Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
18 / 69
第1章

大人達の会議 another side2

しおりを挟む
 庭園を後にした4人は、セリティアの自室にいた。
 向かい合わせのソファーに、セリティアとテンリが座り、反対側にユーナとレオンが座っていた。

「セリ、頼みがあるの」
「お姉様?」
 真剣な表情で言うユーナをセリティアは見詰める。

「本当はもっと後の事だと思ってたわ。でも、今回の事で決めておかなきゃいけないって思ったの。こればかりは、私の一存でどうこう出来ないから……」
「私が、お姉様のお願いを無下に出来るとお思いですか?」
「思っていないわ。だからこそ、出来る事なら避けたかったの。巻き込んでしまってごめんね」

 苦渋満ちた表情を浮かべるユーナの肩にそっとレオンが触れる。
 レオンは、小さく頷いてユーナの言いたい言葉を紡いでいく。

「これは、アマハ家の、俺とユーナ、そして義父ちちの総意でもある。ラグナリア星皇家の後ろ盾をお願いしたい。ナツキが成人するまでか、自身の力を扱える様になるまで、その御名で守って欲しい」

 深く頭を下げるレオンに、驚いた様に目を丸くするセリティア。
 そして、その意図が何を示すのか理解し、テンリはふうっと息を吐きだした。

「それは、我が息子に盾になって欲しいという事ですか」
「私の名前では、下手をすればあの子は狙われる。今回の様に……。他にも魔法の無い場所へと行かせる選択肢もあったけれど、あの子の持つ力では、それが解決策にならないの。力が安定し、使いこなせるまでどの位の時間が掛かるかは解らない。最終的に魔法学院へ入れるならば、ラグナリア星皇家の御名は抑止力になるわ。あの子の安全はそれなりに確保出来る」

 苦しそうに瞼を伏せて、ユーナが言葉を吐き出していく。
「そうでしょうね。この星に居る殆どの者なら、ラグナリア星皇家に対し愚かな真似はしないでしょうからね。ですが、レオン。いいんですか? こちらとしては、正直、魔法界の女帝の名をラグナリア星皇家に引き入れる事は願ってもない事ですよ? この星に不可欠な結界魔法を施す力を持つ者を本来ならば、それなりの報酬を出してお願いする所を確実に足許見られて値切られますよ?」

 にやりと口の端に微笑を乗せて、テンリはレオンとユーナに告げる。
 足許を見るけど良いのか? と言外に言っているのだ。
 そもそも、財政やらをも統括する宰相閣下だから自分が指示するんだと、ぺらっと白状している事に他ならない。
 横目で、セリティアがテンリをちらっと見るが平然としていた。

「あの子の安全が確保されるのなら、願ってもない事よ!」
 顔を上げてユーナが、きっぱりと言い放った。

「良いでしょう。今現在、カグラには決まった婚約者はいません。カグラは冷めてますから、いずれ自分をターゲットにしてくる女性達を避ける為にも間違いなく、この話に一枚噛んでくれるでしょう。姉上がご結婚されてお子を授かるまでは、俺がラグナリア星皇家の第1皇位継承者で、カグラは第2皇位継承者です。宰相を続ける場合は辞退する事になりますから、カグラが自動的に皇位に一番近い者になり、ラグナリア星皇家を継ぐ者になる。まぁ、その場合、ナツキ様は皇太子妃候補か、王妃候補になりますけどね。それで、良ければ構いませんよ」

「それと、ナツキの力が安定し、二人の内どちらかがその関係を破棄したいと願ったら、私達は速やかにそれを受け入れます。無理強いはしたくないもの……」
 ユーナがゆっくりと言った。

 大人の打算だらけの事だけど、それでも、本人達の気持ちが大事だとユーナは思った。
「ねぇ、もしも、二人が本当に恋仲になったらどうするの?」
 ふと、気がついたようにセリティアが言う。

「それはそれで、構いませんよ。俺はね」
 ふふふ……と、企み顔で笑うテンリをじと目見るレオンが、口を開いた。

「ナツキを嫁には行かせないぞ、テンリ!」
「レオン、あんまり娘にベタベタしてるといつかウザイって言われて嫌われるぞ」
 娘が可愛いくて仕方のないレオンを知っていて、テンリは面白がってからかう。

「うぐっ……」
 テンリは、自分の所業に多少心当たりがあるのか口篭もる。

「ま、家と縁組になって一番嬉しがるのは姉上でしょうけどね」
「そうよね!大っぴらにお姉様って言っても誰にも文句は言われなくなるわね! なんて素晴らしいの! お姉様、是非ともこのお話が進めましょう!」
 セリティアは暴走しかかるが、テンリがさらっと言って宥める。

「こればかりは、二人の気持ち次第ですからね。大人はお膳立てして見守ってましょうか。周りがどうのこうの言うと上手くいくものもダメになりますからね」
 にっこりと笑うテンリは、宰相閣下だけあって策士であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

処理中です...