Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
63 / 69
第2章

艱難汝を玉にす

しおりを挟む

――――時は無情に進みゆく。

 眼前に映る船内のモニタリング表示画面は、大分減ったがそれでもあと10箇所も残っていた。
 だけど、もう時間が無い。
「コンピュータ、メインエンジンを廃棄のカウントをモニタに出した上で、音声指示して。この船が安全域に出れる様にナビゲートを」
『了解しました』

 私は顔を上げ、正面を見る。ヴェルトの背中を見詰めてから、少し大きな声を出す。
「ヴェルト操舵を頼める?」
 私の声に振り返って、少し考える様にじっとこちらを見るヴェルト。
「ああ、解った。操舵は任せろ。ナツキは多重シールドのタイミングや、衝撃後のカバーを。ティアは船の生命維持と緊急隔壁閉鎖を頼む」
「「了解!」」

 私は、ちらっと何も指示されていないフレアを見遣る。立ったままの状態で、とても不満げな表情を浮かべてヴェルトを睨み気味で見ている。
「……」

――――お門違いだよねぇ……。何も出来ない状況になったのは、自分のせいだという自覚が欠落しているってどーなのよ。
 私は小さくため息を吐き、コンソールに入力していく。

 ティアが声を上げる。
「各総員、安全ルームへ避難終了。緊急隔壁閉鎖します!」

『安全確保の為、隔壁を閉鎖します』
 コンピュータの音声が艦内へと流れる。

 エンジンルームからクルーが居なくなったのを確認してから、ピピピピピと、私はコンソールに指を走らせて行く。
「エンジンルーム減圧開始します。減圧完了後、メインエンジン廃棄します」

『カウントスタート。メインエンジン廃棄まで、あと60秒』
 全員の画面にはカウントが表示される。

「総員に告ぐ、衝撃波に備えて下さい」
 ヴェルトが船内に、警告を発する。

 そして、刻々と時間が減っていく。
『30、29、28、27………………5、4、3、2、1、メインエンジン廃棄します』
 メインルームに響くコンピュータの音声。

 操舵席のヴェルトが、船の運転を担う。
「サブエンジン出力最大。この宙域から離脱する」
 船内が刻みに揺れる。メインモニターに映される宇宙域の映像。

 警告音と、コンピュータの音声が船内に響く。
『廃棄したエンジンの爆発までおよそ、3分です』

「コンピュータ! 爆発の衝撃波に対して一番被害が少ない船の方向を割り出し、旋回調整を!! 船の後方中心に、多重バリアフィールド展開。」
 私はコンピュータに指示を飛ばしつつ、サブエンジンのエネルギーをバリアに振り分ける。
 モニター画面の小窓(別窓)に、宇宙船の背後の映像が出ている。
 宇宙空間に放り出され、弧を描きながらゆっくりと遠ざかる廃棄したメインエンジン。
 豆粒位になったところで、ピカッ! と光る。
 数拍おいて、ガタガタガタと激しい衝撃波が、船を襲った。例えるなら、ジェットコースターの横Gと、交通事故並みに吹っ飛ばされる感覚だ。
 横とも縦ともつかない、荒海の大きな揺れの様でもあった。

 ぶつんと、照明や、モニターの画面も真っ暗になった。
「え?」
 一瞬何が起こったのか理解できなかった。

『船体損害70%、乗組員の死傷者38名、航行不能及び時間内でのミッションを続行不可能の為、実習を終了します』
 抑揚の無い音声が響き、室内の照明が点灯した。


――――そして、私達の実習と言う名の実地テストが終了したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...