【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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9話

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「お久しぶりですねマーテリー王太子妃。私をおとしいれて手に入れた座は、さぞいい物でしょうね」

 ああ、言ってしまった。
 私の言葉にいち早く反応したのはセルジュさんだった。

「アトリア聖女、陥れたとは一体何の事だ?」

 セルジュさんが私の名を呼んで、ようやくハロルド王太子は気が付いた。

「あ、アトリアだって!? アトリアがどうしてここに……いや、どうして聖女様なんだ!?」

 慌てふためいて、マーテリー王太子妃と一緒に後ずさった。
 そんなに顔を青くして、悪い事をした自覚はあったんですね。

「お久しぶりですハロルド王太子。このたびは、あなたにに婚約破棄された私をお招きいただき、ありがとうございます」

 会場が静まり返る。
 それはそうだろう、今から必死に媚を売ろうとした聖女が、元はハロルド王太子の婚約者であり、しかも破棄したなんて知ったんだ。
 ハロルド王太子の……ヴァルプール国との関係さえ考え直さないといけないはずだ。

 会場がざわめき始める。
 聖女の力はすでに諸外国に伝わっている。
 治癒の力、加護の力……それだけでも友好を築こうとする国が山のようにいる。

 小さなヴァルプール国と聖女、どちらが国に利益をもたらすか、考えるまでもない事だ。

 そういえば婚約者が変わったと聞いた
 確か国外追放したとか
 聖女様が元婚約者だと気づかなかったのか
 聖女様を捨てた国だ

 そんな言葉が会場に広がっていく。
 
「あ、アトリア! あの時は仕方がなかったんだ! あの時は……そう、ああするしかなかったんだ!」

「その通りですアトリアさん。アナタを守るため国外追放は最善の策でした。アナタさえよければ、いつでも国に戻ってきていいのですよ?」

 王太子・王太子妃が必死に弁明してる。そんな言葉で騙されると思ってるのかな。

「アトリア! おお我が娘よ! 見違えるほど立派なったではないか! 今のお前にならば家督を譲っても大丈夫だ! さあ、今晩は家に来るといい、家族で食事をしようではないか!」

「お父さま、あなたは先程、私に挨拶をした時でも、私だと気づきませんでしたね」

「そ、それは、お前が見違えるほど立派になったからだ!」

「私は以前から変わっておりません。ハロルド王太子に婚約破棄され、国外追放され、家から絶縁された時と」

 私はお父さまを睨みつけた。
 お父さまに良いように使われてる自覚はあった。
 でも、それでも良いと思っていた。
 だけどそれも終わり。

 私は、メジェンヌ国の聖女だ。

「アトリア聖女、あなたはヴァルプールの貴族だったのか」

「申し訳ありませんセルジャック王太子。今まで黙っていて」

「いや、構わない。それよりどうしたい? 君の希望を聞いておきたいんだ」

 私の希望……。

「それなら1つだけ。ヴァルプール国と関りを持ちたくありません」

「分かった。ここに居るものすべてに告げる! 我がメジェンヌ国は、ヴァルプール国との全ての関係を断つ事を私、セルジャック・ド・ジャネットの名において宣言する!! 」
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