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38話:王の爆弾発言
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「飛行機というものを知っているか?」
「……ヒコウキ?」
「大きな鉄の塊が、鳥のように翼を広げて空を飛ぶのだ。何千キロ、何万キロを、人でも物でも載せて飛ぶ。素晴らしい乗り物だ」
王は掌を飛行機の形のように見立て、旋回する様を表す。精悍な顔つきに、少年のような表情が浮かんだ。
「余は飛行機を見ているのが好きだった。空軍基地を、遠くから望遠鏡で覗き見をしていたのだ」
話がいまいち見えてこず、カルリトスは小さく首を傾げた。
王は、シャンティ王女とアルジェン王子を見る。
「あの2人は、余と同郷の様だな。本来の余の子供たちは、すでに亡き者になっているようだ」
「!!」
ようやくカルリトスは合点がいき、そして仰天した。
「あ、あなたまで…」
「ふっ、そちを驚かせることに成功したようで何よりだ」
王は小さく笑った。
「あまりにも突然の出来事であった。いつものように、丘で望遠鏡を眺めていたら、こちらの世界に来ていた。そして、心臓の入った飲み物を飲まされた」
「なっ…」
「酷い苦しみの末、余はボーディ王子の見目に変えられ、ヴァルヨ・ハリータの力を受け継いだ」
「なんということじゃ……」
カルリトスは絶句する。
「暫くは余の世界が恋しかった。なにせ、この世界には飛行機が飛んでおらぬではないか。だからな、作ってやろう、そう思った。だが…」
はぁ、とため息をついて、王は肩をすくめた。
「ラザネイトの魔力使用量が多すぎて、機体を持ち上げることすらできないという。まずは、ラザネイトを発展させるのが急務だそうだ」
「魔法やヴァルヨ・ハリータなどという不思議に満ちている割に、融通が利かないことだ」
どう反応していいか困り、カルリトスは床を見つめた。
「余は、クマール・カマルの血を引いておらぬ。まして、出自は異世界人だ。だが、ヴァルヨ・ハリータの力は、余の子供たちに引き継がれている」
王はカルリトスのほうをチラと向いた。
「ラタが生まれ、ヴァルヨ・ハリータの力を継いでいることが判った時、余は、心の底からホッとしたのだ。――判るか? その時の気持ちが」
「……判る気がするよ」
カルリトスは何度も何度も頷いた。
「――シャンティとアルジェンは、そちたちが意図して弑したわけではないのだな?」
「無論じゃ。どちらも不幸な事故により命を落としておる。いくらなんでも、博打中の博打までは打てんわ」
「そうだろうな」
はははっと王は笑い、カルリトスはため息をついた。
「魔改造された者でも、ヴァルヨ・ハリータの力は受け継がれていく。そこだけは安心してよい。――あのシャンティ王女は、良き王になれるだろう」
「儂もそう思う。少々単細胞じゃが、根が素直で善悪の判断もよくつく」
王は安堵に満ちた表情を浮かべた。
「神の庭で、ラタ王女が待っている。さらばだ、カルリトス王」
「後のことは、任せるがよい」
バラー・カルリトスが両腕を広げた。
鞘を求めた10本のタルワールが宙を踊り、ボーディ・カマルの身体に吸い込まれるようにして収まった。
王のエセキアス・アラリコは、全て息絶えた。
《*ボーディ・カマル視点・終わり*》
玉座で静かに王の幕が下ろされている頃、スーリヤ宮を中心にして、巨大な魔法陣が書かれ続けていた。
妖術師レヤンシュが乗っ取ったニシャの身体と魔力を使い、異世界送還魔法陣が段々と形を成していく。
魔法陣の影響を受けて、スーリヤ宮やウシャス宮殿全体が酷い震動に襲われていた。
「ニシャ! ニシャ!!」
カエは必死に呼びかけ、ニシャの意識を引っ張り出そうとする。
「アニメだと、こういう展開では、とにかく呼んで呼んで呼びまくるしかナイ!!」
カエの知る限りのアニメだと、呼びかければナントカなる作戦で、大抵は悪が負けるように出来ているのだ。
しかし目の前のニシャは、乗っ取られたままでウンともスンとも返事がない。
「やっぱアニメと現実はチガウのかああっ!!」
「レヤンシュは異世界召喚術も扱える、優秀な妖術師だ。おまえがピーピー叫んだところで無駄なんだよ、バーカ」
嘲笑うアルジェン王子に、カエは特大の「あっかんべー」をする。
「言ってろサイコ野郎! ウチのニシャがそう簡単に使われるわけないでしょ! ナメんじゃないよ、このすっとこどっこい!!」
「このビッチ!!」
「お互い様でしょ。あんたは最初っから品がないんだよ、品が!」
「殺す、マジ、ここでテメーは殺す!!」
アルジェン王子は隠し持っていたパタを抜き放ち、カエ目掛けて刃を突き出した。
カエは落ちていたバークティ妃の鉄扇を拾い、余裕で剣を受ける。
「秘密特訓したかいがあったわ!!」
鉄扇で受け流した刃を、カエは撥ねつけるように押し返した。
アルジェン王子は後ろによろけ、尻もちをつきかけた。
「クソが!」
「ふん!! ジョシコーセーなめんじゃないよ」
カエは親指を立て、そしてクイッと下に向けた。
「……ヒコウキ?」
「大きな鉄の塊が、鳥のように翼を広げて空を飛ぶのだ。何千キロ、何万キロを、人でも物でも載せて飛ぶ。素晴らしい乗り物だ」
王は掌を飛行機の形のように見立て、旋回する様を表す。精悍な顔つきに、少年のような表情が浮かんだ。
「余は飛行機を見ているのが好きだった。空軍基地を、遠くから望遠鏡で覗き見をしていたのだ」
話がいまいち見えてこず、カルリトスは小さく首を傾げた。
王は、シャンティ王女とアルジェン王子を見る。
「あの2人は、余と同郷の様だな。本来の余の子供たちは、すでに亡き者になっているようだ」
「!!」
ようやくカルリトスは合点がいき、そして仰天した。
「あ、あなたまで…」
「ふっ、そちを驚かせることに成功したようで何よりだ」
王は小さく笑った。
「あまりにも突然の出来事であった。いつものように、丘で望遠鏡を眺めていたら、こちらの世界に来ていた。そして、心臓の入った飲み物を飲まされた」
「なっ…」
「酷い苦しみの末、余はボーディ王子の見目に変えられ、ヴァルヨ・ハリータの力を受け継いだ」
「なんということじゃ……」
カルリトスは絶句する。
「暫くは余の世界が恋しかった。なにせ、この世界には飛行機が飛んでおらぬではないか。だからな、作ってやろう、そう思った。だが…」
はぁ、とため息をついて、王は肩をすくめた。
「ラザネイトの魔力使用量が多すぎて、機体を持ち上げることすらできないという。まずは、ラザネイトを発展させるのが急務だそうだ」
「魔法やヴァルヨ・ハリータなどという不思議に満ちている割に、融通が利かないことだ」
どう反応していいか困り、カルリトスは床を見つめた。
「余は、クマール・カマルの血を引いておらぬ。まして、出自は異世界人だ。だが、ヴァルヨ・ハリータの力は、余の子供たちに引き継がれている」
王はカルリトスのほうをチラと向いた。
「ラタが生まれ、ヴァルヨ・ハリータの力を継いでいることが判った時、余は、心の底からホッとしたのだ。――判るか? その時の気持ちが」
「……判る気がするよ」
カルリトスは何度も何度も頷いた。
「――シャンティとアルジェンは、そちたちが意図して弑したわけではないのだな?」
「無論じゃ。どちらも不幸な事故により命を落としておる。いくらなんでも、博打中の博打までは打てんわ」
「そうだろうな」
はははっと王は笑い、カルリトスはため息をついた。
「魔改造された者でも、ヴァルヨ・ハリータの力は受け継がれていく。そこだけは安心してよい。――あのシャンティ王女は、良き王になれるだろう」
「儂もそう思う。少々単細胞じゃが、根が素直で善悪の判断もよくつく」
王は安堵に満ちた表情を浮かべた。
「神の庭で、ラタ王女が待っている。さらばだ、カルリトス王」
「後のことは、任せるがよい」
バラー・カルリトスが両腕を広げた。
鞘を求めた10本のタルワールが宙を踊り、ボーディ・カマルの身体に吸い込まれるようにして収まった。
王のエセキアス・アラリコは、全て息絶えた。
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玉座で静かに王の幕が下ろされている頃、スーリヤ宮を中心にして、巨大な魔法陣が書かれ続けていた。
妖術師レヤンシュが乗っ取ったニシャの身体と魔力を使い、異世界送還魔法陣が段々と形を成していく。
魔法陣の影響を受けて、スーリヤ宮やウシャス宮殿全体が酷い震動に襲われていた。
「ニシャ! ニシャ!!」
カエは必死に呼びかけ、ニシャの意識を引っ張り出そうとする。
「アニメだと、こういう展開では、とにかく呼んで呼んで呼びまくるしかナイ!!」
カエの知る限りのアニメだと、呼びかければナントカなる作戦で、大抵は悪が負けるように出来ているのだ。
しかし目の前のニシャは、乗っ取られたままでウンともスンとも返事がない。
「やっぱアニメと現実はチガウのかああっ!!」
「レヤンシュは異世界召喚術も扱える、優秀な妖術師だ。おまえがピーピー叫んだところで無駄なんだよ、バーカ」
嘲笑うアルジェン王子に、カエは特大の「あっかんべー」をする。
「言ってろサイコ野郎! ウチのニシャがそう簡単に使われるわけないでしょ! ナメんじゃないよ、このすっとこどっこい!!」
「このビッチ!!」
「お互い様でしょ。あんたは最初っから品がないんだよ、品が!」
「殺す、マジ、ここでテメーは殺す!!」
アルジェン王子は隠し持っていたパタを抜き放ち、カエ目掛けて刃を突き出した。
カエは落ちていたバークティ妃の鉄扇を拾い、余裕で剣を受ける。
「秘密特訓したかいがあったわ!!」
鉄扇で受け流した刃を、カエは撥ねつけるように押し返した。
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