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【本編】
私の番
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私たちは、東城先生の家を出ると、再び学校のウサギ小屋へと戻った。
そこに、ソラが異世界から来た穴が開いているのだという。
来る時は電車で向かったが、深夜を過ぎているので、既に終電はない。
東城先生の車で目的地へ着く頃には、空の下の方が薄らと明るくなってきていた。
百合とソラは、二人手を繋いで並んで立つ。
こうして見ると、とてもお似合いのカップルに見えた。
「色々迷惑かけたこと、謝りません。
でも、先輩のこと、私、嫌いじゃなかったです。
……向こうで、待ってますね」
それが百合の最後の言葉だった。
朝日がうさぎ小屋を照らす時、そこに二人の姿はなく、後には、誰もいないウサギ小屋だけが残っていた。
まるでこの世界には最初から二人が居なかったかのように、忽然と姿を消したのだ。
穴と言われても私の目には見えなかったし、何が起きたのかも分からない。
でも、二人がこの世界から消えたのだということだけは分かる。
というのも、百合が消えたとうのに、この世界は何の影響も受けなかったからだ。
社長令嬢が失踪したというニュースも、女子大生が失踪したという騒ぎもなく、
いつもの一日が始まった。
どうやら、異世界へ行くと、こちらの世界で存在しなかったことになるようだった。
純也にも、百合の無事を伝えたけれど、
「百合って誰?」
という返信が返って来たことには、正直ショックだった。
百合とソラのことを記憶しているのは、私とコウヤと東城先生だけだった。
もし、私がコウヤと異世界へ行ったら、
私も同じようにこの世界から存在を消されてしまうのだろう。
そのことを想像して、私は、やっと自分の気持ちに正直になることができた。
百合の最後の言葉を思い出す。
……そう。
今度は、私の番――――。
「コウヤ、今日の夜、仕事から帰ったら、
昨日の話の続き、しても良い?」
東城先生に車で家まで送ってもらい、コウヤと二人きりになると、私は、コウヤにそう告げた。
コウヤは、少しだけ目を細めて、何か覚悟を決めたような表情で頷く。
「…………ああ」
結局、一睡もしないまま仕事へ向かった。
アドレナリンが出ている所為か、思いの外仕事は捗った。
伊藤さんに「何か良いことあった?」と勘繰られる程だ。
私は、定時で仕事を切り上げると、コウヤが待つ自宅へと帰った。
胸の奥が熱い。
このあと、私が告げる内容を考えると、妙な高揚感はあったが、不思議と落ち着いていた。
コウヤは、どんな顔をするだろうか。
家に帰ると、コウヤが夕食を用意して待ってくれていた。
「おかえり、ファム」
と言って、コウヤが優しく私の額に口付ける。
最初は、恥ずかしくて拒否していたが、今では、嬉しいと感じる自分がいる。
夕食は、私の好きなクリームシチューだった。
ガーリックバターを塗って軽く焼いたバケットを手で千切り、シチューに浸して食べると、口中に甘く優しい味わいが広がった。
私たちは、お互いに今日あった出来事を話しながら食事を楽しんだ。
昨夜の百合とソラの話は、敢えて話題にしなかった。
その話をしてしまうと、この穏やかで楽しい時間が終わってしまうように感じたからだ。
それは、コウヤも同じなのだろう。
何度もシチューをおかわりしては、この時間を繋ぎ止めようとしているかのようだった。
でも、いつまでもこのままではいられない。
私のお皿が空になり、シチューの鍋が空になる。
食器を片付けようと席を立とうとしたコウヤを私は引き止めた。
「コウヤ……私、コウヤのことが好き」
そこに、ソラが異世界から来た穴が開いているのだという。
来る時は電車で向かったが、深夜を過ぎているので、既に終電はない。
東城先生の車で目的地へ着く頃には、空の下の方が薄らと明るくなってきていた。
百合とソラは、二人手を繋いで並んで立つ。
こうして見ると、とてもお似合いのカップルに見えた。
「色々迷惑かけたこと、謝りません。
でも、先輩のこと、私、嫌いじゃなかったです。
……向こうで、待ってますね」
それが百合の最後の言葉だった。
朝日がうさぎ小屋を照らす時、そこに二人の姿はなく、後には、誰もいないウサギ小屋だけが残っていた。
まるでこの世界には最初から二人が居なかったかのように、忽然と姿を消したのだ。
穴と言われても私の目には見えなかったし、何が起きたのかも分からない。
でも、二人がこの世界から消えたのだということだけは分かる。
というのも、百合が消えたとうのに、この世界は何の影響も受けなかったからだ。
社長令嬢が失踪したというニュースも、女子大生が失踪したという騒ぎもなく、
いつもの一日が始まった。
どうやら、異世界へ行くと、こちらの世界で存在しなかったことになるようだった。
純也にも、百合の無事を伝えたけれど、
「百合って誰?」
という返信が返って来たことには、正直ショックだった。
百合とソラのことを記憶しているのは、私とコウヤと東城先生だけだった。
もし、私がコウヤと異世界へ行ったら、
私も同じようにこの世界から存在を消されてしまうのだろう。
そのことを想像して、私は、やっと自分の気持ちに正直になることができた。
百合の最後の言葉を思い出す。
……そう。
今度は、私の番――――。
「コウヤ、今日の夜、仕事から帰ったら、
昨日の話の続き、しても良い?」
東城先生に車で家まで送ってもらい、コウヤと二人きりになると、私は、コウヤにそう告げた。
コウヤは、少しだけ目を細めて、何か覚悟を決めたような表情で頷く。
「…………ああ」
結局、一睡もしないまま仕事へ向かった。
アドレナリンが出ている所為か、思いの外仕事は捗った。
伊藤さんに「何か良いことあった?」と勘繰られる程だ。
私は、定時で仕事を切り上げると、コウヤが待つ自宅へと帰った。
胸の奥が熱い。
このあと、私が告げる内容を考えると、妙な高揚感はあったが、不思議と落ち着いていた。
コウヤは、どんな顔をするだろうか。
家に帰ると、コウヤが夕食を用意して待ってくれていた。
「おかえり、ファム」
と言って、コウヤが優しく私の額に口付ける。
最初は、恥ずかしくて拒否していたが、今では、嬉しいと感じる自分がいる。
夕食は、私の好きなクリームシチューだった。
ガーリックバターを塗って軽く焼いたバケットを手で千切り、シチューに浸して食べると、口中に甘く優しい味わいが広がった。
私たちは、お互いに今日あった出来事を話しながら食事を楽しんだ。
昨夜の百合とソラの話は、敢えて話題にしなかった。
その話をしてしまうと、この穏やかで楽しい時間が終わってしまうように感じたからだ。
それは、コウヤも同じなのだろう。
何度もシチューをおかわりしては、この時間を繋ぎ止めようとしているかのようだった。
でも、いつまでもこのままではいられない。
私のお皿が空になり、シチューの鍋が空になる。
食器を片付けようと席を立とうとしたコウヤを私は引き止めた。
「コウヤ……私、コウヤのことが好き」
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