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エルアーラ遺跡編
episode415
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「ソレル国王、あなたがヤルヴィレフト王家から受け継いでいる数々の伝聞や諸々で、1万年前のことに詳しいのは当たり前だろう。しかしな、知っているからといって、ハワドウレ皇国所有のこの遺跡を、武力で奪取するのは賛同できない。それに先だっては、ナルバ山の遺跡調査も中断させ、研究員を不当に拉致して監禁取り調べ、挙句に他国と結託して戦争まで起こすとは、短慮も甚だしい」
「ナルバ山は我が国の領土、それを無断で調査などと、法を破っているのはお前たちであろう!」
「許可などいらんだろう? 何故なら惑星ヒイシは全てハワドウレ皇国のものだから。そしてそのハワドウレ皇国の副宰相である、この俺の部下たちに手を出したんだ。鞭でケツを百叩きの刑でも甘いんだぞ?」
「愚弄しおって……」
わなわなと全身を震わせるソレル国王を、ベルトルドは皮肉たっぷりに見据えた。
「話の邪魔になるので音声は消してあったんだが、少しは可愛らしく命乞いでもしてみたらどうだ? フッ、もっとも、命乞いされても殺すけどな」
スッと流麗な動作で、モニターを人差し指で示す。
促されるままモニターに首を巡らし、ソレル国王は「ヒイッ」と喉を引きつらせてよろめくように椅子の肘掛を掴んだ。
モニター全面には、血だまりの中でぴくりとも動かない肉の塊と化した王たちが転がっていた。そして死体の胸の上には、恐怖で引き攣り、悲鳴を上げようと口を大きく開いたままの表情を貼り付けた顔が乗せられていた。
「掃除するのが大変そうだなぁ。まあ、俺がやるわけじゃないけど」
思いっきり他人事のように呟いて、ベルトルドは肩をすくめた。
「ただ戦争を起こしただけなら、ここまで丁寧に殺してやる必要もなかったんだが。お前たち、俺の玩具に手を出したからなあ」
「玩具、だと…」
「うん。フリングホルニは、俺のだいじな玩具だ」
ヤンチャな笑みを浮かべるベルトルドを、ソレル国王は引きつったままの表情で見やった。
「さらに、俺の大切な愛おしいリッキーにまで手を出したんだから、ラクに殺してもらえると思うなよ、ジジイ」
「そうですよ。生き地獄をたっぷり味わってもらってから、想像もつかないレベルでの死をお約束します」
涼やかな笑みを浮かべたアルカネットが戻ってきた。首だけをアルカネットに向けると、ベルトルドは唇をツンッと尖らせた。
「エグイじゃないか」
「あのくらいは普通ですよ。首を切り落としただけですから」
それに、となんとも思わないような表情でモニターに顔を向け、アルカネットは拗ねたようにため息をついた。
「本当ならメルヴィンをああしてやりたいのですけど、実行したらリッキーさんに口を聞いてもらえなくなりますから。あいつらで妥協しておきました、一応」
一応、に力を込めて言い放つ。そんなアルカネットの言葉に、ベルトルドは嫌そうに顔をしかめた。
「………お前の愛は昔っからエグイな」
「ふんっ」
アルカネットはぷいっと顔を背けた。
2人の会話をよそに、ソレル国王はよろめくようにして、椅子にすとんと腰を下ろした。
この遺跡に立てこもっていれば、外部から手を出せるものなどいないと確信していた。戦争を起こし、それにハワドウレ皇国が食いついている間に、召喚士の娘を手に入れ、ナルバ山の遺跡も運び込む予定だった。
たとえ遺跡に敵が乗り込んできても、この艦橋にいれば安全なはずだ。それなのに、目の前の白い軍服をまとった男は、空間転移という力を使ってあっさり艦橋に乗り込んできて、図々しく指揮官の椅子に座している。
ソレル国王は自らの見識が浅く、狭かったことに気づいていなかった。そして誰を敵に回しているのかも、判っていなかった。
「ナルバ山は我が国の領土、それを無断で調査などと、法を破っているのはお前たちであろう!」
「許可などいらんだろう? 何故なら惑星ヒイシは全てハワドウレ皇国のものだから。そしてそのハワドウレ皇国の副宰相である、この俺の部下たちに手を出したんだ。鞭でケツを百叩きの刑でも甘いんだぞ?」
「愚弄しおって……」
わなわなと全身を震わせるソレル国王を、ベルトルドは皮肉たっぷりに見据えた。
「話の邪魔になるので音声は消してあったんだが、少しは可愛らしく命乞いでもしてみたらどうだ? フッ、もっとも、命乞いされても殺すけどな」
スッと流麗な動作で、モニターを人差し指で示す。
促されるままモニターに首を巡らし、ソレル国王は「ヒイッ」と喉を引きつらせてよろめくように椅子の肘掛を掴んだ。
モニター全面には、血だまりの中でぴくりとも動かない肉の塊と化した王たちが転がっていた。そして死体の胸の上には、恐怖で引き攣り、悲鳴を上げようと口を大きく開いたままの表情を貼り付けた顔が乗せられていた。
「掃除するのが大変そうだなぁ。まあ、俺がやるわけじゃないけど」
思いっきり他人事のように呟いて、ベルトルドは肩をすくめた。
「ただ戦争を起こしただけなら、ここまで丁寧に殺してやる必要もなかったんだが。お前たち、俺の玩具に手を出したからなあ」
「玩具、だと…」
「うん。フリングホルニは、俺のだいじな玩具だ」
ヤンチャな笑みを浮かべるベルトルドを、ソレル国王は引きつったままの表情で見やった。
「さらに、俺の大切な愛おしいリッキーにまで手を出したんだから、ラクに殺してもらえると思うなよ、ジジイ」
「そうですよ。生き地獄をたっぷり味わってもらってから、想像もつかないレベルでの死をお約束します」
涼やかな笑みを浮かべたアルカネットが戻ってきた。首だけをアルカネットに向けると、ベルトルドは唇をツンッと尖らせた。
「エグイじゃないか」
「あのくらいは普通ですよ。首を切り落としただけですから」
それに、となんとも思わないような表情でモニターに顔を向け、アルカネットは拗ねたようにため息をついた。
「本当ならメルヴィンをああしてやりたいのですけど、実行したらリッキーさんに口を聞いてもらえなくなりますから。あいつらで妥協しておきました、一応」
一応、に力を込めて言い放つ。そんなアルカネットの言葉に、ベルトルドは嫌そうに顔をしかめた。
「………お前の愛は昔っからエグイな」
「ふんっ」
アルカネットはぷいっと顔を背けた。
2人の会話をよそに、ソレル国王はよろめくようにして、椅子にすとんと腰を下ろした。
この遺跡に立てこもっていれば、外部から手を出せるものなどいないと確信していた。戦争を起こし、それにハワドウレ皇国が食いついている間に、召喚士の娘を手に入れ、ナルバ山の遺跡も運び込む予定だった。
たとえ遺跡に敵が乗り込んできても、この艦橋にいれば安全なはずだ。それなのに、目の前の白い軍服をまとった男は、空間転移という力を使ってあっさり艦橋に乗り込んできて、図々しく指揮官の椅子に座している。
ソレル国王は自らの見識が浅く、狭かったことに気づいていなかった。そして誰を敵に回しているのかも、判っていなかった。
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