己が声を封じた彼(オレ)は、覚悟を決めて彼女(わたし)になった

てぃー☆ちゃー

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第一章 光、入学する

第三話

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「あ、こっちこっちー」

先ほどのクラリス先生、ではなく光達と同じ制服を着た女の子が手を振って光とミルフェスを呼ぶ。

「ラザロ?」
「?」

彼女を知っているの?そんな意思を持って光がミルフェスに視線を投げかけると、ミルフェスは少しはにかんだような表情を見せた。

「ジュニア時代のクラスメート。彼女も貴女と同じ魔装士よ」

確かに彼女は、なんというか自分自身の身の丈よりずいぶん大きな槍。2mくらいの長さの獲物を肩に乗っけていた。

「おお、君がミッフィのルームメイトさんか!」

―こんにちは―

英単語帳を開いて相手に見えるように広げる。

「あたしはロザフィーヌ・エンブだ!」

緑色で短髪のロザフィーヌは人懐っこそうな笑顔で名のりながら右手をしゅばっと差し出してきた。

―千波光です―

英単語帳に前もって書いておいた名前を見せると、その右手を握り返した。

「ロザフィーヌなんて名前だが、あたしのキャラにはなかなか合わない名前でね!だからラザロって皆には呼ばれているんだ。君もあたしのことはラザロって呼んでくれ」

―よろしく、ラザロさん―

「さんはいらないよー」

書き直すのもあれなので、二本線で『さん』を上から消して再びラザロの前にだした。

―よろしく、ラザロ―

「君は、しゃべれないのか?」

最初のうちは何度もこの質問を受けるだろう、それは光にもわかっていたことだった。
英単語帳の最初の方のページ、先ほどもミルフェスに見せたその文字を見せた。

―声のことなら気にしないで―

「・・・・」

困ったような、それでいて笑ってるような曖昧な表情で光はラザロに向ける。

「うう!ごめんな!」

いきなり抱きつかれた、そして泣き付かれた。光の顔はラザロの大きな胸元に挟まれるように収まってしまっている。

「!」

顔を真っ赤にしながら光はもがくが、ラザロは思いのほか強い力で抱きついてきたためなかなか剥がれない。

「!!!」
「クラスで困ったことがあったらなんでもあたしに言ってくれ!あたしはこう見えて元気だけはいっぱいあるんだ!存分に分け与えてあげれるぞ!」

抱きつきながら光を振り回す。

「いや!クラスだけでは足りないよな!あたしは寮でもお前たちの部屋の正面にいるから困ったら言ってくれ!ミッフィもあたしと一緒に助けてくれるしな」
「もちろん」
「しかし、ヒカリはちっちゃくって可愛いな!なんか抱き心地もたまらなくいいぞ」

がばっと、光の両肩を掴んで一瞬体を引き離しラザロが顔を見つめる。
光は見事に目を回していた。

「それではそろそろ本題に、といっても時間がもったいないので話しながらいきましょか」

適当に自己紹介でもさせようと思っていたクラリスだが、勝手に話が進んでいく上にミルフェスとラザロが知り合いだったようなので割愛することにした。

「最悪タイムオーバーにもなってしまいますから、早めにいくことにしましょう」
『タイムオーバー?』
「そうです。さあさあ、このままお三人が和やかにしていると、先生賭けに負けてしまいますから」
「賭けって・・・」
「毎年の恒例行事なんですよ」
「行事で賭け事ですか」

眉にしわを寄せながらのミルフェスの表情。

「なになに?ご飯でも賭けてるの?」
「先生は大人の女性ですからね。お酒とか大好きなんですよ!」

新しく担任になるこの女性は、丁寧な話し方をしながら口元の涎を拭く。彼女は三人の顔を見比べて、自信満々に言った。

「大丈夫!あなたたちならきっとやり遂げることが出来ますから!」

なんだかよくわからないが頼りにされているらしい。
三人はお互いの顔を見比べ、困惑しながらもとりあえず頷く事にした。

「悪いようにはいたしませんから、学校行事でもありますし。申し訳ないですけどついてきていただきますね」

クラリスはそう言うと三人を先導し、寮の観音開きの扉を豪快に両手で開いた。
外に出ると、学園への道が大きく開いている。

『ゼビル魔道研究都市圏内 私立ユグドラシル学園』

光を含む三人、今年の入学生は合計で六十人弱だという。
英国が世界に誇り、そして英国が最も恐れる男が経営する魔道士専門の学園だ。
光はこれから通う校舎を遠めで見つめながら、なんとなく刀の柄に指をかけ視線を落とす。
深呼吸を一つすると、先生に続いて歩みを進めるのだった。
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