己が声を封じた彼(オレ)は、覚悟を決めて彼女(わたし)になった

てぃー☆ちゃー

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第一章 光、入学する

第四話

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『よくぞここまで来た!新入生代表諸君!』

低く、それでいて自信に満ちた声が光達三人を迎えた。
光達が校門にたどり着くと、そこにはやはり三人の生徒が待っていた。
一人は光達と同じ女性の制服を着ている。肌の色が褐色で顔立ちから見てもヨーロッパの人間ではないだろう。薄茶色い髪の毛が豊満な胸元に寄りかかり、肌の色と合間見て妙な色気が出ている。光達とは違う色のリボンをつけているところから見ると上級生だろう。
一人は男性だ。豪華な装飾の付いた剣を腰の剣帯にとりつけ、金髪でオールバックの少年。優しげな瞳から好青年の印象を受ける人が多いだろう。身長も高く長い手足も魅力的に見える。
そしてもう一人、三人を代表して光達に声をかけたのは全身漆黒色に彩られた鎧に包まれていた。円筒状のフェイスプレートのせいで顔色は伺えない。両手の篭手の部分から微量の電撃が放たれている。

「あの、先生?」

ミルフェスがクラリスに説明を求めている。それもそうだ、道中に説明するといいながら、彼女は学校の説明や寮の近くにある美味しい紅茶のお店やケーキのお店の紹介(安くて美味しいお酒の呑めるバーなんかも含む)しかしていなかったのである。

「クラリス先生・・・またですか」

金髪の少年がため息をつきながらクラリスを呼ぶ。

『クラリス先生は見た目とは裏腹に、究極的なドジっ子だからな』
「せ、先生をつかまえてドジっこはという評価はどうなのですか・・・」

二人からの言葉にクラリスは反論するも、言葉尻が小さくなっていく。

『なればこそ!我が説明しよう!』

ビシっ!と光達に指を差し向けると、全身鎧の先輩が声を上げる。

『これは毎年恒例のオリエンテーションである』
「オリエンテーション?」

ミルフェスが代表して質問をする。

『そう!毎年恒例なのだ。我々は二回生で生徒会に所属している、そして君たちは新入生の中でも特に優秀な三名のはずだ!』
「そうなんですか?」

先生であるクラリスに向けてミルフェスが質問をすると、全員の視線がクラリスに集まる。

「ええ、お三人ともそれぞれ魔力、筆記、実技の最高得点だったんです。これから学園長先生のところにご挨拶に向かうんですよ」
「ええ?」
『そう!毎年成績の優秀生徒は新入生代表として学園長への挨拶を行うためこの時間にこの校門を通るのだ』
「そして我々は生徒会の先輩として君たちの腕を試すわけです」
「面倒なことにね」

後ろに控えていた制服姿の男女がため息混じりに説明の補足と愚痴をこぼしている。

『優秀な生徒であれば当然生徒会の人員候補でもある!ならば接触は早いに越したことは無いだろう!同じ学び舎で学ぶ学徒同士、交流を深めておいて損になることなどあるわけが無いからな』
「ちなみに負けちゃうと学園長へのご挨拶にいけなくなっちゃうから気をつけてね」
「なんですかそれ」
「この時期は入学準備で多忙なんです。あまり時間が取れませんもの」
『普段なら学園内を適当に闊歩しているがな』
「それってつまり急いで先輩方を突破しなきゃいけないって事じゃない!」

言いながら槍の先端を覆っていた布をラザロが毟り取る。

「私たちが知らないうちに新入生代表っていうのはアレだけど、簡単に負けるわけにはいかないし・・・ちなみに先輩方は去年ご挨拶にはいけましたの?」
『・・・・・』

沈黙が舞い降りた、それぞれが遠くを見つめている。

「去年は・・・生徒会長が出てきてたから」
「そうなのよね、しかも美鈴先輩が足止め役やってたし」
『あのときに我が代表であったのなら、きっと突破していたであろう!・・・多分』
「無理じゃないかな?」
「無理だと思いますわ」
『うむ、言ってて我も無理だと思った』
「あー、前回は先生達も賭けにならなかったからよく覚えてます」
「そんな壮絶な人が止める側にいたんですか?」
「今年はラッキーですよー?だって会長、出てきてないんですもの」
『さすがに二年連続で新入生挨拶が出来ないとなると、学園長も寂しがるのでな』
「そうなんですか」
『うんうん』

クラリスと三人の先輩が頷き合っている。
これだけの人数が会話の応酬を始めると、光は参加出来なくなる。なんとなく後ろに下がって三人の先輩方を眺めてみる。
全身フルプレートの先輩が流石に目立つ。しゃべりながら結構なリアクションもとっている為、間接部がガチャガチャ鳴っている。見た目的には鋼鉄の塊だ、だが疲れる素振りも見せず会話にナチュラルに参加している辺りあの鎧は枷にならないのであろう。
篭手の電撃はよく見ると肩口にある左右非対称の角から発せられているように見える。

『熱い視線を感じるじゃないか』
「・・・・」

どちらかといえば目立つから見ていたのだが、光はなんとなく気圧された。
そんな光に二人の同級生の背中がうつった。

「光さんは後ろに、私とラザロでやります」
「あたしたちなら簡単な連携をとれるからな」
『ほう、その小さい子は来ないのか』
「・・・」

小さいと言われると、流石にむっとする。光は刀に手をかけたがその前にラザロが槍を突き出して叫んだ。

「とりあえず談笑している時間はもったいなさそうだ!ロザフィーヌ・エンブ!突貫する!」
『良い判断だ!なればこそ、ユグドラ生徒会書記!セシル・クローネが受ける!そちらが二人で来ようとも!我は一人で蹴散らしてくれようぞ!』
「へえ」

少年は感心したように。

「よろしくー」

褐色肌の女性は笑顔で後ろに下がった。
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