477 / 882
エルアーラ遺跡編
episode458
しおりを挟む
あまりにも突然降って沸いたので、一同ギョッとしてベルトルドに注目を集めた。
エルアーラ遺跡からソレル王国首都アルイールにある王宮へと空間転移したベルトルドは、疲労困憊の様子でむっすりと口をへの字に曲げた。
「お疲れ、ベル」
「おう」
別段驚いた風もないリュリュが濡れタオルを差し出すと、ベルトルドはひったくるようにして受け取り、乱暴に顔を拭く。顔だけでもサッパリすると、長いテーブルの上座に落ち着いた。
ハワドウレ皇国軍で接収した王宮の中で、会議室に使っていただろう部屋に特別に設えた細長いテーブル前には、皇国軍の大将たちが座している。揃いも揃って皆渋い表情を浮かべ、ベルトルドを見ていた。
開戦宣言から僅か数時間で終戦宣言をしたベルトルドから、その説明を聞くためである。
目だけ動かし大将らの顔を見て、ベルトルドはうんざりした。いつも以上に疲れきっていて、早く寝たくてしょうがないというのに。これからこの堅物どもを黙らせるために、ひと芝居打つ必要があるのだ。
上座の右手に座しているブルーベル将軍は、にこやかな表情を崩さなかった。事前に今度のことは打ち明けられていただけに、代わって大将たちに説明しても良かったが、さすがにこれはベルトルドが言わないと大将たちは納得しないだろう。
明らかにベルトルドが疲れているのは表情で察することが出来る。それだけに、早く休ませてやりたい。
堪りかねたように席を立ち上がり、真っ先に口を開いたのは、第五正規部隊を預かるオルヴォ大将だ。
「閣下、お疲れのところ、真っ直ぐおいでくださいましたこと、まずは御礼申し上げます。――我々がこうして集まり、顔を揃えているのは、此度の説明を閣下から直接頂きたいからです」
ベルトルドは神妙に頷き、そしてオルヴォ大将に座るように手振りで示した。
「卿たちの困惑と不満も重々承知している。こんな大規模な戦力を送り込んだうえに、大してやり合わずに数時間で決着する戦争など、前代未聞だからな」
疲れた表情に苦笑が浮かぶ。言葉にすると陳腐極まりないが、実際の現場は大混乱だろう。敵味方関係なく、不満が溢れてしょうがない状況はいまだに続いている。
敵の奇襲にあい、開戦予定日よりも早くことが動いた為に、皇国側の予定が狂ったことも大きい。
「だが逆臣軍との表面的な決着はこれでいいんだ。迅速にソレル国王やその他の王たちの首を撥ねて、それを世界中に見せつけてやったからな」
ベルトルドの言うことを少々理解しかね、オルヴォ大将は首をかしげた。
「3年前の旧コッコラ王国の一件を、皆覚えているだろう? あの時も然り、そして今回も然り、皇国に叛意を燻らせている国は多い。表面だってはいないが、逆臣軍へコソコソと裏で資金提供や武力提供をしていた国もある」
切なげなため息を一つし、伏せていた目を開く。
「そういった輩どもが、いつ反旗を翻すかしれたものじゃない。何ヶ月もかけて準備をし、現場で奮闘した諸卿らには大変申し訳なく思うが、決して軽んじたわけではない。此度の戦争は後々の世のための、布石、だと考えて欲しい」
沈痛な面持ちのベルトルドを見て、大将たちはハッとなった。ベルトルドの意図することが――。
そして大将全員が席を立ち、その場に膝まづいた。
エルアーラ遺跡からソレル王国首都アルイールにある王宮へと空間転移したベルトルドは、疲労困憊の様子でむっすりと口をへの字に曲げた。
「お疲れ、ベル」
「おう」
別段驚いた風もないリュリュが濡れタオルを差し出すと、ベルトルドはひったくるようにして受け取り、乱暴に顔を拭く。顔だけでもサッパリすると、長いテーブルの上座に落ち着いた。
ハワドウレ皇国軍で接収した王宮の中で、会議室に使っていただろう部屋に特別に設えた細長いテーブル前には、皇国軍の大将たちが座している。揃いも揃って皆渋い表情を浮かべ、ベルトルドを見ていた。
開戦宣言から僅か数時間で終戦宣言をしたベルトルドから、その説明を聞くためである。
目だけ動かし大将らの顔を見て、ベルトルドはうんざりした。いつも以上に疲れきっていて、早く寝たくてしょうがないというのに。これからこの堅物どもを黙らせるために、ひと芝居打つ必要があるのだ。
上座の右手に座しているブルーベル将軍は、にこやかな表情を崩さなかった。事前に今度のことは打ち明けられていただけに、代わって大将たちに説明しても良かったが、さすがにこれはベルトルドが言わないと大将たちは納得しないだろう。
明らかにベルトルドが疲れているのは表情で察することが出来る。それだけに、早く休ませてやりたい。
堪りかねたように席を立ち上がり、真っ先に口を開いたのは、第五正規部隊を預かるオルヴォ大将だ。
「閣下、お疲れのところ、真っ直ぐおいでくださいましたこと、まずは御礼申し上げます。――我々がこうして集まり、顔を揃えているのは、此度の説明を閣下から直接頂きたいからです」
ベルトルドは神妙に頷き、そしてオルヴォ大将に座るように手振りで示した。
「卿たちの困惑と不満も重々承知している。こんな大規模な戦力を送り込んだうえに、大してやり合わずに数時間で決着する戦争など、前代未聞だからな」
疲れた表情に苦笑が浮かぶ。言葉にすると陳腐極まりないが、実際の現場は大混乱だろう。敵味方関係なく、不満が溢れてしょうがない状況はいまだに続いている。
敵の奇襲にあい、開戦予定日よりも早くことが動いた為に、皇国側の予定が狂ったことも大きい。
「だが逆臣軍との表面的な決着はこれでいいんだ。迅速にソレル国王やその他の王たちの首を撥ねて、それを世界中に見せつけてやったからな」
ベルトルドの言うことを少々理解しかね、オルヴォ大将は首をかしげた。
「3年前の旧コッコラ王国の一件を、皆覚えているだろう? あの時も然り、そして今回も然り、皇国に叛意を燻らせている国は多い。表面だってはいないが、逆臣軍へコソコソと裏で資金提供や武力提供をしていた国もある」
切なげなため息を一つし、伏せていた目を開く。
「そういった輩どもが、いつ反旗を翻すかしれたものじゃない。何ヶ月もかけて準備をし、現場で奮闘した諸卿らには大変申し訳なく思うが、決して軽んじたわけではない。此度の戦争は後々の世のための、布石、だと考えて欲しい」
沈痛な面持ちのベルトルドを見て、大将たちはハッとなった。ベルトルドの意図することが――。
そして大将全員が席を立ち、その場に膝まづいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる