上 下
5 / 7

夢は映画化

しおりを挟む
「ドラマ化するとしたら、私たちの役を誰が演じると思います?」

「え、その話まだ続いてるの?」

「そうねぇ~香穂ちゃんは、可愛らしい感じがこう…………」

「こう?」

「名前が出てこないんだよね、志麻姉」

「う……私、あんまり女優さんの名前とかよく知らなくて……」

「むしろ名前を出してたら、それはそれでマズイんじゃない?」

「えーそれじゃあ……
 映画化したら、どんな話になると思います?」

「〝湯けむり美人三義姉妹は見た!〟とか?」

「タイトル『SPADABEL』じゃないんかい」

「ミステリーですね!
 きゃ~私、一度でいいからあのセリフ言ってみたかったんですよぉ」

「あのセリフって……やっぱり」

「じっちゃんの名にかけて!」「真実はいつもひとつ!」「きゃ~人が死んでるぅ~」

「「え」」

「いやいやいや、志麻姉のはわかるけどね。
 香穂のは、それ何? なんで第1発見者役?」

「えーだって、人が死んでるところなんて、
 滅多に遭遇できるものじゃないじゃないですか。
 こう事件がはじまるって感じがして、わくわくしません?」

「私、見たことあるよ~」

「え、死体を?」

「まさかお葬式で、なんてオチじゃないですよね?」

「学生時代、サークル活動で山に登ってた時にね~。
 結構多いみたいよ、山で自殺する人って」

「うへぇ~……テンション下がるぅ……」

「ちょっと期待してたのと違ってがっかりです」

「ご、ごめんね。
 映画の話に戻そっか」

「これ、温泉で女3人がだべるだけの話でしょ?
 映画見てる人、ずっと温泉に浸かってる女3人がだべってるところを
 延々と2時間見せ続けられるの? 苦行なの?」

「そんなことないですよ、むしろサービスじゃないですか。
 美人三姉妹の入浴シーンですよ。
 いつ身体に巻いているタオルがはらりと落ちるか、とか、
 湯舟から出るシーンはないか、とか、目を離す隙すら与えません」

「それこそマズイでしょ。
 子供は見ちゃダメ、みたいな。
 年齢制限かかるよね、それ」

「そういえば、温泉映画ってあったわよねぇ。
 あれと被るからダメかしら」

「ああ、何か顔のいかついおっさんが出てきて
 温泉つくっちゃうやつだっけ?」

「何言ってるんですか、
 あれは、むさいオッサンたちが温泉に浸かってますけど、
 こっちは、美人三姉妹ですよ?
 おっさんなんて敵じゃありません」

「私、あの俳優さん好き~」

「私は、どちらかというと、あのニヒルな悪役王子の方が好きかなぁ」

「あっちゃん、影のある男が好きなのね~」

「……ちょっと二人とも、私の話聞いてます?」
しおりを挟む

処理中です...