【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~

風雅ありす

文字の大きさ
58 / 63
【本編】

互いの想い

しおりを挟む
コウヤの黄緑色の瞳が驚いたように見開かれる。
その吸い込まれそうな瞳を私は好きなった。

「ずっと言えなくて、ごめんね」

コウヤを取り戻しに動物愛護センターへ行った時、東城先生から問い詰められても結局、言葉には出来なかった。
あの時、私は、既に自分の気持ちを自覚していた。
言うタイミングがなかったわけではない。
ただ、それを口にする覚悟と勇気がなかったのだ。

コウヤは、何も答えない。
その沈黙が余計に私を不安にさせる。

「私のことなんて、もう呆れちゃった?」

「違うっ!
 ……そうじゃなくて……ただ、驚いて……」

コウヤが瞳を伏せる。

(喜んでくれるかと思ったんだけどな……)

コウヤが意を決したように顔を上げて私を見る。

「俺、ファムに謝らないといけないことが2つあるんだ」

「え……何のこと?」

まさか、これまでのことはなかったことにしてくれ、と言われるのだろうか。
私は、不安な気持ちを抱えながら、続きを待った。

「俺……今まで、ファムの気持ちも聞かずに、たくさんファムの身体を触って……本当にごめん!!
 でもそれは、ファムに気持ち良くなって欲しいって一心で触ってたんだ。
 その気持ちは嘘じゃない!
 でも、東城先生に言われたんだ。
 女性の同意を得ないで、好き勝手に触るだけじゃあ、体目当てだと思われるわよ、って言われて……」

「……へ?」

その予想外の内容に、身構えていた分、私は、思わず変な声が出た。
でも、コウヤは、申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「……そりゃあ、俺がファムの身体に触れたいって気持ちがなかった訳じゃあないけど、
 でもそれは、ファムが相手だったからで、別に女なら誰でもいいっていう訳じゃないからな!」

「……もしかして、それを気にして、最近、私に触ってこなくなってたの?」

「…………うん。
 ファムが俺のこと求めてくれるまで待とうと思ったんだ。
 身体目当てじゃないって、分かって欲しくて」

「なんだ……私のこと嫌いになったわけじゃなかったのね」

ほっとして、思わず笑えてしまう。
それにしても、コウヤは、一体、東城先生にどんな話をしていたのだろう。
色々と彼女に知られてしまっているのだと思うと、次に彼女と会う時、どんな顔をして会えば良いのか分からなくなる。

「俺がファムのことを嫌う筈がない!
 初めて会った時から、俺を救ってくれたファムのこと大好きだ。愛してる」

真正面から言われて、私は、照れくさくて思わずコウヤから視線を逸らした。

「……もう1つは?」

さっきコウヤは、私に謝りたいことが2つあると言っていた。

「もう1つは……ファムの名前を知らなったこと。
 最初に会った時から、俺、〝ファム〟って呼んでたから、聞いてもいなかったなって。
 これも東城先生に聞かれるまで気付かなかったんだ。……本当にごめん」

確かに思い返してみると、私は、一度もコウヤに自分の名前を名乗っていない。
コウヤが私のことを〝ファム〟と呼ぶので、気にもしていなかった。
でもそれは、それだけコウヤが私の上辺だけでなく、中身を好きになってくれていたということなのだろう。

「私の名前は、西野 芙亞那ふあな
 本当は、この名前、あんまり好きじゃなくて。
 だから、コウヤが〝ファム〟って呼んでくれるの、嫌じゃなかったよ」

芙亞那ふあな〟という名前は、
スペインに昔実在していた女王様の名前から取ったらしい。
歴史好きの母が教えてくれた。
一途に一人の伴侶を愛し貫いた女性の名前だと。

「フアナ……綺麗な名前だ」

コウヤが目を細めて微笑む。
こうして褒められると、自分の名前がほんの少しだけ好きになれそうな気がした。

(それに、〝フアナ〟と〝ファム〟って、少し似てるし。
 言われるまで特に違和感もなかったなぁ)

そう言えば、前に公園で純也と会った時、私がコウヤに〝ファム〟と呼ばれているのを聞いて、何故か純也が『そいつには、名前で呼ばせてるんだな』と言っていたのを思い出す。
あの時は、何のことか分からなかったけど、〝ファム〟を〝フアナ〟の愛称か何かだと勘違いしたのかもしれない。
純也と付き合っていた時も、私は自分の下の名前で呼ばれるのが嫌で、純也に苗字で呼んでもらっていた。
もしかしたら、純也は、そのことをずっと気にしていたのかもしれない。

「フアナ……愛してる」

コウヤの黄緑色の瞳が真っ直ぐ私の目を見つめている。
私も今度は、目を逸らさない。

「私も……コウヤのこと愛してる」

コウヤの黄緑色の瞳がふっと和らぐ。
そのままコウヤの顔が近付いてきて、私は、目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...