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初恋の予感編
episode246
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「あの山の遺跡で、みんなが助けに来てくれたとき、メルヴィンずっと、アタシの手を握ってくれてたでしょ」
「ええ」
「あったかくて、嬉しかったんだよ」
出血が酷く体温も下がる中で、メルヴィンが握ってくれていた左手に感じる温もりが、とても嬉しかった。安心できた。
「ここにきても、ずっとそばにいてくれてありがとう。だから、メルヴィンには一番に話すから、もうちょっと待っててね」
「そう思っていてくれて、オレのほうが嬉しいですよ。毎日催促するようなことをして、すみませんでした」
心の中にわだかまっていたものが、ほぐれていくような感じがしていた。
血だまりの中で、息も絶え絶えになっているキュッリッキを見たとき、魔法スキル〈才能〉も医療スキル〈才能〉も持たない自身に、心底腹立たしかった。できることは傍にいて、励ますくらいで。今も傍にいることしか出来ないでる。
しかし傍にいることがキュッリッキにとって、少しでも慰めになっているのなら、無駄ではないのだと、メルヴィンは救われた気持ちになっていた。
「少し外の空気を吸いませんか? 天気もいいし、庭のバラが綺麗ですよ」
気持ちを切り替えるように、メルヴィンは明るく言った。
「ベッドから出ても、大丈夫なの?」
「ええ。ヴィヒトリ先生の許可は、もらっていますから」
パッとキュッリッキの顔も明るくなった。怪我をしてからずっと、外には出ていないのだ。
「そうなんだ。じゃあ、バラ見たい」
「はい」
傷に触らないように気をつけながら、キュッリッキをそっと抱き上げる。
「うーん、前より更に軽くなりましたねえ。もっと食べないと」
「うっ。だって、動いてないからお腹空かないんだもん」
首をすくめるキュッリッキを見ながら、メルヴィンは苦笑した。
とても華奢な身体だが、極端に軽いのだ。同じ年頃で華奢な体格をした少女でも、もう少し重いはずだ。
キュッリッキがアイオン族であることを知らない。アイオン族は空を翔ぶことができるせいか、肥満とは疎遠な体質の種族である。どんなに食べても太らない。そして、ヴィプネン族と比べると、見た目は似ていても、体重には大きな差があった。
ヴァルトなど身長は2メートル近くあるが、体重は30キロ前後しかない。筋肉も増やすのに苦労をしている有様だ。キュッリッキは20キロ程度しかない。今は殆ど食べないので、ますます体重は減っていた。
メルヴィンはバルコニーに出ると、階段を降りた。
キュッリッキの部屋のバルコニーには、庭に降りるための階段が、特別に付けられているのだ。元からそう造られていたらしい。
「おひさまの光、気持ちいいね。眩しいくらい」
久しぶりの外の空気は、清々しく気持ちが良かった。庭には沢山の緑や花が溢れている。空気がとても澄んでいた。
屋敷同様広い庭の一角にはバラ園があり、全体を真っ白なバラが、包み込むよう咲き誇っていた。その白バラに囲まれ、特別に作らせたと言われる、淡い青紫色のバラも美しく咲いていた。
「アタシね、青い色が大好きなんだけど、ベルトルドさんとアルカネットさんも、青色が大好きなんだって」
「この青紫色のバラも、それで作らせたそうですよ。リトヴァさんから聞きました」
「なんか、お屋敷の中とか、このバラとか、あの2人徹底してるね」
クスッと笑うキュッリッキに、メルヴィンもつられて笑い返す。バラ園の中には、白と青紫色のバラだけで、赤やピンクや黄色のバラはなかった。
「ええ」
「あったかくて、嬉しかったんだよ」
出血が酷く体温も下がる中で、メルヴィンが握ってくれていた左手に感じる温もりが、とても嬉しかった。安心できた。
「ここにきても、ずっとそばにいてくれてありがとう。だから、メルヴィンには一番に話すから、もうちょっと待っててね」
「そう思っていてくれて、オレのほうが嬉しいですよ。毎日催促するようなことをして、すみませんでした」
心の中にわだかまっていたものが、ほぐれていくような感じがしていた。
血だまりの中で、息も絶え絶えになっているキュッリッキを見たとき、魔法スキル〈才能〉も医療スキル〈才能〉も持たない自身に、心底腹立たしかった。できることは傍にいて、励ますくらいで。今も傍にいることしか出来ないでる。
しかし傍にいることがキュッリッキにとって、少しでも慰めになっているのなら、無駄ではないのだと、メルヴィンは救われた気持ちになっていた。
「少し外の空気を吸いませんか? 天気もいいし、庭のバラが綺麗ですよ」
気持ちを切り替えるように、メルヴィンは明るく言った。
「ベッドから出ても、大丈夫なの?」
「ええ。ヴィヒトリ先生の許可は、もらっていますから」
パッとキュッリッキの顔も明るくなった。怪我をしてからずっと、外には出ていないのだ。
「そうなんだ。じゃあ、バラ見たい」
「はい」
傷に触らないように気をつけながら、キュッリッキをそっと抱き上げる。
「うーん、前より更に軽くなりましたねえ。もっと食べないと」
「うっ。だって、動いてないからお腹空かないんだもん」
首をすくめるキュッリッキを見ながら、メルヴィンは苦笑した。
とても華奢な身体だが、極端に軽いのだ。同じ年頃で華奢な体格をした少女でも、もう少し重いはずだ。
キュッリッキがアイオン族であることを知らない。アイオン族は空を翔ぶことができるせいか、肥満とは疎遠な体質の種族である。どんなに食べても太らない。そして、ヴィプネン族と比べると、見た目は似ていても、体重には大きな差があった。
ヴァルトなど身長は2メートル近くあるが、体重は30キロ前後しかない。筋肉も増やすのに苦労をしている有様だ。キュッリッキは20キロ程度しかない。今は殆ど食べないので、ますます体重は減っていた。
メルヴィンはバルコニーに出ると、階段を降りた。
キュッリッキの部屋のバルコニーには、庭に降りるための階段が、特別に付けられているのだ。元からそう造られていたらしい。
「おひさまの光、気持ちいいね。眩しいくらい」
久しぶりの外の空気は、清々しく気持ちが良かった。庭には沢山の緑や花が溢れている。空気がとても澄んでいた。
屋敷同様広い庭の一角にはバラ園があり、全体を真っ白なバラが、包み込むよう咲き誇っていた。その白バラに囲まれ、特別に作らせたと言われる、淡い青紫色のバラも美しく咲いていた。
「アタシね、青い色が大好きなんだけど、ベルトルドさんとアルカネットさんも、青色が大好きなんだって」
「この青紫色のバラも、それで作らせたそうですよ。リトヴァさんから聞きました」
「なんか、お屋敷の中とか、このバラとか、あの2人徹底してるね」
クスッと笑うキュッリッキに、メルヴィンもつられて笑い返す。バラ園の中には、白と青紫色のバラだけで、赤やピンクや黄色のバラはなかった。
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