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番外編1
クリスマス準備・2
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クリスマスを2週間後に控えたライオン傭兵団のアジトには、玄関ロビーと食堂に、そこそこ立派なもみの木に、派手に飾りつけをしたクリスマスツリーが置かれていた。
アジトの管理をしているキリ夫妻が、毎年飾りつけをしている。でも今年はキュッリッキが飾り付けをやりたがって大いに張り切り、彼女を手伝うためにメルヴィンとザカリーも手を貸した。
キリ夫妻は喜んで若者たちに任せたので、いつもとは違う感じの飾りつけになり、仲間たちはしげしげとツリーを眺めた。
「なんかこう……ハデだな」
テーブルに片肘をついて、ギャリーがしみじみと感想を漏らした。
キリ夫妻の飾りつけは、金銀のリボンや玉をぶら下げ、赤と黄緑のリンゴを模した飾りをちょうどいい案配で吊るす。それにみんな見慣れていたので、今年のツリーは異様に目を引いた。
「ゴテゴテの電飾がなくっても、ハデでいいわよねえ~」
「ツリーって個性が出るのね」
マリオンとルーファスが、やはりしみじみとこぼした。
金銀のリボンはもちろんのこと、リンゴに星に動物に菓子にカラフルな玉を吊るし、雪に見立てた綿もモコモコ飾っている。他にも横シマの靴下やら帽子などもぶら下がっているから、何でもありだ。
「アタシ、クリスマスツリーの飾り付けしたの初めてだから、楽しかった」
ココアのカップを両手で挟み込み、にっこりと満足そうにキュッリッキは微笑んだ。
キュッリッキは今までずっと、クリスマスをクリスマスらしく過ごしたことがない。毎年クリスマスは、仕事をしていたからだ。
クリスマスのある週は基本休日扱いになる。その為フリーの傭兵たちもクリスマスは休みたがる者が多く、とくに予定がない傭兵は、そのぶん仕事を回してもらっていた。
こうしてもみの木を飾り付けたり、クリスマスの特別な過ごし方など、キュッリッキにとっては初めての経験になるのだ。
「ねえねえ、クリスマスってなにをするの?」
昼食後、食堂でくつろいでいる仲間たちに、キュッリッキははしゃぐように問いかけた。
「24日はアジトでキリ夫妻も一緒に、みんなで飲めや歌えのパーティー、25日から27日までの3日間は、昼夜ぶっ通しでエルダー街中みんなで、ドンチャン騒ぎのパーティーになる」
「うわあ~」
キュッリッキの目がキラキラと輝いた。
「《豪快屋》のおやっさんの得意料理が、タダでいっぱい食べられるんだぜ」
それを楽しみにしている傭兵たちがいっぱいいるから、取り合いになるぞ、とギャリーが笑う。
「でも今年の取り合い参戦は、27日のみになりそうですよ」
カーティスが苦笑気味に話に入ってくる。
「25日はベルトルド卿のお屋敷のパーティーに全員招かれています。まあ26日は、いろんな意味で撃沈しているでしょうしねえ」
え~~~~~~っと、イヤイヤそうな声が食堂にどよめいた。そんな中、キュッリッキだけは更に目をキラキラさせながら、嬉しそうな表情を満面に浮かべていた。
つまりクリスマスとは、飲め、食え、酔え、歌え、踊れのドンチャン騒ぎをするのだと判った。
毎年クリスマス週間は、とくにパーティーが開かれることもなく、使用人たちは3日ほど休暇と一時金とプレゼントをいただいて、のんびりできる。ところが珍しく今年はパーティーを開くというので、使用人たちは準備で大わらわになっていた。
いまだ独身を貫く(?)あるじ2人は、招くより、招かれるほうが専門なのだ。
招待されている客たちが、貴族や資産家などの上流階級の人々ではなく、ライオン傭兵団のメンバーたちだと判っていても、使用人たちにとっては手の抜けないことにかわりはない。しかもキュッリッキがいるのだから、尚の事手を抜けるわけがないのだ。
玄関ロビー、食堂、サロン、応接間の4箇所にクリスマスツリーは飾られるが、今年はさらにキュッリッキの部屋、パーティールーム、そしてもう一箇所にも追加で飾られることになった。
「ツリーの準備、食材の手配、滞りないですかな」
セヴェリはリストを確かめながらリトヴァにたずねた。
「そこは問題ないのですが、お酒のほうをもう何ケースか追加しておかないと、たぶん足りなくなると思いますわ。ラッカとシマがこれだとすぐに尽きるかと」
ラッカはホロムイイチゴのお酒、シマは蜂蜜酒である。
「皆様たくさんお飲みになりますからの……」
「いっそ樽で全酒用意したほうが、いいのかもしれませんわね」
セヴェリとリトヴァは顔を見合わせ、ため息をついた。
アジトの管理をしているキリ夫妻が、毎年飾りつけをしている。でも今年はキュッリッキが飾り付けをやりたがって大いに張り切り、彼女を手伝うためにメルヴィンとザカリーも手を貸した。
キリ夫妻は喜んで若者たちに任せたので、いつもとは違う感じの飾りつけになり、仲間たちはしげしげとツリーを眺めた。
「なんかこう……ハデだな」
テーブルに片肘をついて、ギャリーがしみじみと感想を漏らした。
キリ夫妻の飾りつけは、金銀のリボンや玉をぶら下げ、赤と黄緑のリンゴを模した飾りをちょうどいい案配で吊るす。それにみんな見慣れていたので、今年のツリーは異様に目を引いた。
「ゴテゴテの電飾がなくっても、ハデでいいわよねえ~」
「ツリーって個性が出るのね」
マリオンとルーファスが、やはりしみじみとこぼした。
金銀のリボンはもちろんのこと、リンゴに星に動物に菓子にカラフルな玉を吊るし、雪に見立てた綿もモコモコ飾っている。他にも横シマの靴下やら帽子などもぶら下がっているから、何でもありだ。
「アタシ、クリスマスツリーの飾り付けしたの初めてだから、楽しかった」
ココアのカップを両手で挟み込み、にっこりと満足そうにキュッリッキは微笑んだ。
キュッリッキは今までずっと、クリスマスをクリスマスらしく過ごしたことがない。毎年クリスマスは、仕事をしていたからだ。
クリスマスのある週は基本休日扱いになる。その為フリーの傭兵たちもクリスマスは休みたがる者が多く、とくに予定がない傭兵は、そのぶん仕事を回してもらっていた。
こうしてもみの木を飾り付けたり、クリスマスの特別な過ごし方など、キュッリッキにとっては初めての経験になるのだ。
「ねえねえ、クリスマスってなにをするの?」
昼食後、食堂でくつろいでいる仲間たちに、キュッリッキははしゃぐように問いかけた。
「24日はアジトでキリ夫妻も一緒に、みんなで飲めや歌えのパーティー、25日から27日までの3日間は、昼夜ぶっ通しでエルダー街中みんなで、ドンチャン騒ぎのパーティーになる」
「うわあ~」
キュッリッキの目がキラキラと輝いた。
「《豪快屋》のおやっさんの得意料理が、タダでいっぱい食べられるんだぜ」
それを楽しみにしている傭兵たちがいっぱいいるから、取り合いになるぞ、とギャリーが笑う。
「でも今年の取り合い参戦は、27日のみになりそうですよ」
カーティスが苦笑気味に話に入ってくる。
「25日はベルトルド卿のお屋敷のパーティーに全員招かれています。まあ26日は、いろんな意味で撃沈しているでしょうしねえ」
え~~~~~~っと、イヤイヤそうな声が食堂にどよめいた。そんな中、キュッリッキだけは更に目をキラキラさせながら、嬉しそうな表情を満面に浮かべていた。
つまりクリスマスとは、飲め、食え、酔え、歌え、踊れのドンチャン騒ぎをするのだと判った。
毎年クリスマス週間は、とくにパーティーが開かれることもなく、使用人たちは3日ほど休暇と一時金とプレゼントをいただいて、のんびりできる。ところが珍しく今年はパーティーを開くというので、使用人たちは準備で大わらわになっていた。
いまだ独身を貫く(?)あるじ2人は、招くより、招かれるほうが専門なのだ。
招待されている客たちが、貴族や資産家などの上流階級の人々ではなく、ライオン傭兵団のメンバーたちだと判っていても、使用人たちにとっては手の抜けないことにかわりはない。しかもキュッリッキがいるのだから、尚の事手を抜けるわけがないのだ。
玄関ロビー、食堂、サロン、応接間の4箇所にクリスマスツリーは飾られるが、今年はさらにキュッリッキの部屋、パーティールーム、そしてもう一箇所にも追加で飾られることになった。
「ツリーの準備、食材の手配、滞りないですかな」
セヴェリはリストを確かめながらリトヴァにたずねた。
「そこは問題ないのですが、お酒のほうをもう何ケースか追加しておかないと、たぶん足りなくなると思いますわ。ラッカとシマがこれだとすぐに尽きるかと」
ラッカはホロムイイチゴのお酒、シマは蜂蜜酒である。
「皆様たくさんお飲みになりますからの……」
「いっそ樽で全酒用意したほうが、いいのかもしれませんわね」
セヴェリとリトヴァは顔を見合わせ、ため息をついた。
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