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エピローグ その頃~同時刻~ ミリア視点
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「……僕はね、内心諦めてしまっていたんだ」
わたくし達にとって特別な日。祭壇の前。目の前にいらっしゃるロンド様は、ふと微苦笑を浮かべました。
「病の原因が不明で対処法も見つからない、いつ死んでしまうか分からない。こんな人間が当主になれるはずがない。最終的には留学中の実弟に譲らないといけないって、覚悟していたんだ」
「…………はい」
「嫡男でなくなることは、いいんだ。ライナスはとても優秀で優しい子だからね。でも……。ミリアを悲しませる羽目になってしまうことだけは、納得できなかった。辛くて、悔しかったんだ」
想ってくれている人と、今の関係を解消しなければならない。
ミリアが悲しむのは分かっていたし、自分も嫌だった。
だから、どうにかしたかった。
けど、無理だと思っていた。
これまで一度も口にされていなかったことを、仰りました。
「でもあの日、君が僕を救ってくれた。自分のことは全て自分で出来る、以前の僕に戻してくれた」
艶も瑞々しさも元通りになった身体を見回し、背中にそっと触れました。
「病の原因を断ち切ってくれたおかげで、僕は今日こうしてこの場に立てています。フェリックス家の次期当主として、貴方の相手として」
「はい。わたくしの目の前に、居てくださっています」
「……改めて、ありがとう。こうやって今日という日を迎えられたのは、貴方のおかげです。ミリア、感謝しています」
マナー違反になってしまうけれど――。そう仰りながらロンド様は右膝を床につき、瞳を潤ませながらわたくしを見上げてくださいました。
そしてロンド様はゆっくりと立ち上がり、今度は真剣なお顔を作られました。
「ミリア、これからは僕が貴方を守る番です。どんなことがあったとしても、その心も体も護ります。僕なりのやり方で、薔薇色の未来を約束します」
僕なりのやり方。
回復されてからロンド様は日夜勉強や外交を行い、様々な問題に対処できる『力』を蓄えていらっしゃるんですよね。
「なので……これからもよろしくお願いします。これからも二人並んで、同じ道を一緒に進んでいきましょう」
「はいっ。ずっと、この先も、同じ道を一緒に進みましょう」
微笑み合って、そっと指を絡め合う。そうしてわたくし達は、お互いのぬくもりを感じながら口づけを交わし――。
新たなわたくし達の道を、揃って進み始めたのでした。
わたくし達にとって特別な日。祭壇の前。目の前にいらっしゃるロンド様は、ふと微苦笑を浮かべました。
「病の原因が不明で対処法も見つからない、いつ死んでしまうか分からない。こんな人間が当主になれるはずがない。最終的には留学中の実弟に譲らないといけないって、覚悟していたんだ」
「…………はい」
「嫡男でなくなることは、いいんだ。ライナスはとても優秀で優しい子だからね。でも……。ミリアを悲しませる羽目になってしまうことだけは、納得できなかった。辛くて、悔しかったんだ」
想ってくれている人と、今の関係を解消しなければならない。
ミリアが悲しむのは分かっていたし、自分も嫌だった。
だから、どうにかしたかった。
けど、無理だと思っていた。
これまで一度も口にされていなかったことを、仰りました。
「でもあの日、君が僕を救ってくれた。自分のことは全て自分で出来る、以前の僕に戻してくれた」
艶も瑞々しさも元通りになった身体を見回し、背中にそっと触れました。
「病の原因を断ち切ってくれたおかげで、僕は今日こうしてこの場に立てています。フェリックス家の次期当主として、貴方の相手として」
「はい。わたくしの目の前に、居てくださっています」
「……改めて、ありがとう。こうやって今日という日を迎えられたのは、貴方のおかげです。ミリア、感謝しています」
マナー違反になってしまうけれど――。そう仰りながらロンド様は右膝を床につき、瞳を潤ませながらわたくしを見上げてくださいました。
そしてロンド様はゆっくりと立ち上がり、今度は真剣なお顔を作られました。
「ミリア、これからは僕が貴方を守る番です。どんなことがあったとしても、その心も体も護ります。僕なりのやり方で、薔薇色の未来を約束します」
僕なりのやり方。
回復されてからロンド様は日夜勉強や外交を行い、様々な問題に対処できる『力』を蓄えていらっしゃるんですよね。
「なので……これからもよろしくお願いします。これからも二人並んで、同じ道を一緒に進んでいきましょう」
「はいっ。ずっと、この先も、同じ道を一緒に進みましょう」
微笑み合って、そっと指を絡め合う。そうしてわたくし達は、お互いのぬくもりを感じながら口づけを交わし――。
新たなわたくし達の道を、揃って進み始めたのでした。
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みんなの感想(19件)
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セリ様。申し訳ございません。
8話ですが、(1)(2)をつけたつもりになっておりました……。
ないことにまったく気づいておらず、不必要な混乱を招いてしまい本当に申し訳ございません。
こちらはこのあとすぐ、修正をさせていただきます。
雪那様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません。
呪いは(呪いの仕組み)は絶対ですので、仕掛けた内容以上のことが発生することは、基本的にはないみたいですね。
とはいえミリアの件もありますし、予想外のことは起こるえるようです。
ですので、もしかすると。今はなくとも何かしらのタイミングで、呪いにも変化が起きるのかもしれません……!
kokekokko様。申し訳ございません。
こちらは、360度の間違いでございます。
おそらくキーボードのテンキーで3を打つ際に、ひとつ上の6を打ってしまい、さらにはチェックの際に見落としてしまっていたようです。このたびはお手数をおかけしてしまい、また余計な困惑を招いてしまい、本当に申し訳ございませんでした。