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7話:カイラとルドラ、そして挑戦
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「お行き! シャム」
カエは居丈高に、ビシッと集落を指さした。
「くぁ! エラソーに…。いいのか? カルリトス」
「よい。ヴァルヨ・ハリータ持ちの直感じゃろう、なら間違いない」
「はいよ」
シャムは車を出て、集落に入っていった。そして10分ほど経って、2人の子供を連れて戻ってきた。
子供たちはその場に跪いた。
「対象年齢の子供は、この2人しかいなかった。他の子は奉公に出てて、集落には住んでないそうだ」
「判った。どれ、マドゥ」
「はい」
カルリトスに促され、マドゥは車窓ごしに子供たちを見る。
「領主様の御息女、シャンティ王女殿下であらせられる」
「王女殿下に、拝謁いたします」
幼い男女の声が、車中に流れ込んでくる。
しかし、
「ねえ、2人が見えないんだけど…」
後部座席に座るカエは、ドアが閉じられていて、跪く2人の様子が判らない。
「声は聞こえていますか?」
「うん」
「なら大丈夫です」
「いやいや」
カエは「ダメダメ」と手を振る。
「顔見て話したいんだけど」
「それは、しきたりに反します」
「だって自分のソティラスにする子たちなんだよ! ちゃんと目を見て話をしなきゃ」
「しかし」
困惑するマドゥに、カエは譲れない思いで睨み返す。
「身分を弁えておるんじゃ。まあ、今回は仕方がない。シャム」
「へい」
シャムは後部座席のドアを開く。
(うわっ)
ややぬかるんだ地面に、子供たちは平伏している。
「汚れちゃうから立って! っていうかもう汚れちゃってるか…手脚冷たいでしょ、立ち上がって2人とも」
慌てて言うカエの言葉に、2人は顔を伏せたままお互いを見た。
「殿下がああ仰せだ。顔が見えなくて困るらしい、立て」
シャムが言うと、2人はひどく困惑した表情で立ち上がった。
「あなた名前は何て言うの? 年齢は?」
「……」
女の子のほうが、救いを求めるようにマドゥを見る。その様子に、カエはシャムを見た。
「もしかして、王族は直に話しかけない、とか…?」
「ぴんぽーん」
ヤレヤレ、とシャムは肩をすくめた。
(色んな知識がまだ不足まくりだからしょがないのよ!)
だから恥ではないと思うのに、カエの顔は赤らんでしまう。
「しきたりなんてクソ食らえよっ! あなたたちの名前と歳を教えて!」
恥ずかしさを隠すために、ちょっと乱暴に訊く。
「カイラと申します。14歳です、殿下」
可愛い声で恐縮気味にカイラが答えてくれた。14歳ならちょうどいい。
「オレはルドラ、13歳です」
ぶっきらぼうな口調で、ちょっと不機嫌そうな表情でルドラが答えた。
「くううぅううっ!」
「どうした?」
突如カエが唸りだし、カルリトスは慌ててカエの顔を覗き込んだ。
「2人ともメッチャ可愛い! 将来有望マチガイナイ!」
「……」
カルリトスの髭が萎えた。
カイラとルドラも、カエのテンションに思わず吃驚していた。
「ね! 2人とも、私のソティラスになって!」
カエは両腕を前に伸ばし、歓迎の意味をあらわした。顔がにんまりと笑みを浮かべる。しかし、
「一つ条件がある」
ルドラが挑むようにカエを見据えた。
「条件?」
「オレに勝負で勝ったら、言うことをきく」
次の瞬間、シャムがルドラの頭を掴んで、身体を地面に叩きつけた。
「ぐあっ」
「ちょっとシャム!?」
いきなりの展開に、カエの声が裏返る。
「…いいか奴隷、ちょっと甘やかされたくらいで、調子に乗るんじゃねえぞ?」
ルドラを抑えつける手に力を込めて、シャムは低い声で言い放つ。
「殿下が寛容だから、無礼な態度も大目に見てやっていたが、誰に口をきいてんだ。身の程を知れ、ガキが。王族に口をきくこと自体が――罪なんだよ」
言って、シャムはルドラの頭を平手で叩いた。
「奴隷の分際で、王族に勝負をもちかけるなんざ、どんな躾を受けてきたんだ」
「も、申し訳ございません!」
怯えながら困惑していたカイラが、その場に土下座した。
「大変なご無礼を、どうかご容赦くださいませ」
ぶるぶる身を震わせながら謝るカイラの姿に、カエは天井を仰いだ。そしてため息をつき、車を出た。
「姫様なりません!」
大きく声を上げたマドゥを、カエは手で制した。
「怯えないで。さ、立って」
「…え」
カエはカイラの手を取って立ち上がらせた。そして膝についた泥を払ってやる。
「シャム、その手をどけて、ルドラも立たせるのよ」
「はあ?」
「命令よ、従いなさい」
怒った風のカエの顔を見て、シャムは小さく舌打ちしてルドラを解放した。
カエは2人に目線を合わせるよう、少し身体を屈めた。
「2人とも、いきなりすぎてホントごめんね。私、館の外に出たの初めてだから、ちょっとテンション上がっちゃってて」
「そ、そんな、恐れ多いことでございます」
カイラは可愛い顔を悲壮に歪めて恐縮した。
「私の直感がビビっときたの。2人が仲間になってくれたら、メチャ心強いってね!」
「は、はあ…」
「だ・か・ら!」
カエはルドラに顔を向ける。
「勝負方法はなに?」
ルドラは大きく目を開いた。
目の奥に驚きと困惑が宿ったが、すぐにぶっきらぼうな表情に戻り、グッと拳を握った。
「あっちに大きな川がある」
ルドラは集落のほうを示した。
「泳ぎの勝負」
「ほほう、そうきましたか!」
「はああああ!? オイッ」
シャムが素っ頓狂な声を上げる。
カエはシャムにニンマリと笑い、ルドラに視線を戻した。
「いいわよ、受けて立つ! 現役ジョシコーセーの実力を、見せてあげる!」
カエは居丈高に、ビシッと集落を指さした。
「くぁ! エラソーに…。いいのか? カルリトス」
「よい。ヴァルヨ・ハリータ持ちの直感じゃろう、なら間違いない」
「はいよ」
シャムは車を出て、集落に入っていった。そして10分ほど経って、2人の子供を連れて戻ってきた。
子供たちはその場に跪いた。
「対象年齢の子供は、この2人しかいなかった。他の子は奉公に出てて、集落には住んでないそうだ」
「判った。どれ、マドゥ」
「はい」
カルリトスに促され、マドゥは車窓ごしに子供たちを見る。
「領主様の御息女、シャンティ王女殿下であらせられる」
「王女殿下に、拝謁いたします」
幼い男女の声が、車中に流れ込んでくる。
しかし、
「ねえ、2人が見えないんだけど…」
後部座席に座るカエは、ドアが閉じられていて、跪く2人の様子が判らない。
「声は聞こえていますか?」
「うん」
「なら大丈夫です」
「いやいや」
カエは「ダメダメ」と手を振る。
「顔見て話したいんだけど」
「それは、しきたりに反します」
「だって自分のソティラスにする子たちなんだよ! ちゃんと目を見て話をしなきゃ」
「しかし」
困惑するマドゥに、カエは譲れない思いで睨み返す。
「身分を弁えておるんじゃ。まあ、今回は仕方がない。シャム」
「へい」
シャムは後部座席のドアを開く。
(うわっ)
ややぬかるんだ地面に、子供たちは平伏している。
「汚れちゃうから立って! っていうかもう汚れちゃってるか…手脚冷たいでしょ、立ち上がって2人とも」
慌てて言うカエの言葉に、2人は顔を伏せたままお互いを見た。
「殿下がああ仰せだ。顔が見えなくて困るらしい、立て」
シャムが言うと、2人はひどく困惑した表情で立ち上がった。
「あなた名前は何て言うの? 年齢は?」
「……」
女の子のほうが、救いを求めるようにマドゥを見る。その様子に、カエはシャムを見た。
「もしかして、王族は直に話しかけない、とか…?」
「ぴんぽーん」
ヤレヤレ、とシャムは肩をすくめた。
(色んな知識がまだ不足まくりだからしょがないのよ!)
だから恥ではないと思うのに、カエの顔は赤らんでしまう。
「しきたりなんてクソ食らえよっ! あなたたちの名前と歳を教えて!」
恥ずかしさを隠すために、ちょっと乱暴に訊く。
「カイラと申します。14歳です、殿下」
可愛い声で恐縮気味にカイラが答えてくれた。14歳ならちょうどいい。
「オレはルドラ、13歳です」
ぶっきらぼうな口調で、ちょっと不機嫌そうな表情でルドラが答えた。
「くううぅううっ!」
「どうした?」
突如カエが唸りだし、カルリトスは慌ててカエの顔を覗き込んだ。
「2人ともメッチャ可愛い! 将来有望マチガイナイ!」
「……」
カルリトスの髭が萎えた。
カイラとルドラも、カエのテンションに思わず吃驚していた。
「ね! 2人とも、私のソティラスになって!」
カエは両腕を前に伸ばし、歓迎の意味をあらわした。顔がにんまりと笑みを浮かべる。しかし、
「一つ条件がある」
ルドラが挑むようにカエを見据えた。
「条件?」
「オレに勝負で勝ったら、言うことをきく」
次の瞬間、シャムがルドラの頭を掴んで、身体を地面に叩きつけた。
「ぐあっ」
「ちょっとシャム!?」
いきなりの展開に、カエの声が裏返る。
「…いいか奴隷、ちょっと甘やかされたくらいで、調子に乗るんじゃねえぞ?」
ルドラを抑えつける手に力を込めて、シャムは低い声で言い放つ。
「殿下が寛容だから、無礼な態度も大目に見てやっていたが、誰に口をきいてんだ。身の程を知れ、ガキが。王族に口をきくこと自体が――罪なんだよ」
言って、シャムはルドラの頭を平手で叩いた。
「奴隷の分際で、王族に勝負をもちかけるなんざ、どんな躾を受けてきたんだ」
「も、申し訳ございません!」
怯えながら困惑していたカイラが、その場に土下座した。
「大変なご無礼を、どうかご容赦くださいませ」
ぶるぶる身を震わせながら謝るカイラの姿に、カエは天井を仰いだ。そしてため息をつき、車を出た。
「姫様なりません!」
大きく声を上げたマドゥを、カエは手で制した。
「怯えないで。さ、立って」
「…え」
カエはカイラの手を取って立ち上がらせた。そして膝についた泥を払ってやる。
「シャム、その手をどけて、ルドラも立たせるのよ」
「はあ?」
「命令よ、従いなさい」
怒った風のカエの顔を見て、シャムは小さく舌打ちしてルドラを解放した。
カエは2人に目線を合わせるよう、少し身体を屈めた。
「2人とも、いきなりすぎてホントごめんね。私、館の外に出たの初めてだから、ちょっとテンション上がっちゃってて」
「そ、そんな、恐れ多いことでございます」
カイラは可愛い顔を悲壮に歪めて恐縮した。
「私の直感がビビっときたの。2人が仲間になってくれたら、メチャ心強いってね!」
「は、はあ…」
「だ・か・ら!」
カエはルドラに顔を向ける。
「勝負方法はなに?」
ルドラは大きく目を開いた。
目の奥に驚きと困惑が宿ったが、すぐにぶっきらぼうな表情に戻り、グッと拳を握った。
「あっちに大きな川がある」
ルドラは集落のほうを示した。
「泳ぎの勝負」
「ほほう、そうきましたか!」
「はああああ!? オイッ」
シャムが素っ頓狂な声を上げる。
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