モノツキフェアリー

メガゴールド

文字の大きさ
17 / 22

17話  本当に大事な事とは

しおりを挟む
 物を大事にすること。
 そして努力すること。

 その二つが、何よりも大事な事なんだとあたしは深く学んだよ。

 物を大事にしつつ、努力も重ねて結果を出してきた子達を見てわかった。
 そうすれば仮に妖精がつくことがなかったとしても無駄にはならない。そんな気がする。

 力をくれるから妖精に頼る。それじゃダメなんだ。
 あたし達人間が頑張り過ぎると疲れて何もできなくなっちゃうのと同じで妖精だって疲れる。
 悪玉の根本がそれなら……

 やっぱり自分自身の頑張りが一番大事なんじゃないかなって思う。

 ダイキチも、本気でプロになりたいのだと言うのなら、努力するしかない。練習いっぱいするしかないんだ。
 
 アガタ選手みたいに、最初から結果でなかったとしても、あきらめることなんてないんだから。



 ♢



「な、なんだよナミコ……は、話ってよ」

 あたしは学校の体育館裏にダイキチを呼び出した。本当に大事な事を伝えるためにね。

 ……?
 なんかダイキチのヤツ、落ち着かない様子でそわそわしてるね。

 らしくないな。いつもの強気な態度はどこに?
 なんか顔も赤いし、目線もあたしに合わせない。
 ニヤニヤしてるし……気持ち悪いな。

 ま、そんなことはどうでもいいや。本題に入ろう。

「ダイキチ」
「お、おう。お前がそんなにおれが好きなら付き合ってやってもいいぜ!」

 ……?
 何の話してるんだこいつ。
 付き合う? 別に買い物とかの用なんてないよ?

「ダイキチ、プロになりたいなら努力することが大事だよ。バットのパワーに頼るんじゃなくてね」
「――は?」
「あんたの憧れ、アガタ選手なんてずっと補欠だったらしいよ? でもあきらめずに努力して、プロになった。だから今うまくいかなくてもさ、努力し続ければ……」
「バカじゃねーの」

 ――は?
 ば、バカ?

「努力すれば必ずむくわれるとかいう気かよ。おれはアガタ選手じゃねえんだ」
「いや、でもさ」
「努力続けるとか簡単に言うけどよ、どれだけ大変なことかわかってんのか? ナミコ、お前は何かのために努力したことあんのか?」

 ……いや、ない……
 実のところ人並みは、普通なんか嫌といいつつも、あたしは何かを努力してこなしたって経験はほとんどない。

 やってもテスト勉強とかそれくらいなもの……

 なんでしてこなかったかって?

 いや、結果がついてこなかったから……

 例えば鉄棒の逆上がり。
 できるようになりたいって、近くの公園で必死に練習したことあった。でも一日かそこらであきらめちゃった。
 無理だって思ったから。何度やってもダメだって思ったから。

 今思うとそういう事多かった……

 水泳のクロール。音楽のリコーダーでの演奏。縄跳《なわと》びの二重跳び。一輪車……

 最初こそ頑張ったけど、途中であきらめてた。

 ダイキチも……そうだったって事?
 
「おれは誰よりも早く少年野球チームに入った。いっぱい練習したぜ? でもよ、後から入ってくる同級生に追い抜かされちまうんだあっさりと」
「……」
「もう嫌になりそうだったぜ? そんだけ努力し続けるのは大変なんだよ。でもな、そう簡単にあきらめたくなんてなかった。夢だからな」

 あたしがあきらめた事と違い、ダイキチは人と競争してるんだ。その競争に負けたら試合に出られない。
 それがくやしくてくやしくて……絶対に打てるバットに逃げちゃったんだね。

 あたしはできなくてくやしいって感情がなかった。だからこだわらなかったんだよね……

 それでも、努力し続ける事がどれだけ大変なのかは……今思うとわかる。

 あたし簡単に言ったけど……
 自分にできない事をダイキチに言うなんて、何様なんだろ……

「おれはあのバットを手放す気なんてねえ。絶対にな。おれには必要なんだよ……プロになるためにな」
「……」
「まったくよ。せっかく気分よかったのに……」
「気分? なにかいいことあったの?」
「なかったよ! お前がそんな下らない事で呼び出したと思わなかったからな!」

 ?????



 ♢



 ――結局、あたしは説得なんてできなかった。
 努力の大切さ教えて、バットを手放させれば、ダゲキくんはまたバットに宿る事ができる。そう思ったんだけどな……

 やっぱりダゲキくんの住みかを探す方向性にしたほうがいいのかな……
 でもそれだとダイキチのヤツ、何も変わらない……

「努力は大事、そう伝えたのはいいことだと思うよ?」

 と、小田くんは言った。
 あの後小田くんと合流し、さっきの事情全部話したんだ。

「バットに頼るのはよくない。そして物を大事にしなきゃダメ。その二つを大内くんにわからせないとダメ……」
「……」
「今度また試合あるみたいだし、もう一度説得しようか。ダゲキくんの住みか見つからないとなると、それしか方法ないし」

 努力の大切さ……
 物を大事にすること。

 それをわかってもらうためには……

 あたしは……自分にできることのために……動くことにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

徳川慶勝、黒船を討つ

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。 もしかしたら、消去するかもしれません。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

処理中です...