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粛正の六重奏3

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 最後に残ったのは、王子と騎士達、王と宰相、エルーシャとファルクスである。
 宰相が目配せすると、入り口の騎士は外に出て扉を閉める。
 国王はエルーシャに申し訳なさそうに言う。
「エルーシャ殿下には、もう暫く付き合っていただきたい」
「構いません。最後まで見届ける権利がありますから」
「……イミテ、そなたはここに何故王妃がいないのかをきちんと理解しているか?」
「母上……ですか?」
「そなたの行う事全てが間違っていると、ずっと申していただろう。エメル同様に」
「それは……」
「そなたが改善する努力を放棄した為に心労がたたり、静養せざるをえなくなった王妃はエメルと共に留学する地に行ったのだよ。そなたを見限って。遠い地にあれば己を責めることないからな。王国に混乱と戦争をもたらす者を国母としても王妃としても許容出来ないと言ってな……母としては泣いておったよ」
「…………」
「それでも、一縷の望みを掛けていたようだが、それも潰えた上に最悪の結果を出したな、イミテよ」
「父上……」
 茫然とするイミテに声を掛ける国王。
「父として出来ることはもうないが、息災にな。そなたとあの娘は、他の者達と違う場所に行くことになるが、これもそなたのとった選択の……行動の結果だ」
「ぇ……」
「万年雪がある北の地の砦町プリズンにある修道院に幽閉される。もしも、もしもだが、そなた達がまともになれば……その時は平民として平凡に過ごせる様になるかもしれない。そうなることが父と母の願いでもある。すまぬなイミテよ、国王として国を乱すものを放置する事や容赦は出来ないのだ。そんな事をすれば国が滅びかねない。そのような選択を王として断じて出来ぬ」
 ぎりぎりと拳を握りしめる国王の表情は、苦悶であった。どうにもならない現実を受け入れて飲み込む、そう選択した苦しい感情を制御しようとしているのが伺えた。 
「ち、ちう……え」
 まともに反応が出来なくなっているイミテを見ているが、国王は指示を飛ばす。
「宰相、イミテの旅装の用意をさせたら、そのまま北の地へ連れて行け」
「畏まりました、陛下」
「連れて行け」
 国王は騎士に告げる、騎士達はイミテを左右から片腕を取り立ち上がらせ、会議室から退出していった。
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