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番外編・3
彼らのある日の悩み ランドン編:健康管理問題
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ライオン傭兵団には、専属の医者がいない。大抵は近所の町医者か、ハーメンリンナの大病院に勤めるヴァルトの弟ヴィヒトリを頼る。
今ではあまり大きな怪我や病気はしないメンバーたちだが、新しく入ったキュッリッキについては、少々目が離せない部分がある。
と、ランドンは考えていた。
キュッリッキはメンバーの中では一番の年下で、まだ19歳になったばかりだ。一般的にはすでに大人扱いされる歳だが、実際彼女の中身は子供のようなところが多い。年上目線から見ているから、そう思えてしまうかもだが、とにかく目が離せないのだ。
6月のナルバ山での仕事で、生命を落としてもおかしくないほどの大怪我を負った。あのときは、回復魔法を得意とするランドンが、悲鳴を上げるほどの重症だったのだ。
回復魔法は、一瞬にして病気や怪我を治せるといった、そんな奇跡のような魔法とは違う。出血を抑えたり、患部の細胞の壊死を防いだり、痛みを和らげたりといった、応急処置に近い効果しかない。どんなに最上級レベルを持つ魔法使いでも、それ以上の奇跡は施せないのだ。
ランドンは回復魔法を得意としている。攻撃魔法などと違い、回復魔法はもっとも繊細でコントロールが難しい。そして、多少医療知識と応急処置の技術も学んでいた。そのためか、メンバーたちの健康管理はランドンが担当することになっている。
普段無口で愛想はないが、マメな性格で、しっかりとメンバー分の医療カルテも作っている。そして、誰かが怪我をしたり病気をすると、診察した医師に頼んで、カルテの写しももらって管理していた。
「キミが医療スキル〈才能〉を持って生まれていたら、良い医者になっただろうな」
ヴィヒトリがそうこぼすほど、ランドンは自らに課せられた健康管理に熱心だ。
「ヴァルト見てるとアイオン族だということを忘れちゃうけど、キューリも同じアイオン族でしょ、何か気をつけることってある?」
ランドンの質問に、ヴィヒトリは「うーん」と腕を組んだ。
「アイオン族が、てことじゃないんだけど、キュッリッキちゃんは自分で思ってるほど身体が頑丈じゃないんだ。健康であることは健康なんだけど、か弱いンダヨネ。幼い頃から傭兵なんてやってたもんだから、自分は強いと思ってる節があるけど、出来れば大人しくベッドで寝ている日があるといいんだ」
「え、そこまでか弱いの?」
ランドンは目を丸くして驚いた。
「病弱ってわけじゃないよ。でもね、ナルバ山であれほどの大怪我をして、外傷は治っているけど、身体のリズムは完治したわけじゃないからね~」
普段の様子を見ていると、元気そのものにしか見えない。
もしかしたら、無理をしてみんなの前では元気に振舞っているだけなのだろうか。
「アルカネットさんがねー、事あるごとに、無理をさせるなて言ってるでしょ。それって正解なんだよ。あの人、そういう細かいところちゃんと見てるっつーか。今のキュッリッキちゃんは、ひどく疲れやすくなってるはずだよ」
「そうなんだ……」
「毎日昼寝をさせるといい。2時間くらいは、通常睡眠プラス、おとなしく寝かせて。言うこときかないようなら、メルヴィンに手伝ってもらうといいさ」
「うん、そうする」
「仲間内でこうして心配してくれるやつがいるっていいことだね。出来れば、医療スキル〈才能〉のあるメンバーを新しく入れると、尚いいんだけど」
「傭兵団に入ってくれる、ちゃんとした医療スキル〈才能〉持ちのひと、複合スキル〈才能〉がいいかな、知り合いにいない?」
「にーちゃんにも言われてるんだけど、なーっかなかいないなあ~」
医療の複合スキル〈才能〉持ち自体が少ないのだ。傭兵団などの専属医になるなら、複合でなくては役に立たない。せめて外科の得意な医者がいいだろうが。
「ねえ、ヴィヒトリが入れば?」
「やーーーーーっだねーーーーーーっ!」
ガラの悪い目つきでランドンを睨む。
「お前ら怪我しないじゃん。さらに病気もしない。それじゃボクの医療技術が向上しないじゃないか!」
このこだわり方は、やっぱり兄弟だ…とランドンは内心ため息をついた。
ハーメンリンナから戻ったランドンは、ヴィヒトリから教わったことを早速ノートにまとめていった。メモってきた内容を、説明を加えて判りやすいように書き込む。ランドン以外の誰が見ても、書いてある内容がわかるようにしていた。
医療スキル〈才能〉が欲しいと、メンバーたちが怪我をするたびに強く思っていた。しかし、もし医療スキル〈才能〉を持って生まれていたら、傭兵の道へなど絶対にこなかっただろう。
書き終えると、薬箱を開いて、薬の残量を調べて専用ノートに書き込む。すると、廊下からギャリーとキュッリッキの元気な声が聞こえてきた。なにやらまた、ギャリーがキュッリッキをからかっているようだと判る。
「あ、メルヴィンにキューリのことを、相談してこなくっちゃ」
ランドンは薬箱の蓋を閉めると、薬箱を棚に戻した。
今ではあまり大きな怪我や病気はしないメンバーたちだが、新しく入ったキュッリッキについては、少々目が離せない部分がある。
と、ランドンは考えていた。
キュッリッキはメンバーの中では一番の年下で、まだ19歳になったばかりだ。一般的にはすでに大人扱いされる歳だが、実際彼女の中身は子供のようなところが多い。年上目線から見ているから、そう思えてしまうかもだが、とにかく目が離せないのだ。
6月のナルバ山での仕事で、生命を落としてもおかしくないほどの大怪我を負った。あのときは、回復魔法を得意とするランドンが、悲鳴を上げるほどの重症だったのだ。
回復魔法は、一瞬にして病気や怪我を治せるといった、そんな奇跡のような魔法とは違う。出血を抑えたり、患部の細胞の壊死を防いだり、痛みを和らげたりといった、応急処置に近い効果しかない。どんなに最上級レベルを持つ魔法使いでも、それ以上の奇跡は施せないのだ。
ランドンは回復魔法を得意としている。攻撃魔法などと違い、回復魔法はもっとも繊細でコントロールが難しい。そして、多少医療知識と応急処置の技術も学んでいた。そのためか、メンバーたちの健康管理はランドンが担当することになっている。
普段無口で愛想はないが、マメな性格で、しっかりとメンバー分の医療カルテも作っている。そして、誰かが怪我をしたり病気をすると、診察した医師に頼んで、カルテの写しももらって管理していた。
「キミが医療スキル〈才能〉を持って生まれていたら、良い医者になっただろうな」
ヴィヒトリがそうこぼすほど、ランドンは自らに課せられた健康管理に熱心だ。
「ヴァルト見てるとアイオン族だということを忘れちゃうけど、キューリも同じアイオン族でしょ、何か気をつけることってある?」
ランドンの質問に、ヴィヒトリは「うーん」と腕を組んだ。
「アイオン族が、てことじゃないんだけど、キュッリッキちゃんは自分で思ってるほど身体が頑丈じゃないんだ。健康であることは健康なんだけど、か弱いンダヨネ。幼い頃から傭兵なんてやってたもんだから、自分は強いと思ってる節があるけど、出来れば大人しくベッドで寝ている日があるといいんだ」
「え、そこまでか弱いの?」
ランドンは目を丸くして驚いた。
「病弱ってわけじゃないよ。でもね、ナルバ山であれほどの大怪我をして、外傷は治っているけど、身体のリズムは完治したわけじゃないからね~」
普段の様子を見ていると、元気そのものにしか見えない。
もしかしたら、無理をしてみんなの前では元気に振舞っているだけなのだろうか。
「アルカネットさんがねー、事あるごとに、無理をさせるなて言ってるでしょ。それって正解なんだよ。あの人、そういう細かいところちゃんと見てるっつーか。今のキュッリッキちゃんは、ひどく疲れやすくなってるはずだよ」
「そうなんだ……」
「毎日昼寝をさせるといい。2時間くらいは、通常睡眠プラス、おとなしく寝かせて。言うこときかないようなら、メルヴィンに手伝ってもらうといいさ」
「うん、そうする」
「仲間内でこうして心配してくれるやつがいるっていいことだね。出来れば、医療スキル〈才能〉のあるメンバーを新しく入れると、尚いいんだけど」
「傭兵団に入ってくれる、ちゃんとした医療スキル〈才能〉持ちのひと、複合スキル〈才能〉がいいかな、知り合いにいない?」
「にーちゃんにも言われてるんだけど、なーっかなかいないなあ~」
医療の複合スキル〈才能〉持ち自体が少ないのだ。傭兵団などの専属医になるなら、複合でなくては役に立たない。せめて外科の得意な医者がいいだろうが。
「ねえ、ヴィヒトリが入れば?」
「やーーーーーっだねーーーーーーっ!」
ガラの悪い目つきでランドンを睨む。
「お前ら怪我しないじゃん。さらに病気もしない。それじゃボクの医療技術が向上しないじゃないか!」
このこだわり方は、やっぱり兄弟だ…とランドンは内心ため息をついた。
ハーメンリンナから戻ったランドンは、ヴィヒトリから教わったことを早速ノートにまとめていった。メモってきた内容を、説明を加えて判りやすいように書き込む。ランドン以外の誰が見ても、書いてある内容がわかるようにしていた。
医療スキル〈才能〉が欲しいと、メンバーたちが怪我をするたびに強く思っていた。しかし、もし医療スキル〈才能〉を持って生まれていたら、傭兵の道へなど絶対にこなかっただろう。
書き終えると、薬箱を開いて、薬の残量を調べて専用ノートに書き込む。すると、廊下からギャリーとキュッリッキの元気な声が聞こえてきた。なにやらまた、ギャリーがキュッリッキをからかっているようだと判る。
「あ、メルヴィンにキューリのことを、相談してこなくっちゃ」
ランドンは薬箱の蓋を閉めると、薬箱を棚に戻した。
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