Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

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第2章

初授業は袋小路?

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「どこへ行くの? ナツキ」
 がしっと左手首を掴まれ、強制的に立ち止まらせられた。
 先ほど女生徒達を手玉に取った美声が、私に声を掛けて来る。

――――いやああああああああ! 振り向きたくない!!

 右側に立つリョウを見上げたら、苦虫を噛んだ様な物凄い顔でいた。
 そんなのはお構いなしに、レーツェルは私達を強制停止出来た事で満足したのか掴んでいた手を放し、のほのん調で言葉を紡いでいく。
「ねぇ、二人はまだ他の人とは組んではいないよね? 僕らもまだなんだ、一緒にやろう」

「……組んだとして、ワイらに、有利になるんか?」
 緩慢に振り返り、リョウは挑む様にレーツェルを見る。

「有利かあ、んー、あまり考えてはいなかった。でも、上位に食い込む自信はあるよ?」
 一瞬きょとんとしてから今気付いた風な感じでレーツェルは暴露し、あっさりと勝利宣言をかましていく。

「あ、思い出した。リョウ・セイレイインか、君は」
 リョウとレーツェルの攻防戦を意に介さずゆったりとした歩調で私たちの前で止まるカグラは、やっと合点がいったと納得してリョウに告げた。

「思い出さんでええわ」
「何故?」
「卒業後嫌でも商売で王家と関わらなあかんのに、学生の時分から関わったらマジ面倒やんか」
 リョウはあっさりと暴露する。

「どういうこと?」
「あんな、ワイんち、西にある宇宙科学工業都市地区の商業ギルドを家業にしてるんや」
 私の問い掛けに、渋々リョウが答えてくれる。

「謙遜し過ぎだろう。代々ギルド長を排出している一族の嫡子で、商売センスは抜群だと聞いたが?」
「誰の情報か知らへんけど、そう言う下世話話はワイ嫌いやねん」
 淡々と周囲に聞こえない位の声音で言うカグラに、不愉快な顔付を隠さずリョウはきっぱりと言い放った。

「やはり、いいな」
 その素っ気無い対応にニヤリと笑って言うカグラに、ビクリと私とリョウは思わず反応してしまう。

 言うセリフは微妙にM属性っぽいんだが、その黒い微笑はS属性っぽい。
 何だろうか、背筋が寒くなる……。
 蛇に睨まれたカエルの気分だよ。

「媚びないところが気に入った。レーツェル」
「了解」
 カグラがレーツェルに声を掛けると、その意を汲んだ彼はリョウの首筋あたりにがしっと腕を回し捕獲してしまう。

「ぐぇ」
「悪いねぇ~、あるじの命令なんで僕らと組んで貰うからね」
 苦しそうにするリョウに、爽やかに告げて来るレーツェルだった。

「……」
 微妙に首が締まっていないか? と、思わず突っ込みたくなる。
 胡乱気に見遣る私に、カグラは目の前に立って目線を合わせる様に少し屈む。

「タイムアウトだな。これで、組まざるを得ないな。それとも、断固として拒否するか?」
「……っ」
 気付けば、与えられた5分の時間きっかりだ。

「はーい! 時間切れよ~~っ! 組めなかった人は特別に宿題が出ますのでそのつもりで!」
 シエンの張り上げた声で、まだ組み分け出来ていない生徒が慌てて組む姿が視界の映る。

「……分りました。拒否してもしなくても、違う意味で袋叩きに遭いそうですし……いいですよ、組んであげても」
 苦しそうにもがくリョウの代わりに、私は精一杯の抵抗を込めて上から目線の物言いで返事をする。
 
「懸命だな」
 ふわりと微笑するカグラに、どきりとする。

 ちょ、心臓に悪い笑顔は止めてぇぇぇぇ!!
 無駄に美麗な顔を近付けるのも勘弁して欲しいよーーっ!!
 危うく、トキメキそうになるじゃないか。
 好きになったらどう責任を取ってくれるんだぁぁぁぁ!!!
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