10 / 60
10話
しおりを挟む
「ここに居るものすべてに告げる! 我がメジェンヌ国は、ヴァルプール国との全ての関係を断つ事を私、セルジャック・ド・ジャネットの名において宣言する!!」
セルジュさんの言葉が会場に響き渡り、一瞬の静寂の後、3人以外が私とセルジュさんの元に集まりだした。
各国の重鎮に次々に挨拶をされ、名前を覚えるのが得意な私でも、全員は覚えきれないほど。
呆然とするハロルド王太子とマーテリー王太子妃、そしてお父さまは、会場の片隅に追いやられている。
他にもいた貴族や王族は、すでに姿を消したみたい。
これ以上の恥をかかされるのは御免なんだろう。
私の小さな復讐心のために、この国の未来は閉ざされたといっていい。
いえ、小さくはなかったかな。それに晴れ晴れしている。
ただセルジュさんやメジェンヌ国の人には、迷惑をかけてしまった事を後悔していた。
「ん? 別に迷惑でも何でもないぞ」
帰りの馬車の中で、申し訳なく思って頭を下げると、とてもかる~い口調で言われた。
「え? で、でも、国の方針とか政治的なやり取りとか、色々ありませんか?」
「あんな小さな国1つ、メジェンヌという国には何の影響もないな」
あ、あれぇ? 国と国って、もっとこう……色々あるんじゃないの?
「ひょっとして暗い顔をしていたのは、その事を気にしていたのか?」
「えーっと、はい。国王陛下にもご迷惑をおかけしてしまうなと」
「はっはっは、まっ………………たく、気にする必要は無い。むしろあの王太子が愚か者で感謝しているくらいだ。アトリアという愛すべき女を、私とめぐり合せてくれたのだからな」
確かにセルジュさんと知り合えたのは嬉しい事だ。聖女としての活動も楽しい。
次期国王のセルジュさんが良いといって、私も感謝している……考える必要なんてなかった。
「じゃあ私は聖女として、メジェンヌ国に精いっぱい奉仕するね」
「ああそうしてくれ。いや、国の為ではなく、俺のために、な」
今の言葉は聞こえないふりをした。
セルジュさんはガンガン言い寄ってくるけど、でもやっぱり心のどこかで怖がってる。
直前で捨てられるんじゃないかって。
当分は1人でいいな。
国に帰ってからは今まで通りにお勤めを……出来なかった。
毎日朝から晩まで国外の偉い方々が面会に来て、朝の祈り以外は自分の時間がない。
祈りが自分の時間かどうかはさておいて。
そうなると当然出てくるのが、婚姻関連の話。
聖女はメジェンヌ国に所属しているけど、必ず国内の人と結婚するわけではなく、一応恋愛の自由はあるみたい。
だからこそ自国に取り込もうとする話が多いわけで……でも大体はその場にいる誰か、大体は神官長さんが断ってくれている。
セルジュさんがいればセルジュさん。
「まったく、聖女様もハッキリと言えばよいのです。今はそういった話を受け付けていないと」
「いつも有難うございますアルバート神官長。言ってはいるんです。でも聞いてくれなくて」
「それならばいっそのこと結婚しますか? 私と」
……ん?
セルジュさんの言葉が会場に響き渡り、一瞬の静寂の後、3人以外が私とセルジュさんの元に集まりだした。
各国の重鎮に次々に挨拶をされ、名前を覚えるのが得意な私でも、全員は覚えきれないほど。
呆然とするハロルド王太子とマーテリー王太子妃、そしてお父さまは、会場の片隅に追いやられている。
他にもいた貴族や王族は、すでに姿を消したみたい。
これ以上の恥をかかされるのは御免なんだろう。
私の小さな復讐心のために、この国の未来は閉ざされたといっていい。
いえ、小さくはなかったかな。それに晴れ晴れしている。
ただセルジュさんやメジェンヌ国の人には、迷惑をかけてしまった事を後悔していた。
「ん? 別に迷惑でも何でもないぞ」
帰りの馬車の中で、申し訳なく思って頭を下げると、とてもかる~い口調で言われた。
「え? で、でも、国の方針とか政治的なやり取りとか、色々ありませんか?」
「あんな小さな国1つ、メジェンヌという国には何の影響もないな」
あ、あれぇ? 国と国って、もっとこう……色々あるんじゃないの?
「ひょっとして暗い顔をしていたのは、その事を気にしていたのか?」
「えーっと、はい。国王陛下にもご迷惑をおかけしてしまうなと」
「はっはっは、まっ………………たく、気にする必要は無い。むしろあの王太子が愚か者で感謝しているくらいだ。アトリアという愛すべき女を、私とめぐり合せてくれたのだからな」
確かにセルジュさんと知り合えたのは嬉しい事だ。聖女としての活動も楽しい。
次期国王のセルジュさんが良いといって、私も感謝している……考える必要なんてなかった。
「じゃあ私は聖女として、メジェンヌ国に精いっぱい奉仕するね」
「ああそうしてくれ。いや、国の為ではなく、俺のために、な」
今の言葉は聞こえないふりをした。
セルジュさんはガンガン言い寄ってくるけど、でもやっぱり心のどこかで怖がってる。
直前で捨てられるんじゃないかって。
当分は1人でいいな。
国に帰ってからは今まで通りにお勤めを……出来なかった。
毎日朝から晩まで国外の偉い方々が面会に来て、朝の祈り以外は自分の時間がない。
祈りが自分の時間かどうかはさておいて。
そうなると当然出てくるのが、婚姻関連の話。
聖女はメジェンヌ国に所属しているけど、必ず国内の人と結婚するわけではなく、一応恋愛の自由はあるみたい。
だからこそ自国に取り込もうとする話が多いわけで……でも大体はその場にいる誰か、大体は神官長さんが断ってくれている。
セルジュさんがいればセルジュさん。
「まったく、聖女様もハッキリと言えばよいのです。今はそういった話を受け付けていないと」
「いつも有難うございますアルバート神官長。言ってはいるんです。でも聞いてくれなくて」
「それならばいっそのこと結婚しますか? 私と」
……ん?
76
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
森聖女エレナ〜追放先の隣国を発展させたら元婚約者が泣きついてきたので処刑します〜
けんゆう
恋愛
緑豊かなグリンタフ帝国の森聖女だったエレナは、大自然の調和を守る大魔道機関を管理し、帝国の繁栄を地道に支える存在だった。だが、「無能」と罵られ、婚約破棄され、国から追放される。
「お前など不要だ」 と嘲笑う皇太子デュボワと森聖女助手のレイカは彼女を見下し、「いなくなっても帝国は繁栄する」 と豪語した。
しかし、大魔道機関の管理を失った帝国は、作物が枯れ、国は衰退の一途を辿る。
一方、エレナは隣国のセリスタン共和国へ流れ着き、自分の持つ「森聖力」の真価 に気づく……
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません
綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」
婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。
だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。
伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。
彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。
婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。
彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。
真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。
事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。
しかし、リラは知らない。
アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。
そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。
彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。
王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。
捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。
宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――?
※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。
物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。
義母の企みで王子との婚約は破棄され、辺境の老貴族と結婚せよと追放されたけど、結婚したのは孫息子だし、思いっきり歌も歌えて言うことありません!
もーりんもも
恋愛
義妹の聖女の証を奪って聖女になり代わろうとした罪で、辺境の地を治める老貴族と結婚しろと王に命じられ、王都から追放されてしまったアデリーン。
ところが、結婚相手の領主アドルフ・ジャンポール侯爵は、結婚式当日に老衰で死んでしまった。
王様の命令は、「ジャンポール家の当主と結婚せよ」ということで、急遽ジャンポール家の当主となった孫息子ユリウスと結婚することに。
ユリウスの結婚の誓いの言葉は「ふん。ゲス女め」。
それでもアデリーンにとっては、緑豊かなジャンポール領は楽園だった。
誰にも遠慮することなく、美しい森の中で、大好きな歌を思いっきり歌えるから!
アデリーンの歌には不思議な力があった。その歌声は万物を癒し、ユリウスの心までをも溶かしていく……。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる