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番外編・3
人魚姫と王子様(?)・1
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動物と人が混じりあった亜人トゥーリ族が治める惑星ペッコには、広大な海に囲まれた4つの大陸と群島や大小の島々がある。
南の海はソーダヴェッタといい、人魚のトゥーリ族が治める海域だ。
人魚たちの国は深い海の底にあるが、海域全ては人魚族のものであり、他種族が勝手に乗り込んでいい海域(ばしょ)ではない。通行は必ず決められた航路があり、それ以外は許可なくば通れないことになっている。
それなのに、
「なぜあんなところに、人間がいるかしら?」
マルユッカは海面に鼻まで出して、岩の上に寝ている人間を見つめた。
ソーダヴェッタの中でも大小の島々が多く集まる場所で、特にここは珊瑚礁が多く、密猟に訪れる人間たちがいる。
密猟にくる人間は主にヴィプネン族で、トゥーリ族の他種族達を金で雇って乗り込んでくるらしい。中には人魚族の者たちも関わっているという。
そのことで父王は心を痛めていることを、王女のひとりであるマルユッカは知っていた。
人魚族はトゥーリ族の中で、もっとも闘争心のない種族だ。陸(おか)の上の政には興味がなく、ただの一度もロフレス王国の王に抜擢されたことがない。
30の種族から成るトゥーリ族は、種族の王をいただいて、ロフレス王国という種族としての統一国を持っている。他惑星を治めるヴィプネン族とアイオン族との外交の窓口としての便宜上必要な措置であり、種族の王の下には、選ばれなかった他の29種族の王たちが評議員としてついている。
種族の王は10年ごとに代理人を立て、決闘試合をして選ばれていた。
人魚族はただの一度も決闘試合に代理人を送ったことはなく棄権している。ソーダヴェッタの海域と国と民が健やかに生活できればそれでいい、という考えが代々続いていたからだ。
争いを好まぬ人魚族のマルユッカは6人姉妹の末っ子で、今年で15歳になる。15歳になれば自由に海の上に遊びに行くことが許されるようになり、マルユッカはまだ自由を手に入れて1週間が過ぎたばかりだ。
たっぷりと眩しい陽の光を浴び、海面をゆったりと泳ぐのが最近のお気に入り。
今日は少し遠出をして、珊瑚礁のあるハハリ海域に遊びに来て、一人の人間を見つけた。
恐る恐る、ゆっくりと近づいてみる。
海面にせり出した岩の上に仰向けに寝そべり、一瞬倒れているのではと思ったが、気持ちよさそうに眠っているのが表情で直ぐに判った。
もっとよく近づいてみた。
陽の光を弾くほど綺麗な黄金の髪に、きめの細かい白肌、細っそりとした肢体で手足も長い。
「綺麗な顔……」
無邪気で無防備な寝顔は、穏やかで優しげに見えた。
マルユッカは人間の寝そべる岩に取り付くと、少し身を乗り出してその顔を覗き込んだ。そして手を伸ばし、長いまつ毛に縁どられた目と、薄い唇にそっと触れてみる。
細いがよく鍛えてあるのが判る筋肉質の身体にも触れてみて、マルユッカはほんのりと頬を染めた。
「こんなに綺麗な男の人、初めて見たわ」
人魚族にも容貌の優れた男はいっぱいいるが、目の前の男はそれをはるかに凌駕すると思えた。
「目を開いたらどんな瞳の色をしているのかしら。声は低いのかしら、高いのかしら」
見つめているうちに、マルユッカのなかでどんどん妄想が膨らんでいく。そしてドキドキ胸が高鳴った。
時間も忘れて男の目覚めを今か今かと待ち望んでいると、細い眉が寄せら小さな呻き声とともに、男がゆっくりと目を開いた。
南の海はソーダヴェッタといい、人魚のトゥーリ族が治める海域だ。
人魚たちの国は深い海の底にあるが、海域全ては人魚族のものであり、他種族が勝手に乗り込んでいい海域(ばしょ)ではない。通行は必ず決められた航路があり、それ以外は許可なくば通れないことになっている。
それなのに、
「なぜあんなところに、人間がいるかしら?」
マルユッカは海面に鼻まで出して、岩の上に寝ている人間を見つめた。
ソーダヴェッタの中でも大小の島々が多く集まる場所で、特にここは珊瑚礁が多く、密猟に訪れる人間たちがいる。
密猟にくる人間は主にヴィプネン族で、トゥーリ族の他種族達を金で雇って乗り込んでくるらしい。中には人魚族の者たちも関わっているという。
そのことで父王は心を痛めていることを、王女のひとりであるマルユッカは知っていた。
人魚族はトゥーリ族の中で、もっとも闘争心のない種族だ。陸(おか)の上の政には興味がなく、ただの一度もロフレス王国の王に抜擢されたことがない。
30の種族から成るトゥーリ族は、種族の王をいただいて、ロフレス王国という種族としての統一国を持っている。他惑星を治めるヴィプネン族とアイオン族との外交の窓口としての便宜上必要な措置であり、種族の王の下には、選ばれなかった他の29種族の王たちが評議員としてついている。
種族の王は10年ごとに代理人を立て、決闘試合をして選ばれていた。
人魚族はただの一度も決闘試合に代理人を送ったことはなく棄権している。ソーダヴェッタの海域と国と民が健やかに生活できればそれでいい、という考えが代々続いていたからだ。
争いを好まぬ人魚族のマルユッカは6人姉妹の末っ子で、今年で15歳になる。15歳になれば自由に海の上に遊びに行くことが許されるようになり、マルユッカはまだ自由を手に入れて1週間が過ぎたばかりだ。
たっぷりと眩しい陽の光を浴び、海面をゆったりと泳ぐのが最近のお気に入り。
今日は少し遠出をして、珊瑚礁のあるハハリ海域に遊びに来て、一人の人間を見つけた。
恐る恐る、ゆっくりと近づいてみる。
海面にせり出した岩の上に仰向けに寝そべり、一瞬倒れているのではと思ったが、気持ちよさそうに眠っているのが表情で直ぐに判った。
もっとよく近づいてみた。
陽の光を弾くほど綺麗な黄金の髪に、きめの細かい白肌、細っそりとした肢体で手足も長い。
「綺麗な顔……」
無邪気で無防備な寝顔は、穏やかで優しげに見えた。
マルユッカは人間の寝そべる岩に取り付くと、少し身を乗り出してその顔を覗き込んだ。そして手を伸ばし、長いまつ毛に縁どられた目と、薄い唇にそっと触れてみる。
細いがよく鍛えてあるのが判る筋肉質の身体にも触れてみて、マルユッカはほんのりと頬を染めた。
「こんなに綺麗な男の人、初めて見たわ」
人魚族にも容貌の優れた男はいっぱいいるが、目の前の男はそれをはるかに凌駕すると思えた。
「目を開いたらどんな瞳の色をしているのかしら。声は低いのかしら、高いのかしら」
見つめているうちに、マルユッカのなかでどんどん妄想が膨らんでいく。そしてドキドキ胸が高鳴った。
時間も忘れて男の目覚めを今か今かと待ち望んでいると、細い眉が寄せら小さな呻き声とともに、男がゆっくりと目を開いた。
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