608 / 882
アン=マリー女学院からの依頼編
episode545
しおりを挟む
皆の予想を裏切り、キュッリッキが全速力で向かっていたのはハーメンリンナだった。
常に身につけている通行証を見せてハーメンリンナに入る。ハーメンリンナの住人として登録されているキュッリッキは、ボディチェックもなくすんなりと丁重に通された。そして地下通路に入ると、案内板を見ながら真っ直ぐ走る。
地下を走るリニアを、なんとなく怖くて避けているキュッリッキは、自らの脚で広大な地下通路をひた走った。
途中から息が切れてきて、フェンリルが狼形態に身体を戻し、キュッリッキを乗せて地下通路を駆け抜ける。すれ違う人々が大きな狼の姿にギョッと慄くが、それもスルーしてひたすら目的地へ向かう。
やがて地上に躍り出たフェンリルから飛び降り、キュッリッキは大きな建物に飛び込んだ。そして身体を小さく戻したフェンリルに案内してもらい、一際大きな扉を勢いよく開いた。
「ベルトルドさんいるっ!?」
室内からザワッと騒然とした声が漂ってきた。扉のところに立つキュッリッキに、室内全ての視線が集中する。
「リッキー?」
部屋の上座にいるベルトルドが、間の抜けた声を出す。その横に立っていたリュリュも、垂れ目をぱちくりさせてキュッリッキを見ていた。
軍服を着た居並ぶ人々を見渡し、上座にベルトルドを見つけたキュッリッキは、迂回もせずにテーブルに飛び乗って駆け出した。そしてベルトルドの前に到着すると、しゃがみこんでベルトルドの襟元を両手で握り締めた。
「ベルトルドさん! アタシのお願い聞いてくれたら一発ヤラせてあげる!!」
行儀の悪い行動よりも、その発言に室内が固まった。
沈黙のステップが室内を一周した頃、ベルトルドが無言のまま静かに席をたった。そして、テーブルの上でしゃがみこんでいるキュッリッキを、素早く腕に抱き上げる。
「さあリッキー、お願いを言ってみるがいい!!」
顔は真剣そのもの、ただブルーグレーの両眼だけが、ギラギラと熱をもって燃え盛っていた。興奮のためか、鼻の穴が膨らんでいる。
「今すぐブロムストランド共和国に飛んで、悪い奴をやっつけちゃって!!」
「任せろ!」
「ちょっとベル!?」
「会議は適当に勝手にやっておけ!」
そう言いおくと、キュッリッキを腕に抱いたまま空間転移してしまった。
「…………」
空間転移の余波で、書類が数枚ヒラヒラと床に落ちる。
「いやあ、相変わらず、股間に正直な方ですねえ」
ブルーベル将軍がニコニコと言う。その一言で金縛りが解けたリュリュは、ハッとなり、きぃいいっと手にしていた書類を噛んだ。
「一体ナンナノヨっンもおおお!」
書類を噛みちぎると、リュリュは会議室を飛び出していった。
常に身につけている通行証を見せてハーメンリンナに入る。ハーメンリンナの住人として登録されているキュッリッキは、ボディチェックもなくすんなりと丁重に通された。そして地下通路に入ると、案内板を見ながら真っ直ぐ走る。
地下を走るリニアを、なんとなく怖くて避けているキュッリッキは、自らの脚で広大な地下通路をひた走った。
途中から息が切れてきて、フェンリルが狼形態に身体を戻し、キュッリッキを乗せて地下通路を駆け抜ける。すれ違う人々が大きな狼の姿にギョッと慄くが、それもスルーしてひたすら目的地へ向かう。
やがて地上に躍り出たフェンリルから飛び降り、キュッリッキは大きな建物に飛び込んだ。そして身体を小さく戻したフェンリルに案内してもらい、一際大きな扉を勢いよく開いた。
「ベルトルドさんいるっ!?」
室内からザワッと騒然とした声が漂ってきた。扉のところに立つキュッリッキに、室内全ての視線が集中する。
「リッキー?」
部屋の上座にいるベルトルドが、間の抜けた声を出す。その横に立っていたリュリュも、垂れ目をぱちくりさせてキュッリッキを見ていた。
軍服を着た居並ぶ人々を見渡し、上座にベルトルドを見つけたキュッリッキは、迂回もせずにテーブルに飛び乗って駆け出した。そしてベルトルドの前に到着すると、しゃがみこんでベルトルドの襟元を両手で握り締めた。
「ベルトルドさん! アタシのお願い聞いてくれたら一発ヤラせてあげる!!」
行儀の悪い行動よりも、その発言に室内が固まった。
沈黙のステップが室内を一周した頃、ベルトルドが無言のまま静かに席をたった。そして、テーブルの上でしゃがみこんでいるキュッリッキを、素早く腕に抱き上げる。
「さあリッキー、お願いを言ってみるがいい!!」
顔は真剣そのもの、ただブルーグレーの両眼だけが、ギラギラと熱をもって燃え盛っていた。興奮のためか、鼻の穴が膨らんでいる。
「今すぐブロムストランド共和国に飛んで、悪い奴をやっつけちゃって!!」
「任せろ!」
「ちょっとベル!?」
「会議は適当に勝手にやっておけ!」
そう言いおくと、キュッリッキを腕に抱いたまま空間転移してしまった。
「…………」
空間転移の余波で、書類が数枚ヒラヒラと床に落ちる。
「いやあ、相変わらず、股間に正直な方ですねえ」
ブルーベル将軍がニコニコと言う。その一言で金縛りが解けたリュリュは、ハッとなり、きぃいいっと手にしていた書類を噛んだ。
「一体ナンナノヨっンもおおお!」
書類を噛みちぎると、リュリュは会議室を飛び出していった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる