【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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5話

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 聖女?? 妃??

 聖女は聞いた事がある。確か護国ごこくの力で国を外敵から守り、繁栄をもたらすと。
 でも妃? おきさき様? セルジュさんのお妃様? お嫁さんになるって事!?!?

「せ、セルジュさん? 一体何の話しでしょうか……?」

 謁見の間という事もあって、恐る恐る聞いてみたら、とても素敵な笑顔でこう言った。

「街で治療を施した時から目が離せませんでした。僕と結婚してください」

 私の両手を握り、片膝をついて真剣なまなざして見つめてくる。
 こっ、これは!! そんなまなざしで見られるとYESと言ってしまいそうになる!!

 でも、そう言ってフラれた経験があるんです、私。

「すみません、以前にも言いましたが、今は男性とのお付き合いは……」

「セルシャック、どうしたのだお前らしくもない。随分とその女性に熱を上げているではないか」

「陛下、いえ父上。この女性の人柄を知れば、父上も納得される事でしょう」

「そうではない、お前の目は信じておるからな。しかし聖女様ならいざ知らず、ただの娘との婚姻など、王族としてあるまじき行為であると理解していよう?」

 そうそう、そうだよね! 私は国からも家からも捨てられた女。そんな女が王太子と結婚、まして聖女様のはずがないよね!
 ふ~よかった、これで帰れる。

「それでは聖女様としての力をお見せしたら良いのですね?」

 それからは慌ただしくあちこちに連れていかれた。
 治療院で怪我人や病人の治療。
 神殿で神官様にお会いして、水晶玉に手を当てたり。
 それはもう、謁見の間にいた人全員が後を付いて来てた。

「神官長、どうであった?」

「聖女様とみて間違いないでしょう。まだみそぎの儀を受けていないだけで、その力は疑いようがありません」

 メガネをかけた知的な男性から聖女認定を頂きました。
 もう逃げも隠れも出来ないようです……でも困ってる人を助けられるなら、それでもいいかな。

「それでは禊の儀を受ければ、私との婚姻を許可してくださいますね? 父上」

「聖女様となれば反対する理由どころか、国を挙げて歓迎しようではないか」

「ありがとうございます父上!」

「ちょ、ちょっと待ってください! 私にはその気はありませんってば!」

 この流れは、この流れは悪すぎる! 確かにセルジャック王太子は元気だし優しいし、それに……かっこいい……けど、酷いフラれ方をしたばっかりでその気はないの!

「セルジュ、お前まさか聖女様に無礼を働いてないだろうな」

「何を言っているんだアル! 私は好いた女性に失礼な事などしない!」

 あれ? 神官長様とセルジュさんって仲がいいの? 歳は近そうだけど。

「失礼しました聖女様。申し遅れましたが、私はアルバート・スーパークス。メジェンヌ国の神官長を務めております」

 ああ、アルバートだからアルなのね。セルジャック王太子はセルジュだし、愛称で呼び合うほどの仲らしい。

「それではアトリア聖女様、あなたは私がお預かりしましょう。禊の儀までは時間がかかりますし、本来聖女様は神殿に所属するのですから」

 アルバートさんが私の手を取った。
 
「私の事はアルとお呼び下さい、聖女様」

「おいアル! 聖女様に馴れ馴れしすぎないか!?」

「何を言っている、私はこれから聖女様にお仕えするのだ。堅苦しい呼び方など不要だろう?」

 言い合いを始めてしまった……仲はいいけど、お互いライバル関係とかかな。
 仲がいい程ライバル視するものなの?

 国王陛下の勧めもあって、私はしばらくの間は神殿で暮らす事になった。
 禊の儀まで、という条件付きで。

 準備には数週間かかるみたいだし、その間に国の事を色々と教えてくれた。
 でも、大体は知ってた。細かい所は別だけど、腐っても貴族だったしね。
 隣の大国の情報は常に入って来てたもん。

 そんな生活をしていた時、とても心がえぐられる話しを聞いた。
 『ヴァルプール国のハロルド王太子とマーテリー嬢が結婚式をあげる』と。
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