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第10話 尽きることない不満 俯瞰視点(2)
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「ええっ!? い、慰労は問題ない、けど……。国外の方は、さすがに難しいよ」
聖女は完璧に身を護る術を持っていますが、攻撃する術は一切持っていません。そのため搦め手を使えば『足止めする』ことは可能で、一週間に一度の祈りができず大変なことが起きてしまいます。
そうでなくとも悪天候などによって帰国が間に合わなければ、同じく最悪の事態になってしまいます。
そういった理由でアントナンは、即座に首を左右に振りました。
「君の故郷には、車? や、飛行機? や地下鉄? という高速で移動できる方法があるらしいけど、前にも言ったようにこちらには全くないんだ。特に周辺国は雨が多く2~3日間移動に支障をきたすケースがよくあって、いくら春奈のお願いでも受け入れられないよ」
王太子アントナンは春奈を愛し、出来る限り春奈の要求を呑みたいと思っていますが、『最悪の事態』がチラついては承認なんてできはしない。どうにか諦めてもらうべく、丁寧に事由を説明しました。
「それでも、国内ならある程度は融通が利く。どうか国内で我慢して欲しい」
「いやよ」
「ありがとう! ごめんね――……え? い、嫌……!?」
「だって国外にはその国でしか食べれない食べ物とか、絶景が沢山あるんでしょ? この国の食べ物は飽きてきたし、この国にはあたし好みの良さげな観光スポットはないの。だから嫌」
運悪くラクリナルズには、春奈を満足させるものはありませんでした。関係者から国外の話を聞いたり資料を読んだりしたことにより、『行きたい』『食べたい』が抑えられなくなっていたのです。
「そ、そうだね。ごめんね、ウチの国が不甲斐なくて申し訳ない。で、でもね、万が一があったら本当に大変で――」
「殿下、知ってる? 万が一って、『万』に『一』なのよ? 万やって一なら、そんなの起こらないわよ」
「い、いやね……。そうはいうものの……」
「もし言うことを聞かないって言うなら、もう祈りを捧げてあげないわよ。あたしのために何もしてくれないなら、あたしだって何もしてあげないんだから」
今の春奈には、あまりにも強力な脅迫の材料がありました。
これを出されてしまったら、誰にもどうにもできません。
「………………わ、分かったよっ。分かった! 認めるよっ!!」
ですのでしぶしぶ認めざるをえず、
((もし、春奈の帰国が間に合わなかったらどうしよう……))
((失敗した……。アントナンの願いを聞くべきではなかった……))
((あの聖女はワガママが過ぎる……。シュザンヌを残しておくべきだったわ……))
春奈が国外旅行をするたび、不在を知っているアントナンや国王王妃たちは、過去最大級のストレスに苛まれることになってしまったのでした。
――でも――。
それはまだ、序の口に過ぎませんでした。
その、更に1か月後のこと。今度は――
聖女は完璧に身を護る術を持っていますが、攻撃する術は一切持っていません。そのため搦め手を使えば『足止めする』ことは可能で、一週間に一度の祈りができず大変なことが起きてしまいます。
そうでなくとも悪天候などによって帰国が間に合わなければ、同じく最悪の事態になってしまいます。
そういった理由でアントナンは、即座に首を左右に振りました。
「君の故郷には、車? や、飛行機? や地下鉄? という高速で移動できる方法があるらしいけど、前にも言ったようにこちらには全くないんだ。特に周辺国は雨が多く2~3日間移動に支障をきたすケースがよくあって、いくら春奈のお願いでも受け入れられないよ」
王太子アントナンは春奈を愛し、出来る限り春奈の要求を呑みたいと思っていますが、『最悪の事態』がチラついては承認なんてできはしない。どうにか諦めてもらうべく、丁寧に事由を説明しました。
「それでも、国内ならある程度は融通が利く。どうか国内で我慢して欲しい」
「いやよ」
「ありがとう! ごめんね――……え? い、嫌……!?」
「だって国外にはその国でしか食べれない食べ物とか、絶景が沢山あるんでしょ? この国の食べ物は飽きてきたし、この国にはあたし好みの良さげな観光スポットはないの。だから嫌」
運悪くラクリナルズには、春奈を満足させるものはありませんでした。関係者から国外の話を聞いたり資料を読んだりしたことにより、『行きたい』『食べたい』が抑えられなくなっていたのです。
「そ、そうだね。ごめんね、ウチの国が不甲斐なくて申し訳ない。で、でもね、万が一があったら本当に大変で――」
「殿下、知ってる? 万が一って、『万』に『一』なのよ? 万やって一なら、そんなの起こらないわよ」
「い、いやね……。そうはいうものの……」
「もし言うことを聞かないって言うなら、もう祈りを捧げてあげないわよ。あたしのために何もしてくれないなら、あたしだって何もしてあげないんだから」
今の春奈には、あまりにも強力な脅迫の材料がありました。
これを出されてしまったら、誰にもどうにもできません。
「………………わ、分かったよっ。分かった! 認めるよっ!!」
ですのでしぶしぶ認めざるをえず、
((もし、春奈の帰国が間に合わなかったらどうしよう……))
((失敗した……。アントナンの願いを聞くべきではなかった……))
((あの聖女はワガママが過ぎる……。シュザンヌを残しておくべきだったわ……))
春奈が国外旅行をするたび、不在を知っているアントナンや国王王妃たちは、過去最大級のストレスに苛まれることになってしまったのでした。
――でも――。
それはまだ、序の口に過ぎませんでした。
その、更に1か月後のこと。今度は――
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