わったと同時でした。突然目の前の空間がぐにゃりと歪み、そこからブロンドの女性が――コレガラール侯爵令嬢のジュリア様が、現れたのでした。
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