己が声を封じた彼(オレ)は、覚悟を決めて彼女(わたし)になった

てぃー☆ちゃー

文字の大きさ
47 / 58
第三章 決闘を前に

第四十六話

しおりを挟む
―ありがとうございました―

下校での一件を終え、寮に戻ってきた二人。光は改めて、ミルフェスに礼をした。

「決闘は正しく行われなければなりませんから」

ミルフェスは小さくなったベヒモスを抱きかかえると、光の顔を見据えた。

「光さんもすぐに刀を抜こうとしちゃダメ。戦いの場に赴くのなら、極力相手に能力は悟らせないようにするものです」

光は目が丸くなっていた。

「魔道士とは秘匿とされてる存在なんですから、気軽に手の内を見せちゃいけないんです」

前かがみになって、光の顔に高さを合わせながらミルフェスは言い始めた。

「さっきの上級生達から決闘の対戦相手に、光さんの能力が伝えられる可能性があったんですよ?それなのに『仕方ないな』みたいな感じで刀を取り出して、どうするつもりだったんですか?それが原因で弱点とか欠点とか調べられたら対応できるつもりだったんですか?考えてたんですか?」

これは説教だ。光は思わず後ずさりをした。

「それなりに実力が離れているとわかっている相手だったとしても、決闘の名がついている以上対等な相手との勝負なんです。能力の一つや二つバレてても勝てると、そんな甘い考えで挑むわけではないですよね?」

―それは、もちろん―

「だったら自重しないといけないでしょう。ああいった手合いは決闘が終わるまでは私が対処しますから、光さんは一人での行動は慎んでください。寮の中だって安全とは限らないんですからね?私達魔道士が少しやる気を起こしただけでそこらのドアや窓はあの・・・えーっとなんでしたっけ日本の紙と木の骨組みだけで作られた」

―障子?―

「そう!ショージみたいなものなんですからね」

―障子は結構、障子紙の部分以外は頑丈―

「例えです!」

―ごめんなさい―

光はしゅんとなってしまった。

「とにかく、単独行動は控えるように。教室移動とかも私が一緒に行きますから。私が居なかったらラザロにお願いするなり、クラスメートの人となるべく行動するようにすること。わかりましたか?」

―はい―

有無を言わせないミルフェスの雰囲気に呑まれ、光はすぐに返事を出してしまった。

「よろしい」

―でも、そうするとミルフェスさんの能力が皆に知れ渡ってしまうんじゃ―

「問題ないわ。私の能力ならすでにばれているから」

少しだけ残念そうにミルフェスは断言した。

「この学校の上級生にはライブラルの家の人間もいますし。ライブラルといえばイギリス人の魔道士なら知ってて当然、しらなければ相当な田舎者の扱いだわ」

―ミルフェスさん有名人?―

「私というよりこの子が有名なのよね。初代ライブラルの使役していた召喚獣ベヒモス、ブレスの一吹きで視界のすべてを氷付けにしたと言われているわ」

―ベヒモスすごい―

「ええ、ベヒモスはすごいの。ライブラルの氷結魔術の元祖はこの子だから」

光の言葉に反応したミルフェスは少し寂しそうに答えた。
そういえばレオもベヒモスの事を知っていたことを光は思い出す。何か逸話のようなものが伝えられているのかもしれない。

「まあそういうわけですから、しばらくの間は私がトラブル全般を受け付けますのでそのつもりで」

―はい―

これ以上言ってもミルフェスには聞き入れて貰えないだろう。光はそう思い素直に頷いた。
とはいうものの明日さえ乗り切れば光とクレアの決闘である。
光は逃げ回ればいいだけだと割り切ることにした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...