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ライオン傭兵団編
episode32
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停留所から歩いて10分ほどのところに、酒場《豪快屋》は建っていた。
煤汚れたような古い木材で建てられている《豪快屋》からは、酒や料理の匂いと、賑やかな笑い声が溢れていた。
道路に面した壁には、剥がれかかった汚いポスターが適当に貼られ、幾人かの酔っぱらいがもたれかかっている。まだ夜になったばかりなのに、すっかり出来上がっていた。
「こんばんはマスター、もうみんな集まってますか?」
開けっ放しの店に入り、メルヴィンがカウンターに声をかける。
「おう! 奥に陣取って飲み始めてるぜ」
「判りました、ありがとう」
キュッリッキもカウンターのほうへ顔を向けるが、そこには誰もいない。首をかしげていると、時々背中のようなモノが、チラチラ浮き沈みを繰り返している。きっとあれが、マスターなのだろうか。
「行きましょう」
「はい」
店の中は淡いオレンジ色の光が優しく照らし、洒落た飾りなど一切なく、隅々には酒樽や酒瓶をいれた木箱が沢山積まれていた。建物と同じように年季の入ったテーブルや、ヒビの入ったオイルランプが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
しかし、店内はすでに満席で、タバコの煙が舞い踊り、陽気な笑い声が乱舞していた。
「おーい、メルヴィン、こっちこっちー」
ルーファスの声だ、とキュッリッキは気づいた。メルヴィンは奥の方へ手を挙げる。
「みなさんお待たせしました。キュッリッキさんを連れてきました」
メルヴィンは身体をずらして、キュッリッキに前にくるよう目で合図する。
気恥ずかしさにモジモジしていると、
「よう、ちっぱい娘」
「ちっぱい言うな!」
ギャリーのからかう言葉に、即反応して前に飛び出た。
「そら、顔出した」
「はっ」
ギャリーのニヤニヤする顔を見て、謀られたことに気づいて口をへの字に曲げた。
目の前でドッと笑いが起き、隣でメルヴィンも口を押さえて笑っている。キュッリッキは顔を真っ赤にして、悔しそうに頬を膨らませた。
「ハイハイみんな、そんなに笑ったら可哀想ですよ。今日はキュッリッキさんの歓迎会なんですから」
その場に立ち上がって、カーティスが掌をパンパンっと打った。
「ギャリー、あんまり言うとぉ、セクハラよぉ~?」
ギャリーの斜め前に座る女が、間延びしたアクセントでケラケラ笑う。
「巨乳っ子じゃねーから、ルーが残念がっててよっ」
「やだあ、オレにふらないでよー」
さらに笑いが起きて、カーティスはしょうもないといった表情(かお)で肩をすくめた。
「キュッリッキさん、こっちへどうぞ」
苦笑しながら、メルヴィンが席の方へとキュッリッキを促す。キュッリッキはプンッとしながらも、指定された席に座った。
煤汚れたような古い木材で建てられている《豪快屋》からは、酒や料理の匂いと、賑やかな笑い声が溢れていた。
道路に面した壁には、剥がれかかった汚いポスターが適当に貼られ、幾人かの酔っぱらいがもたれかかっている。まだ夜になったばかりなのに、すっかり出来上がっていた。
「こんばんはマスター、もうみんな集まってますか?」
開けっ放しの店に入り、メルヴィンがカウンターに声をかける。
「おう! 奥に陣取って飲み始めてるぜ」
「判りました、ありがとう」
キュッリッキもカウンターのほうへ顔を向けるが、そこには誰もいない。首をかしげていると、時々背中のようなモノが、チラチラ浮き沈みを繰り返している。きっとあれが、マスターなのだろうか。
「行きましょう」
「はい」
店の中は淡いオレンジ色の光が優しく照らし、洒落た飾りなど一切なく、隅々には酒樽や酒瓶をいれた木箱が沢山積まれていた。建物と同じように年季の入ったテーブルや、ヒビの入ったオイルランプが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
しかし、店内はすでに満席で、タバコの煙が舞い踊り、陽気な笑い声が乱舞していた。
「おーい、メルヴィン、こっちこっちー」
ルーファスの声だ、とキュッリッキは気づいた。メルヴィンは奥の方へ手を挙げる。
「みなさんお待たせしました。キュッリッキさんを連れてきました」
メルヴィンは身体をずらして、キュッリッキに前にくるよう目で合図する。
気恥ずかしさにモジモジしていると、
「よう、ちっぱい娘」
「ちっぱい言うな!」
ギャリーのからかう言葉に、即反応して前に飛び出た。
「そら、顔出した」
「はっ」
ギャリーのニヤニヤする顔を見て、謀られたことに気づいて口をへの字に曲げた。
目の前でドッと笑いが起き、隣でメルヴィンも口を押さえて笑っている。キュッリッキは顔を真っ赤にして、悔しそうに頬を膨らませた。
「ハイハイみんな、そんなに笑ったら可哀想ですよ。今日はキュッリッキさんの歓迎会なんですから」
その場に立ち上がって、カーティスが掌をパンパンっと打った。
「ギャリー、あんまり言うとぉ、セクハラよぉ~?」
ギャリーの斜め前に座る女が、間延びしたアクセントでケラケラ笑う。
「巨乳っ子じゃねーから、ルーが残念がっててよっ」
「やだあ、オレにふらないでよー」
さらに笑いが起きて、カーティスはしょうもないといった表情(かお)で肩をすくめた。
「キュッリッキさん、こっちへどうぞ」
苦笑しながら、メルヴィンが席の方へとキュッリッキを促す。キュッリッキはプンッとしながらも、指定された席に座った。
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