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第一章 光、入学する
第一話
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『コンコン』
ドアが叩かれる音に金髪の少女は顔を上げると、トコトコとドアに寄り扉を開いた。
「どなたです?」
少女が扉を開けながら声をかけると、そこには自分より15cmほど背の低い少女が佇んでいた。
―同室のミルフェスさんですか?私は仙波光(せんばひかり)です―
ルーズリーフに小さく書かれた文章をそのミルフェスが覗き込む。
黒く、腰の辺りまで伸びる長いストレートの髪が特徴的だ。
控えめな身長で、胸の大きさも控えめ。一見すると中学生のようなイメージである。
「あなた声が?」
それに対しドアを開けたミルフェスは対照的だ。
セミロングの長さに纏め、鮮やかな王冠でもつけているような金色の髪。
光とは違い、モデルの様な出で立ち。
豊満な胸と貴族のような顔立ちの彼女が怪訝な表情を浮かべる。
その表情をみて光は少し困ったような顔をするしかなかった。
「あ、ごめんなさい!どうぞ中に」
あわててドアを開き中に光を招きいれる。
「はじめましてですね、私はミルフェス・ライブラル。これからよろしくお願いします」
―こちらこそ、よろしくお願いします―
前もって書いておいたのであろう、ルーズリーフを裏返してミルフェスに見えるように提示する。
「あなたも今年からの新入生?」
―はい―
今度はポケットから英単語帳を取り出してペーシを開く。
「先に付いてしまったので荷物を開き始めちゃってるのよね。私が窓際のベッドを使っても?」
―はい―
うなずきつつ英単語帳を指差しながら、笑顔を光が見せる。
「ありがとう。それと先ほどは・・・そのごめんなさい」
―声のことなら気にしないで―
これも前もって用意していたのであろう。英単語帳を開いてすぐ出てきた。
「ふふ、でも可愛い人が同室で嬉しいわ」
「!」
「だってあなた、映像で見たような日本人形みたいに可愛いんですもの、それに・・・」
今度は視線を光の腰元へ映す。そこには一本の刀が専用のベルトに差されていた。
「あなたは噂のサムライさんなのね!しかも女性のサムライさんだなんて素敵だわ!」
両手を握られ、顔を近づけてくるミルフェスに光は顔を赤くしながら逃げるように後ずさった。
両手を振りほどきルーズリーフを出して何か書こうとしたが、すぐ斜線を引いて出すのをやめた。
英単語帳を出して、それを捲り彼女に見えるようにする。
―よろしくお願いします―
どう反応すればいいのかわからず、ただ挨拶を出すにとどまったのであった。
二人とも持ってきた荷解きを終わらせると、手持ち無沙汰になった。
ミルフェスは持ってきていたケトルに電源をいれると、いそいそと紅茶の準備に取り掛かった。
「光さんは魔装士?そのサムライソードは魔剣か何かでしょう?」
―はい―
英単語帳を見せながらルーズリーフに追加を書き足す。
―私の国では妖刀と呼ばれる物です―
まず光の前のマグカップに、そのあと自分のコップに出来たばかりの紅茶を注ぐ。
―ありがとう―
良く使う単語なのだろう、すぐに出てきた。
―ミルフェスさんの専攻は?―
テーブルの上でさらさらと書き出す。
「私は召喚士よ。ちょっと待っててね」
両手を合わせて祈るように指を折り、目を閉じる。
両手を離すとその間から輝きが生まれ、地面へと降りつつ形を成していく。
ミルフェスの足元には小型犬くらいの大きさの動物が突如現れた。
「この子はベヒモス。私の友達よ」
両肩から手を入れられ抱き上げるその動物は不思議な形をしていた。
一見すると小型犬だ、だが顔はどちらかといえば雄獅子のような顔立ちである。
二本の控えめな角があり、鬣が生えた灰色の子犬とでも表現すればいいのだろうか。
まんまるの黒い瞳がやけに可愛らしい印象を与えてくれる。
―可愛いですね、それに詠唱なしで呼べちゃうなんて―
トントン、とシャーペンを走らせながら開いた手でベヘモスの頭を撫でた。
『クアー』
と一鳴き、光の指の匂いを一生懸命かぎはじめる。
「ふふ、貴女のことを覚えようとしているわ」
―そうなの?―
「この子は私の友達であり家族ですから、私の新しいお友達に興味があるんでしょう」
言われたとき、光はなんとなく照れた。
―私の刀は『八房(やつふさ)』こちらでいうところの魔剣の一種です―
照れ隠しに、自分の刀を紹介する事にする。
刀を鞘ごと持ち上げ、少しだけ刀身を見せる。
銀色の刃が顔を出した。
―危ないから触らないでね―
そう書いてベヒモスの前にだすが、ベヒモスは首をかしげるだけだった。
そんなベヒモスの仕草が気に入ったのか、たてがみをかきむしるように光が思いっきりくすぐった。
『クアー!クアー!』
気持ちよさそうに目を細めながら光の行為をベヒモスが容認。
「ベヒモスには私から言って聞かせるから安心して」
マグカップに口をつけながら、ホッとしたような口調でミルフェスは言う。
「?」
「ベヒモスって通常の生き物じゃないから・・・同室の方に嫌がられなくてよかったなって」
少し驚いたように光は目を大きくして、ミルフェスの顔を見つめると紙につらつらと書き出し始める。
―私は結構昔から魔法に関わる人間だから、このくらいのサイズの幻獣は見慣れているというか―
―ぬいぐるみみたいで可愛いから普通に受け入れちゃってました、逆にこの子が嫌がりそうな事があったらあらかじめ教えておいてもらえると嬉しいな―
少し時間をかけて光が文字を書き出すと、おずおずそれをミルフェスのマグカップの横において顔色を伺う。
「ありがとう!紅茶のおかわりいかが!?」
ミルフェスはすばやく読み終わると、満面の笑みを浮かべながらティーポットに手をかける。光の返事も待たずになみなみとカップに紅茶を注ぐと、今度は鞄のなかから綺麗に包装されていたクッキーの詰め合わせを開いてお皿にうつした。
「どうぞ!」
山盛りのクッキー皿を両手に持って、やはり満面の笑みを浮かべながら光の前に出した。
彼女なりの感謝の表現のようでもあるし、照れ隠しも含まれているのか頬が赤く上気している。
光はそれを受け取るとテーブルの上に置き、紙にまたペンを走らせようとする。しかしまた上手い言葉が浮かんでこなかったようで、ペンはなかなか進まない。
とりあえず笑顔で応えよう。そう思った光はミルフェスに笑顔を向けてクッキーを一つ頬張った。
ドアが叩かれる音に金髪の少女は顔を上げると、トコトコとドアに寄り扉を開いた。
「どなたです?」
少女が扉を開けながら声をかけると、そこには自分より15cmほど背の低い少女が佇んでいた。
―同室のミルフェスさんですか?私は仙波光(せんばひかり)です―
ルーズリーフに小さく書かれた文章をそのミルフェスが覗き込む。
黒く、腰の辺りまで伸びる長いストレートの髪が特徴的だ。
控えめな身長で、胸の大きさも控えめ。一見すると中学生のようなイメージである。
「あなた声が?」
それに対しドアを開けたミルフェスは対照的だ。
セミロングの長さに纏め、鮮やかな王冠でもつけているような金色の髪。
光とは違い、モデルの様な出で立ち。
豊満な胸と貴族のような顔立ちの彼女が怪訝な表情を浮かべる。
その表情をみて光は少し困ったような顔をするしかなかった。
「あ、ごめんなさい!どうぞ中に」
あわててドアを開き中に光を招きいれる。
「はじめましてですね、私はミルフェス・ライブラル。これからよろしくお願いします」
―こちらこそ、よろしくお願いします―
前もって書いておいたのであろう、ルーズリーフを裏返してミルフェスに見えるように提示する。
「あなたも今年からの新入生?」
―はい―
今度はポケットから英単語帳を取り出してペーシを開く。
「先に付いてしまったので荷物を開き始めちゃってるのよね。私が窓際のベッドを使っても?」
―はい―
うなずきつつ英単語帳を指差しながら、笑顔を光が見せる。
「ありがとう。それと先ほどは・・・そのごめんなさい」
―声のことなら気にしないで―
これも前もって用意していたのであろう。英単語帳を開いてすぐ出てきた。
「ふふ、でも可愛い人が同室で嬉しいわ」
「!」
「だってあなた、映像で見たような日本人形みたいに可愛いんですもの、それに・・・」
今度は視線を光の腰元へ映す。そこには一本の刀が専用のベルトに差されていた。
「あなたは噂のサムライさんなのね!しかも女性のサムライさんだなんて素敵だわ!」
両手を握られ、顔を近づけてくるミルフェスに光は顔を赤くしながら逃げるように後ずさった。
両手を振りほどきルーズリーフを出して何か書こうとしたが、すぐ斜線を引いて出すのをやめた。
英単語帳を出して、それを捲り彼女に見えるようにする。
―よろしくお願いします―
どう反応すればいいのかわからず、ただ挨拶を出すにとどまったのであった。
二人とも持ってきた荷解きを終わらせると、手持ち無沙汰になった。
ミルフェスは持ってきていたケトルに電源をいれると、いそいそと紅茶の準備に取り掛かった。
「光さんは魔装士?そのサムライソードは魔剣か何かでしょう?」
―はい―
英単語帳を見せながらルーズリーフに追加を書き足す。
―私の国では妖刀と呼ばれる物です―
まず光の前のマグカップに、そのあと自分のコップに出来たばかりの紅茶を注ぐ。
―ありがとう―
良く使う単語なのだろう、すぐに出てきた。
―ミルフェスさんの専攻は?―
テーブルの上でさらさらと書き出す。
「私は召喚士よ。ちょっと待っててね」
両手を合わせて祈るように指を折り、目を閉じる。
両手を離すとその間から輝きが生まれ、地面へと降りつつ形を成していく。
ミルフェスの足元には小型犬くらいの大きさの動物が突如現れた。
「この子はベヒモス。私の友達よ」
両肩から手を入れられ抱き上げるその動物は不思議な形をしていた。
一見すると小型犬だ、だが顔はどちらかといえば雄獅子のような顔立ちである。
二本の控えめな角があり、鬣が生えた灰色の子犬とでも表現すればいいのだろうか。
まんまるの黒い瞳がやけに可愛らしい印象を与えてくれる。
―可愛いですね、それに詠唱なしで呼べちゃうなんて―
トントン、とシャーペンを走らせながら開いた手でベヘモスの頭を撫でた。
『クアー』
と一鳴き、光の指の匂いを一生懸命かぎはじめる。
「ふふ、貴女のことを覚えようとしているわ」
―そうなの?―
「この子は私の友達であり家族ですから、私の新しいお友達に興味があるんでしょう」
言われたとき、光はなんとなく照れた。
―私の刀は『八房(やつふさ)』こちらでいうところの魔剣の一種です―
照れ隠しに、自分の刀を紹介する事にする。
刀を鞘ごと持ち上げ、少しだけ刀身を見せる。
銀色の刃が顔を出した。
―危ないから触らないでね―
そう書いてベヒモスの前にだすが、ベヒモスは首をかしげるだけだった。
そんなベヒモスの仕草が気に入ったのか、たてがみをかきむしるように光が思いっきりくすぐった。
『クアー!クアー!』
気持ちよさそうに目を細めながら光の行為をベヒモスが容認。
「ベヒモスには私から言って聞かせるから安心して」
マグカップに口をつけながら、ホッとしたような口調でミルフェスは言う。
「?」
「ベヒモスって通常の生き物じゃないから・・・同室の方に嫌がられなくてよかったなって」
少し驚いたように光は目を大きくして、ミルフェスの顔を見つめると紙につらつらと書き出し始める。
―私は結構昔から魔法に関わる人間だから、このくらいのサイズの幻獣は見慣れているというか―
―ぬいぐるみみたいで可愛いから普通に受け入れちゃってました、逆にこの子が嫌がりそうな事があったらあらかじめ教えておいてもらえると嬉しいな―
少し時間をかけて光が文字を書き出すと、おずおずそれをミルフェスのマグカップの横において顔色を伺う。
「ありがとう!紅茶のおかわりいかが!?」
ミルフェスはすばやく読み終わると、満面の笑みを浮かべながらティーポットに手をかける。光の返事も待たずになみなみとカップに紅茶を注ぐと、今度は鞄のなかから綺麗に包装されていたクッキーの詰め合わせを開いてお皿にうつした。
「どうぞ!」
山盛りのクッキー皿を両手に持って、やはり満面の笑みを浮かべながら光の前に出した。
彼女なりの感謝の表現のようでもあるし、照れ隠しも含まれているのか頬が赤く上気している。
光はそれを受け取るとテーブルの上に置き、紙にまたペンを走らせようとする。しかしまた上手い言葉が浮かんでこなかったようで、ペンはなかなか進まない。
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