Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

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第1章

PRINCEと宮廷治療師

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 全くもって、意表を突いてくれる美少年だと思う。

 頭一個分位しか身長差がないと言うのに、さらっと抱き上げてしまうなんて結構力持ちなんですね、カグラ君。

 スタスタと歩いて、私をベッドの縁に座らしてくれた。

「カァッコイイ~、流石は王子よね~」
 ヒューヒューと、シエンが言うと半眼で彼を睨んだ。

「俺は王子じゃない。間違えるな」
「あぁら、王子も次の王太子も変わらないじゃないの」
 水が入った手桶のような物と、タオルの様な布を持ってケラケラと笑いながらシエンが言った。

「え? ええ? 王太子?」
 目の前に居るカグラと、シエンを代わる代わる見詰めるとびっくりした顔で。

「え、名乗ってないの? 王子!?」
「だから、王子は止めろ」
 そう言うと、はぁ……と息を吐いてからカグラは私を見た。

「俺の名は、カグラ・ジーノ・ラグナだ。ラグナ公爵家の長男だ。呼び方はカグラでいい」
「あ、はい。えっと、助けてくれて有り難う御座います。カグラ様」
「様はいらない」
「え、でも、公爵家の人なんでしょ?」

「い~のよ。様なんか付けて呼ばせたら、陛下に怒られるものねぇ?」
 シエンが私の足元に、桶を置いて布を1枚その中に入れ、乾いたもう一枚を私の脇に置いた。

「ああ。だから、俺の事は気にせず、カグラと呼んでくれ」

 シエンに頷いて答える、カグラを見ながらいいのかなぁって思うが、さっきの女王陛下の言葉を反芻してみる。

 『私の敬愛するお姉様の娘』って台詞から察するに、母様の事が好きなんだって事が解る。

 どんだけ、母様はこの国の中枢に食い込んでいるのやら。
 考えたくないなぁ~~。怖いもん。

「裾捲るけど良いかしら?」
 ぱちゃぱちゃと布を濡らして絞ると、シエンが私に告げた。

「あ、はい。じゃぁ、私、裾押さえてますね」
 擦り剥いた箇所まで、生地を捲り上げて両手で押さえる。

「ちょっと染みるかと思うけど我慢してね」
「大丈夫ですから、ぱぱっとやっちゃって下さい」
 痛い事はさっさとしちゃった方が良いものだから、私はそう答えた。

「じゃ、失礼して」
 にこりと笑って、シエンは濡れた布で血の汚れとかを拭き取っていく。
 傷口に触れた時、少し痛かったが問題なく我慢の出来るレベルだった。
 優しく、手早くしようというシエンの心遣いが見えた。

「はい、出来た。それじゃ、治癒しちゃうわね」
「お願いします」

治癒キューア
 シエンが私の傷口に手を翳して呪文を唱えると、ぽーっとした光が生まれる。

 まるで蛍の光の色に似ている。
 柔らかい輝きが、身体に染み込む様な温かさを私に与えてくれる。
 緊張の糸が解されていくのが解った。

「はい、傷の方はこれで良し! 次は他の所ね。手を見せて」
 私はシエンの言葉に従って、両手を差し出す。
 良く見ると血は出ていないが、皮が擦り剥けている。

「ここも治しちゃいましょ。治癒キューア
 シエンはそう言うと呪文を唱え、私の掌を元通りの綺麗な状態へと変えてゆく。

「後は……ここね」
 じっと見詰めるシエンの視線の先は、首筋。

「えと、そんなに酷いんですか?」
「間違いなく、それを見た陛下は暴れるとは思うし、父上も賛同して何かをしでかすと思う位、良いとは言えない」

「わぁ、ステキ☆ 宰相様も参戦しちゃうんだ~」
 シエンが茶化して言う。
 ステキと言っているが実際、目は笑っていない。

 父様や兄様が見たら、号泣して大騒ぎにはなりそうな感じかもしれない。
 それはそれで、色々と問題がある。

「触れるけど良いかしら?」
 シエンが私に伺う。

 もしかしたら、シエンは私に拒絶されるのかもと思っているみたいだ。
「はい、お願いします」
 きっぱりと言ってお願いすると、シエンはきょとんとした顔をしてからニコリと笑った。

「ナツキちゃんは、度胸あるわねぇ~。普通は怖がるんだけどね~」
「シエンさんは、酷いことする人には見えませんし。何より、こんな姿を兄様や父様が見た時が大変ですから」

「じゃ、少し我慢してね」
 シエンはそう言うと、そっと私の首筋に触れてくる。

治癒キューア
 ほわん……とした温かさが首筋に宿る。

「はい、おしまいよ」
「有り難う、シエンさん」
「どういたしまして」
 ウインクして私に笑いかけるシエンは、派手な服装とは違い人を和ませる感じが強かった。

 不思議な人達だなぁ~と、私は素直に思った。
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