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18話 物を大事にして
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――試合の日。
あれから試合の日まで数週間の時が流れた。そんなにダイキチを放っておいて大丈夫なのかとも思ったけど……
「ちょっと脅かしておいたら、少し気にしたみたいでさ」
芝生の上にあたしと一緒に座り込んでる小田くんは言った。
「妖精がいるって話は彼にもなんとなく言ってたじゃない?」
「うん」
「最近打ててない理由は妖精が怒ってるからだよって教えたんだ」
正確に言えばダゲキくんがバットにはもういないからなんだけど、そこら辺の理由はダイキチ知らないしね。
「妖精なんて信じてない、そんな様子ではあったけどさ、実際彼は練習とはいえ打ててない。何か変だとは思ってたはず」
「なるほど、それでそんな事言われたら信じちゃうかもしれないよね」
「うん。それでね、怒ってるのは君が最近バットに乱暴してるからだよって言ったんだ」
「ダイキチとしては、心当たりあるわけだしね」
「そして僕達が練習見に来てた事もしらないから、何で知ってるんだって慌ててた。だからなおさら信じちゃうと思うんだ」
確かに……
「で、チームメイトの子達に聞いたら相変わらず打ててはいないけど、八つ当たりは減ったってさ」
「よかった……」
だからこそ、試合の日まで様子見てられたんだね。さすが小田くん!
あたしもあたしで準備してたから、時間切れで悪玉になっちゃったじゃ意味ないもん。
「でも彼、努力してないわけじゃないよね」
「え?」
「チームメイトも今は調子悪いだけだって信じてる。それはずっと彼が努力してたことを知ってたから」
「?」
「前の活躍とかは頑張ってきた結果が出たんだろって思ってるんだよみんな」
……そうなんだ……
「でもね、試合となるとわからない」
「え?」
「彼はずっと試合に出たがってた。そして活躍したかった」
「そうだね」
「でもこの試合で活躍どころかミスをしたら? 焦ってバットにまた八つ当たりするかもしれない」
確かに……
「ある意味ではこれが最後。ダメそうならダゲキくんは完全に引きはがす方向性にする。悪玉になったら困るからね」
小田くん……そうか。まだダイキチを信じてダゲキくんをまかせれるか試してるんだね。
心を入れかえてほしいんだね。
ダイキチにも、物を大事にする心、努力を信じる心をもってほしいんだ。
ダゲキくんを引きはがすだけでは、ただダイキチを見捨てるだけになるもんね……
ダイキチ……
♢
試合は始まった。
ダイキチは今日も四番。
だけど……
「ストライク! バッターアウト!」
バットに当てることすらできずに三振ってやつを繰り返した。
「くそ! くそくそくそくそくそ!」
ダイキチは怒りながらバットを投げた!
あいつ! これじゃなんも変わってないじゃないか!
「……まずい」
そう小田くんが言うと……
「え、何あれ……」
遠くからでもわかる……
ダイキチのバットが黒い何かにおおわれてるような……
モヤ? 空気? よくわからないけど……
「悪玉一歩手前かも……」
「ええ!? それヤバイよ!」
するとフデコとダゲキくんがあたしの前に出てきた。
『こうなれば物理的に今、バットを壊しに行ったほうがいいかもノブナガ!』
「……」
小田くんは試合中でも構わず、ダイキチが座ってるベンチに向けて走り出した。あたしも後を追う。荷物を持って。
バット……壊すのかな?
ダゲキくんの住みかってだけでなく、おじいさんから受け継がれてきた物なんでしょ?
そんな大事なものを……
――壊すの?
ダイキチはあたし達に気づくとベンチから立ち上がる。
「な、なんだよお前ら……」
「大内くん、バット」
「なんだよ」
……ダイキチは握ってる自分のバットを見る。
反応ない? じゃあ黒い何かは見えてないのかな?
妖精と関わってる小田くんとあたしにしか見えない物?
「君はバットに見捨てられた」
「……え?」
見捨てられた? 小田くん何を……?
「君のその態度が、バットの不思議な力を失くしたんだ」
「な、なんだと!?」
ダイキチはうろたえる。あれだけ打ちまくれた力がなくなったなんて聞かされたら、当然か……
「おじいさん達の時代から続いた由緒正しいバットだったんでしょ? そんな大事なものを粗末《そまつ》に扱った……妖精は怒ったんだよ」
「……」
ダイキチの手はぷるぷると震える。自分のしてきた事の大きさ……わかったのかな?
「おじいさんもお父さんも大事にしてきたんじゃないの? 注意されなかった? 大事に扱えとか、いざって時にだけ使えとか」
「……あ」
言われてたんだ……
ダゲキくんが居着いて理由は、お爺さんとお父さんが大事にしてくれてた結果なんだもんね。
二人はちゃんとダゲキくんの大事さがわかってたんだ……
ダイキチに今その事を伝えたのは、前までなら信じたり無視すると思ってたのかも小田くんは。
打てない状況を続けさせたことで、自分の何が悪かったのかよくわからせるために……
もしかしたらこれでダイキチに、物を大事にするという大切さが理解できたかもしれない。
……ならあたしは、努力の大切さを教えてやる。
あれから試合の日まで数週間の時が流れた。そんなにダイキチを放っておいて大丈夫なのかとも思ったけど……
「ちょっと脅かしておいたら、少し気にしたみたいでさ」
芝生の上にあたしと一緒に座り込んでる小田くんは言った。
「妖精がいるって話は彼にもなんとなく言ってたじゃない?」
「うん」
「最近打ててない理由は妖精が怒ってるからだよって教えたんだ」
正確に言えばダゲキくんがバットにはもういないからなんだけど、そこら辺の理由はダイキチ知らないしね。
「妖精なんて信じてない、そんな様子ではあったけどさ、実際彼は練習とはいえ打ててない。何か変だとは思ってたはず」
「なるほど、それでそんな事言われたら信じちゃうかもしれないよね」
「うん。それでね、怒ってるのは君が最近バットに乱暴してるからだよって言ったんだ」
「ダイキチとしては、心当たりあるわけだしね」
「そして僕達が練習見に来てた事もしらないから、何で知ってるんだって慌ててた。だからなおさら信じちゃうと思うんだ」
確かに……
「で、チームメイトの子達に聞いたら相変わらず打ててはいないけど、八つ当たりは減ったってさ」
「よかった……」
だからこそ、試合の日まで様子見てられたんだね。さすが小田くん!
あたしもあたしで準備してたから、時間切れで悪玉になっちゃったじゃ意味ないもん。
「でも彼、努力してないわけじゃないよね」
「え?」
「チームメイトも今は調子悪いだけだって信じてる。それはずっと彼が努力してたことを知ってたから」
「?」
「前の活躍とかは頑張ってきた結果が出たんだろって思ってるんだよみんな」
……そうなんだ……
「でもね、試合となるとわからない」
「え?」
「彼はずっと試合に出たがってた。そして活躍したかった」
「そうだね」
「でもこの試合で活躍どころかミスをしたら? 焦ってバットにまた八つ当たりするかもしれない」
確かに……
「ある意味ではこれが最後。ダメそうならダゲキくんは完全に引きはがす方向性にする。悪玉になったら困るからね」
小田くん……そうか。まだダイキチを信じてダゲキくんをまかせれるか試してるんだね。
心を入れかえてほしいんだね。
ダイキチにも、物を大事にする心、努力を信じる心をもってほしいんだ。
ダゲキくんを引きはがすだけでは、ただダイキチを見捨てるだけになるもんね……
ダイキチ……
♢
試合は始まった。
ダイキチは今日も四番。
だけど……
「ストライク! バッターアウト!」
バットに当てることすらできずに三振ってやつを繰り返した。
「くそ! くそくそくそくそくそ!」
ダイキチは怒りながらバットを投げた!
あいつ! これじゃなんも変わってないじゃないか!
「……まずい」
そう小田くんが言うと……
「え、何あれ……」
遠くからでもわかる……
ダイキチのバットが黒い何かにおおわれてるような……
モヤ? 空気? よくわからないけど……
「悪玉一歩手前かも……」
「ええ!? それヤバイよ!」
するとフデコとダゲキくんがあたしの前に出てきた。
『こうなれば物理的に今、バットを壊しに行ったほうがいいかもノブナガ!』
「……」
小田くんは試合中でも構わず、ダイキチが座ってるベンチに向けて走り出した。あたしも後を追う。荷物を持って。
バット……壊すのかな?
ダゲキくんの住みかってだけでなく、おじいさんから受け継がれてきた物なんでしょ?
そんな大事なものを……
――壊すの?
ダイキチはあたし達に気づくとベンチから立ち上がる。
「な、なんだよお前ら……」
「大内くん、バット」
「なんだよ」
……ダイキチは握ってる自分のバットを見る。
反応ない? じゃあ黒い何かは見えてないのかな?
妖精と関わってる小田くんとあたしにしか見えない物?
「君はバットに見捨てられた」
「……え?」
見捨てられた? 小田くん何を……?
「君のその態度が、バットの不思議な力を失くしたんだ」
「な、なんだと!?」
ダイキチはうろたえる。あれだけ打ちまくれた力がなくなったなんて聞かされたら、当然か……
「おじいさん達の時代から続いた由緒正しいバットだったんでしょ? そんな大事なものを粗末《そまつ》に扱った……妖精は怒ったんだよ」
「……」
ダイキチの手はぷるぷると震える。自分のしてきた事の大きさ……わかったのかな?
「おじいさんもお父さんも大事にしてきたんじゃないの? 注意されなかった? 大事に扱えとか、いざって時にだけ使えとか」
「……あ」
言われてたんだ……
ダゲキくんが居着いて理由は、お爺さんとお父さんが大事にしてくれてた結果なんだもんね。
二人はちゃんとダゲキくんの大事さがわかってたんだ……
ダイキチに今その事を伝えたのは、前までなら信じたり無視すると思ってたのかも小田くんは。
打てない状況を続けさせたことで、自分の何が悪かったのかよくわからせるために……
もしかしたらこれでダイキチに、物を大事にするという大切さが理解できたかもしれない。
……ならあたしは、努力の大切さを教えてやる。
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