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フリングホルニ編
episode761
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拳を中心に、辺りに細い稲妻が無数に踊りだす。
「サラマ・フルウス!」
アルカネットの目がカッと見開かれた瞬間、拳を取り巻いていた稲妻が、ライオン傭兵団目掛けて襲いかかった。
紫色の光を放ちながら、稲妻は室内を踊り狂い、バチバチと引合いながらあらゆるものに巻き付いた。
「感電死はカンベーン!!」
ルーファスは大きく両手を広げ、大きなドームのイメージを皆の周りに張り巡らせた。そのサイ《超能力》による防御の上に、カーティスとハーマンの防御魔法が被さる。
ルーファス、カーティス、ハーマンの3人が、防御結界で稲妻の嵐を防いでいく。
(いつまで続くのコレ!)
(そうですねえ……アルカネットさんの魔力が尽きるまで、でしょうか)
カーティスが冷静に言うと、ルーファスはゲンナリとため息をついた。
今は、ヴィヒトリ特製のドーピング薬で有り得ないほど元気100倍状態だが、薬の効果が切れれば、100%死ぬだろう。
(どんだけ雷攻撃が得意なんだよーもおー)
嫉妬をにじませた声で、ハーマンが文句を言う。サマラ・フルウスは稲妻を無数に操り、攻撃する範囲系高位魔法の一つだ。
(よほど、雷が嫌いなんだろうね。嫌いだから、憎いから、だから反動で強くなってしまったんだろう)
珍しくペルラが、ぽつりと言った。
(だろうな。だが、そろそろ反撃しないと、これじゃキリがねえぞ)
ペルラの言に同意しつつ、ギャリーはアルカネットを睨みつける。これには全員頷いた。
(冷静さを取り戻したとは言え、アルカネットが消耗しているのは間違いない。ギャリー、ハーマン、ザカリー、攪乱攻撃をもう一度してくれ。俺がケリをつける)
(判った)
ドラウプニルを付け直し、ガエルは大きな拳をグッと握る。かつてないほどの闘気が、筋肉に盛り上がる肉体を覆い尽くしていった。
闘気は本来目に見えないものだが、ガエルが本気で断言するとき、うっすらと煙のように見えるようになる。
ドーピング効果も手伝い、今のガエルなら確実にアルカネットの息の根を止めるだろう。
決着の時だった。
ギャリーはシラーをアルカネットに構え、柄をしっかりと握り締めた。そしてふと、キュッリッキの顔を思い出す。
初めてアジトに来た日、年齢の割に中身は幼子のようで、正直この先やっていけるのかとヒヤヒヤしていた。しかし、仕事の時は傭兵としてちゃんと動くし、度胸も良い。普段の生活では、随分となついてきて、恋愛感情は一切わかないが、妹が出来たようで可愛かった。
まだまだ幼気(いたいけ)で、純粋なあのキュッリッキを復讐の道具として、心身ともに傷つけたアルカネットとベルトルド。最愛の者が傷つけられ、失うことがどんなことか、よく判っていたハズなのに。更には、親に捨てられた過去を持つキュッリッキが、父親のように慕っていたことも判っていて、無下に切り捨てた。
あの二人がどんな思いで、31年という長い月日を生きてきたかは、想像を絶する。
しかし、そんなことよりも、大事なのはキュッリッキなのだ。
「助けてやるからよ、待ってろ」
シラーの切っ先をアルカネットに定めたまま、ギャリーはそのまま前に走り出した。
「ギャラルホルンから流れる音色
イザヴェルを遊びながら吹き抜ける風
ブラスト・トウーリ!!」
ハーマンは範囲高位風魔法を詠唱し、無数に荒れ狂う稲妻を風の力で払いのける。
「形状変化!!」
ハーマンの起こしたブラスト・トウーリに背中を押され、ギャリーはアルカネットに突っ込む。
リヴヤーターン・モードが発動し、7匹の金色の蛇がスパイダーネットのように広がりアルカネットを包囲する。
「ライトニング・ルオースカ!」
すかさずアルカネットは、雷の単発魔法を蛇の頭に叩きつけながら、後ろに跳ねるように後退する。
激しい雷の一撃を食らって、蛇たちは弾かれていくが、すぐさま攻撃を再開する。
「鬱陶しいっ」
舌打ちして、次の魔法を発動させようとしたその時。
「なにっ!」
突如横から大きな影が接近し、アルカネットは咄嗟に翼で影を払う。
「サラマ・フルウス!」
すかさず稲妻を繰り出すが、影はすでに後退して構え直していた。
「ガエル……」
忌々しげに名を言われ、ガエルは不敵な笑みを口元にたたえた。
その間にも、シラーの金色の蛇の追尾は止まらず、ザカリーからの魔弾連射も続いている。いつになくコントロールが完璧な、ハーマンの高位攻撃魔法も連続で飛んでいた。
自身の攻撃は、ルーファスとカーティスによって防がれている。
アサシン技術を持つペルラも、虎視眈々と狙いをつけていた。
それらを思い、突如アルカネットの心に、冷たいものがスッと射し込んだ。
リューディアを失った時とは違う、得体の知れない感情が、ふつふつと心に湧き上がった。
殺される、そう思った途端、アルカネットの表情が大きく歪んだ。
「ベ、ベル……ルド」
「サラマ・フルウス!」
アルカネットの目がカッと見開かれた瞬間、拳を取り巻いていた稲妻が、ライオン傭兵団目掛けて襲いかかった。
紫色の光を放ちながら、稲妻は室内を踊り狂い、バチバチと引合いながらあらゆるものに巻き付いた。
「感電死はカンベーン!!」
ルーファスは大きく両手を広げ、大きなドームのイメージを皆の周りに張り巡らせた。そのサイ《超能力》による防御の上に、カーティスとハーマンの防御魔法が被さる。
ルーファス、カーティス、ハーマンの3人が、防御結界で稲妻の嵐を防いでいく。
(いつまで続くのコレ!)
(そうですねえ……アルカネットさんの魔力が尽きるまで、でしょうか)
カーティスが冷静に言うと、ルーファスはゲンナリとため息をついた。
今は、ヴィヒトリ特製のドーピング薬で有り得ないほど元気100倍状態だが、薬の効果が切れれば、100%死ぬだろう。
(どんだけ雷攻撃が得意なんだよーもおー)
嫉妬をにじませた声で、ハーマンが文句を言う。サマラ・フルウスは稲妻を無数に操り、攻撃する範囲系高位魔法の一つだ。
(よほど、雷が嫌いなんだろうね。嫌いだから、憎いから、だから反動で強くなってしまったんだろう)
珍しくペルラが、ぽつりと言った。
(だろうな。だが、そろそろ反撃しないと、これじゃキリがねえぞ)
ペルラの言に同意しつつ、ギャリーはアルカネットを睨みつける。これには全員頷いた。
(冷静さを取り戻したとは言え、アルカネットが消耗しているのは間違いない。ギャリー、ハーマン、ザカリー、攪乱攻撃をもう一度してくれ。俺がケリをつける)
(判った)
ドラウプニルを付け直し、ガエルは大きな拳をグッと握る。かつてないほどの闘気が、筋肉に盛り上がる肉体を覆い尽くしていった。
闘気は本来目に見えないものだが、ガエルが本気で断言するとき、うっすらと煙のように見えるようになる。
ドーピング効果も手伝い、今のガエルなら確実にアルカネットの息の根を止めるだろう。
決着の時だった。
ギャリーはシラーをアルカネットに構え、柄をしっかりと握り締めた。そしてふと、キュッリッキの顔を思い出す。
初めてアジトに来た日、年齢の割に中身は幼子のようで、正直この先やっていけるのかとヒヤヒヤしていた。しかし、仕事の時は傭兵としてちゃんと動くし、度胸も良い。普段の生活では、随分となついてきて、恋愛感情は一切わかないが、妹が出来たようで可愛かった。
まだまだ幼気(いたいけ)で、純粋なあのキュッリッキを復讐の道具として、心身ともに傷つけたアルカネットとベルトルド。最愛の者が傷つけられ、失うことがどんなことか、よく判っていたハズなのに。更には、親に捨てられた過去を持つキュッリッキが、父親のように慕っていたことも判っていて、無下に切り捨てた。
あの二人がどんな思いで、31年という長い月日を生きてきたかは、想像を絶する。
しかし、そんなことよりも、大事なのはキュッリッキなのだ。
「助けてやるからよ、待ってろ」
シラーの切っ先をアルカネットに定めたまま、ギャリーはそのまま前に走り出した。
「ギャラルホルンから流れる音色
イザヴェルを遊びながら吹き抜ける風
ブラスト・トウーリ!!」
ハーマンは範囲高位風魔法を詠唱し、無数に荒れ狂う稲妻を風の力で払いのける。
「形状変化!!」
ハーマンの起こしたブラスト・トウーリに背中を押され、ギャリーはアルカネットに突っ込む。
リヴヤーターン・モードが発動し、7匹の金色の蛇がスパイダーネットのように広がりアルカネットを包囲する。
「ライトニング・ルオースカ!」
すかさずアルカネットは、雷の単発魔法を蛇の頭に叩きつけながら、後ろに跳ねるように後退する。
激しい雷の一撃を食らって、蛇たちは弾かれていくが、すぐさま攻撃を再開する。
「鬱陶しいっ」
舌打ちして、次の魔法を発動させようとしたその時。
「なにっ!」
突如横から大きな影が接近し、アルカネットは咄嗟に翼で影を払う。
「サラマ・フルウス!」
すかさず稲妻を繰り出すが、影はすでに後退して構え直していた。
「ガエル……」
忌々しげに名を言われ、ガエルは不敵な笑みを口元にたたえた。
その間にも、シラーの金色の蛇の追尾は止まらず、ザカリーからの魔弾連射も続いている。いつになくコントロールが完璧な、ハーマンの高位攻撃魔法も連続で飛んでいた。
自身の攻撃は、ルーファスとカーティスによって防がれている。
アサシン技術を持つペルラも、虎視眈々と狙いをつけていた。
それらを思い、突如アルカネットの心に、冷たいものがスッと射し込んだ。
リューディアを失った時とは違う、得体の知れない感情が、ふつふつと心に湧き上がった。
殺される、そう思った途端、アルカネットの表情が大きく歪んだ。
「ベ、ベル……ルド」
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