【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~

風雅ありす

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【本編】

終わり良ければ、全て良し?

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街灯もない真っ暗なウサギ小屋の中で、百合は、表情なく俯いた。
それは、全てを諦めた者の顔だった。

「そんな……ひどい。
 それじゃあ、その時のウサギは……」

「死んだわ。
 父が保健所に連絡を入れて、引き取りに来てもらったって言ってた。
 もう6年も前のことよ」

「探しには行かなかったの?
 もしかしたら、まだ……」

「もちろん行ったわ!
 ……でも、父の軟禁が解けて、私がようやく家の外へ出られた時、
 そのウサギなら、もう処分されたと言われた。
 もっと早く助けに行けてたらって、何度も何度も……自分を責めたわ。
 どうして、あの時、すぐにでも彼と一緒に家を出なかったのかって。
 最後に父との食事を楽しもうなんて、そんな気を起こしてさえいなければ、
 彼は助かっていたかもしれないって……」

「だから、コウヤと一緒にいる私を見て、許せなかった?」

「そうよ!
 純也さんだけじゃない、私が手に入れられなかったもの全てを先輩は手にしているのに、
 それなのに……まるで自分には何もないかのような顔をしてるのが、許せなかったのよ!」

百合が動物愛護センターにコウヤのことを通報した理由が、今やっと分かった。
ウサギのことは、私に関係ないけれど、
コウヤと一緒に居た私が妬ましかったのだろう。

百合の話には同情する。
でも、コウヤを通報したことを私は、決して許せないだろう。
東城先生のおかげで無事だったけど、一歩間違えていたら、コウヤは今、ここに居なかったのだから。

その時、コウヤが唐突に口を挟んだ。

「そのウサギの名前は?」

百合が訝しげな目付きでコウヤを睨む。

「……そんなこと聞いて、どうするのよ」

私は、まさかと思ってコウヤを見る。

「牙のある青いウサギだろ?
 俺、そいつのこと、知ってるかもしれない」

百合の瞳が驚愕に見開かれる。

「…………コウヤ、どういうこと?
 まさか……」

私が訊ねると、コウヤは、百合から私の顔に視線を移して、頷いた。

「東城先生のところに居た時、俺、そいつと会ってるんだ」

「まさか……でも、百合の話だと、6年も前の話なんでしょう?
 同じ種族ってだけで、別のウサギなんじゃ……」

それが本当に百合の出会ったウサギなら、運命的だけど、もし違うウサギなら、百合を悪戯に期待させて傷付けるだけになる。

「うん。だから、そいつの名前を聞いたんだ。
 俺たち〈獣人ベスティアン〉は、死んだ人から名前を受け継ぐ文化がある。
 異種族なら被る可能性もあるけど……同族の中では、基本的に同じ名前を持つ個体が同時期には存在しないんだ。
 ……だから、教えてよ。そいつの名前」

百合は、事情がよく呑み込めてないようだったが、私が名前を呼ぶと、はっとした表情で教えてくれた。

「……ソラ。
 彼は、自分のことを〝ソラ〟って名乗ったわ」

それを聞いたコウヤは、ああ、やっぱり、と言うような顔をして笑った。

「俺が会ったそいつも、〝ソラ〟って名前だったよ」

「でも、死んだ彼から名前を引き継いだって可能性もあるんじゃないの?」

私が聞くと、コウヤは、ゆっくり頭を左右に振って教えてくれた。

「それは、ない。
 仮に、そいつが6年前に死んでいたとしても、伴侶を探す旅に出るのは、成人してからだ。
 ラヴィ族は、俺たちウォルフ族よりも成人するのが早いって聞いたことあるけど……
 俺が会ったやつは、もう6年そこに居るって言ってたから、そいつがあんたの言う〝ソラ〟ってやつに間違いないよ」

その時、百合の瞳に光が宿るのを私は見た。

「…………彼が、生きてる……?
 そんなの、嘘よ。
 私は、動物愛護センターに確認して、
 彼の死亡届をこの目で見たのよ。
 彼が生きてるわけない……」

「百合。あなたが通報して、動物愛護センターへ連れて行かれたコウヤが今ここに居る。
 このことが何よりの証拠よ。
 コウヤを信じて、あなたの彼は、生きてる」

「彼は……ソラは、今どこにいるの?」

コウヤは、ゆっくりと百合に向かって微笑んだ。

「案内するよ」

「百合……良かったじゃない!
 早く彼に会いに行きましょう!」

私がうさぎ小屋へ駆け寄ると、百合は、俯いて頭を左右に振る。

「………そんな、今更そんなこと言われても……私、行けないわ」

「どうして?!
 純也のことなんて、気にすることないわよ!
 こんな最低男……!」

「おい」

それまで黙っていた純也が突っ込みを入れる。
だが、私は、それを無視した。

「彼のこと、もう愛してないの?」

「……違う。
 だって……それが本当なら、
 彼は、この6年間、私に会おうしてくれなかったってことよ。
 私が会いに行って、彼の死を悲しんでいる私を見て、知らないフリをしていたってことだわ。
 そんなの、今更会いに行って、どうするって言うのよ……」

ウサギ小屋の中で、百合は、自分の両肩を抱えて震えている。
怖いのだ。
再び会いに行って、彼に拒絶されることが。
私は、百合が自分の姿に重ねて見えた。

「百合……私も、同じように考えてた。
 でも、それで本当にいいの?
 彼が会いに来られない理由が何かあるのかもしれない。
 それを確かめないまま終わってしまって、
 あなたは、彼のことを諦められる?」

私の言葉に、百合がゆっくりと顔をあげる。
百合は、ポケットから鍵を取り出すと、うさぎ小屋の扉を開けて外に出て来た。
その身体は、もう震えていない。

「…………私を、ソラの所へ案内してくれる?」

コウヤが任せろと言うように、大きく頷いた。

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