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ナルバ山の遺跡編
episode61
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勝手知ったるなんとやら。案内もなくベルトルドが闊歩するここは、皇王一族の住まうグローイ宮殿に併設されている、皇王が政務を執り行うエリラリンナ宮殿だ。
エリラリンナ宮殿は、一部の高官のみが立ち入ることを許されていた。
副宰相の地位を戴くベルトルドは、専用の休憩室を与えられている。更には、専属の使用人も付き、好きな時に出入りが許されていた。
謁見の間の前にたどり着いたベルトルドは、扉の左右に佇む衛兵たちが開くよりも先に、サイ《超能力》を使って乱暴に扉を開いた。
「一体どういうことだ、ボケジジイ!」
マントを翻しながら、ベルトルドは颯爽と謁見の間に入った。
奥の玉座に座っている皇王は、渋面を作って溜め息をこぼす。
「いきなり入ってくるなり、ボケジジイはないじゃろう…」
「ボケたジジイをボケジジイと言って何が悪い!」
玉座の前に到着すると、皇王の前で膝を折らず、片手を腰に当ててふんぞり返る。
居丈高で傲慢で高飛車なその無礼な態度に、注意を喚起する者は居ない。侍従を含め、その場に居合わせた人々は、戦々恐々とその様子を見守ることしかできない。ベルトルドを叱り飛ばすことが出来るのは、世界広しといえどリュリュとアルカネットの二人しかいないのだ。
「して、何用じゃ?」
「とぼけるな、ジジイ! 何故ブルーベル将軍を罷免した?」
やや険のある切れ長の目が、スウッと細められ、ブルーグレーの瞳が皇王を睨みつける。
「……そのことか」
やれやれ、といった表情で、皇王は再び溜め息をついた。その時、
「その言動を改めんか! 小僧!!」
突如甲高い怒鳴り声が響き、謁見の間の扉が再び開かれた。
「ぬ?」
邪険な目つきはそのままに、ベルトルドは肩ごしに振り向く。
洋ナシ体型というよりは、雪だるまと言ったほうがしっくりくる。デンッとせり出した下腹のせいか、胴回りが丸く見え、その上に丸い禿げた頭が乗っかっているものだから、雪だるまにしか見えない。
新しく将軍の地位に就いた、キャラウェイ将軍だった。
先っちょがくるりんと巻いているちょび髭に、剃ったように短い眉毛が、いかにも愛嬌がある。更に太って艶々しているためか、今年60歳にもなるのに、シワひとつ見当たらない。
(坂道で転がしたら、面白そうだな…)
ベルトルドはひっそりと、心の中で悪態をつく。
「皇王陛下のご寵愛を受けているからといって、図に乗りすぎだぞ小僧!」
キャラウェイはベルトルドの隣に並んで立つ。身長が165cmしかないキャラウェイは、顎を突き出しベルトルドを必死に見上げた。
一方、190cm以上の長身をほこるベルトルドは、スラリとした体躯で脚も長い。あまりにもその対照的な二人に、皇王は必死に笑いをこらえていた。
エリラリンナ宮殿は、一部の高官のみが立ち入ることを許されていた。
副宰相の地位を戴くベルトルドは、専用の休憩室を与えられている。更には、専属の使用人も付き、好きな時に出入りが許されていた。
謁見の間の前にたどり着いたベルトルドは、扉の左右に佇む衛兵たちが開くよりも先に、サイ《超能力》を使って乱暴に扉を開いた。
「一体どういうことだ、ボケジジイ!」
マントを翻しながら、ベルトルドは颯爽と謁見の間に入った。
奥の玉座に座っている皇王は、渋面を作って溜め息をこぼす。
「いきなり入ってくるなり、ボケジジイはないじゃろう…」
「ボケたジジイをボケジジイと言って何が悪い!」
玉座の前に到着すると、皇王の前で膝を折らず、片手を腰に当ててふんぞり返る。
居丈高で傲慢で高飛車なその無礼な態度に、注意を喚起する者は居ない。侍従を含め、その場に居合わせた人々は、戦々恐々とその様子を見守ることしかできない。ベルトルドを叱り飛ばすことが出来るのは、世界広しといえどリュリュとアルカネットの二人しかいないのだ。
「して、何用じゃ?」
「とぼけるな、ジジイ! 何故ブルーベル将軍を罷免した?」
やや険のある切れ長の目が、スウッと細められ、ブルーグレーの瞳が皇王を睨みつける。
「……そのことか」
やれやれ、といった表情で、皇王は再び溜め息をついた。その時、
「その言動を改めんか! 小僧!!」
突如甲高い怒鳴り声が響き、謁見の間の扉が再び開かれた。
「ぬ?」
邪険な目つきはそのままに、ベルトルドは肩ごしに振り向く。
洋ナシ体型というよりは、雪だるまと言ったほうがしっくりくる。デンッとせり出した下腹のせいか、胴回りが丸く見え、その上に丸い禿げた頭が乗っかっているものだから、雪だるまにしか見えない。
新しく将軍の地位に就いた、キャラウェイ将軍だった。
先っちょがくるりんと巻いているちょび髭に、剃ったように短い眉毛が、いかにも愛嬌がある。更に太って艶々しているためか、今年60歳にもなるのに、シワひとつ見当たらない。
(坂道で転がしたら、面白そうだな…)
ベルトルドはひっそりと、心の中で悪態をつく。
「皇王陛下のご寵愛を受けているからといって、図に乗りすぎだぞ小僧!」
キャラウェイはベルトルドの隣に並んで立つ。身長が165cmしかないキャラウェイは、顎を突き出しベルトルドを必死に見上げた。
一方、190cm以上の長身をほこるベルトルドは、スラリとした体躯で脚も長い。あまりにもその対照的な二人に、皇王は必死に笑いをこらえていた。
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