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伝説のゆくえ
変貌
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俺はエリアスと一線を越えた。
昨夜、大人の階段を昇ったシンです。
あれから体が痛くて動けずにエリアスの部屋に泊まった俺は、鳥の声で目を覚ました。まだ朝の五時だ。隣を見ると、エリアスはいなかった。おそらく仕事にいったのだろう。
ふと、机に置いてある古文書が目に入る。俺は重い腰を上げてぺたぺたと裸足で机まで歩く。太腿の付け根と腰と背中と足が痛…。
でも、昨夜のエリアスを思い出すだけで胸が高鳴って切なくて。
俺はエリアスと…。昨日の映像が甦ってきて体が熱くなった。昨夜のエリアスはカッコよすぎた。今でも彼の残り香が体についている気がする。
手を伸ばし、パラパラと古文書をめくった。相変わらず何て書いてあるかわからない。ふと、挿し絵があることに気づいた。絵なら何かわかるかもしれない。俺は一枚の挿し絵に目を留めた。
その絵はドラゴンが化け物に捕まえられている場面が描かれてあった。でも、ドラゴンは手に何か光るものをもっている。そして、別の二人の男…剣を持った騎士のようだ、それが化け物に斬りかかっている、そんな絵だ。
うーん、ワケがわからんね…。
この捕まえられてるドラゴンって、昨夜のエリアスの話なら、今ならラースのことかな?どうなんだろう?昔こんなことがあったのかな?
光るもの…魔剣ルーカスとか?
やっぱり俺には関係ないんだろうな。それに、この絵の二人はきっと伝説の竜騎士だ。今ならエリアスとフィリックスがあてはまる。俺はその本をパタンと閉めた。部屋に帰ろ…。俺は自分の部屋に戻ることにした。
エリアスから預かってる鍵を閉めて、俺はフィリックスの部屋に向かう。彼の居候である俺はそこが帰る場所。
部屋の鍵は開いていたので、静かに入る。昨夜は疲れて風呂も入らずエリアスの腕の中で眠った俺は、そのままシャワーへ直行した。
熱いお湯が全身を洗い流す。この腕も、胸も腹も唇も…全てエリアスに触れられたところ。そこを名残惜しそうに撫でながら俺は全身を洗った。
バスルームから出ると、フィリックスがバタバタと甲冑をつけている。…気づかなかった。
「どうしたの?」
「モンスターが出て、ハムザから緊急に出動要請だ、…オリオン号が少し調子が悪いんだが…ラースも出てもらえるか?エリアスの部屋にシンを呼びに行こうと思ってたんだ」
フィリックスは俺がエリアスのところにいるのがわかってたのか…。
フィリックスが俺の髪の匂いをかいだ。
「俺と同じ匂いになった…よかった」
「え?」
「いや…。急げるか?ドラゴン舎へ先に行ってるからすぐ来てくれ」
「あ、はい!」
何か口ごもりかけながらも、急な要請なのでフィリックスは先にいってしまった。俺も急いで甲冑を身につけて準備をし、部屋をあとにした。
ドラゴン舎に行くと、オリオン号がフィリックスに色々と調べられていた。表情が冴えなくて調子が悪いのだとわかる。
「熱があるの?」
「微熱くらいかな…どこも悪くはないんだよな…なんでだろうな…オリオン号、出られるか?」
フィリックスの問いを聞かず、オリオン号がラースを離さない。
「どうしたオリオン号…?」
「どうしたの?」
俺は怪訝そうに眉をしかめるフィリックスに尋ねた。
「昨夜からオリオン号がラースを側に置いて離さないんだよな…なんで?」
オリオン号はラースを抱いて離さない。ラースは困った顔で俺をちらりと見る。
『オリオン号はラースに戦闘に出てはいけないと言ってるぞ』
俺のピアスからガラが話しかけてきた。ムスーッとしたオリオン号が、なんか変なオーラを出して俺たちを威嚇している。
「何を察知したんだオリオン号…ラースに何かあるのか?」
ラースは困った顔で俺のほうを見ている。
「急ぐんでしょ?ごめんオリオン号、いかなきゃ。ラース、いくよ」
俺がラースを呼ぶと、ラースはオリオン号を説得するように鼻をこすりつけた。渋々ラースを手放したオリオン号が悲しげに声を漏らすと、ラースがオリオン号に頬擦りをする。
取り急ぎ、ヘラクレス号と一緒に一気に飛び立ち現場に向かうと。
汎用竜が傷ついて倒れている。ケルベロスが走り回り、騎士たちが剣を奮って戦う凄惨な現場に俺は驚いた。
エリアスがモンスター相手に苦戦していた。トゥルキとハムザもドラゴンで戦うも、優勢ではない。カイザー号は肩をいからせて息をしていて、魔力をかなり消費しているのがわかる。エリアスもモンスターの返り血を浴び、かなり疲弊していた。
それもそのはず、モンスターの数が多すぎる。地上も地下も俺が見たうちでは今までの最大数だ。
現場に着くなり口から火焔を吐き散らしモンスターを焼くオリオン号。それを見た騎士団と竜騎士達の士気が上がった。
すると。
そこにいたモンスターの視線が一気に俺たちのほうを向いた。正しくは、ラース。
俺の血の気が下がり、恐怖に凍りついてしまった。
モンスターの一匹が形態変化してたくさんのコウモリに変わり、俺たちに押し寄せる。ラースは俺を乗せてヘラクレス号から飛び立ち逃げようとする。でも、コウモリの群れに直撃され、体制を崩した。
ぐらり、と俺の体が傾き、俺はラースから空中で離れた。それは落下を意味する。
「あ」
俺は真っ逆さまに地上に向かって落ちていく。
と、思ったら、モンスターが俺に向かってきた。下に回り込んで俺を背中に落とし、飛び去ろうとする。
「シン!」
フィリックスが俺を助けようとしてオリオン号と飛んできた。ラースはコウモリに襲われている。地上が近く、俺は逃げるためにモンスターの背中から地上へと飛び降り魔剣ルーカス号を抜いた。フィリックスもオリオン号から飛び降りてケルベロスを斬りつけながら俺のもとへ走ってくる。そのままオリオン号はラースのもとへ飛んでいき、ゴォ!っと火焔が吐かれコウモリが一掃されるのが見えた。
エリアスやヘラクレス号は空にいる大きなモンスターを倒すのに集中している。その一匹が俺たちに向かって急滑降して襲いかかってきた。近くの岩場が爆発しフィリックスが俺に抱きついて転がる。
フィリックスの額に血が流れている。岩の破片が当たったのかもしれない。
「シン、俺の側を離れるな」
フィリックスはそう言ってモンスターに立ちはだかった。モンスターの口がパカッと開き、奥から光が生じるのを見た瞬間、視界が真っ赤になり、目の前が爆発した。
え、何…!爆発のせいで一瞬耳が聞こえない。耳が戻るとフィリックスが大声で何かを叫んでいた。
血まみれになってモンスターに火焔を吐き、爆発させるオリオン号が目の前にいる。オリオン号が盾となって攻撃を直接受けたのだ。彼に助けられるのは2回目だ。モンスターはオリオン号の火焔で木っ端微塵となって爆発の炎を上げている。
「オリオン号!オリオンっ!何で…!」
フィリックスが叫びながら倒れているオリオン号にすがり付いていた。オリオン号は血まみれでボロボロになっている。
「フィリックス…無事でよかった…」
オリオン号の声が聞こえ、彼の体がすぅっと赤く光った。
柔らかなたてがみが固く尖ったものに変わっていく。鱗の赤がもっと赤く虹色に輝き、体を覆っていく。
翼はもっと大きくなり、体も大きく、引き締まっていく。
「オリオン…?」
フィリックスが震える声で彼を呼んだ。
「今度はあの時みたいに負けないからな」
「今度…?あの時…?オリオン?」
オリオン号の言葉にフィリックスが眉を寄せる。
「オリオン…?まさかお前、俺のオリオン…?」
前に俺に話してくれた話。幼い頃、自分を庇って死んだはずの赤いドラゴン。死体をハンターに持ち去られ、取り返すこともできなかった幼いフィリックス少年の話。それが生きていて、目の前のオリオン号だと気づいたフィリックスは、信じられないような驚愕の表情になった。
そして。
目の前のオリオン号は壮麗なオーラを纏う、伝説のドラゴンへと変貌していた。
昨夜、大人の階段を昇ったシンです。
あれから体が痛くて動けずにエリアスの部屋に泊まった俺は、鳥の声で目を覚ました。まだ朝の五時だ。隣を見ると、エリアスはいなかった。おそらく仕事にいったのだろう。
ふと、机に置いてある古文書が目に入る。俺は重い腰を上げてぺたぺたと裸足で机まで歩く。太腿の付け根と腰と背中と足が痛…。
でも、昨夜のエリアスを思い出すだけで胸が高鳴って切なくて。
俺はエリアスと…。昨日の映像が甦ってきて体が熱くなった。昨夜のエリアスはカッコよすぎた。今でも彼の残り香が体についている気がする。
手を伸ばし、パラパラと古文書をめくった。相変わらず何て書いてあるかわからない。ふと、挿し絵があることに気づいた。絵なら何かわかるかもしれない。俺は一枚の挿し絵に目を留めた。
その絵はドラゴンが化け物に捕まえられている場面が描かれてあった。でも、ドラゴンは手に何か光るものをもっている。そして、別の二人の男…剣を持った騎士のようだ、それが化け物に斬りかかっている、そんな絵だ。
うーん、ワケがわからんね…。
この捕まえられてるドラゴンって、昨夜のエリアスの話なら、今ならラースのことかな?どうなんだろう?昔こんなことがあったのかな?
光るもの…魔剣ルーカスとか?
やっぱり俺には関係ないんだろうな。それに、この絵の二人はきっと伝説の竜騎士だ。今ならエリアスとフィリックスがあてはまる。俺はその本をパタンと閉めた。部屋に帰ろ…。俺は自分の部屋に戻ることにした。
エリアスから預かってる鍵を閉めて、俺はフィリックスの部屋に向かう。彼の居候である俺はそこが帰る場所。
部屋の鍵は開いていたので、静かに入る。昨夜は疲れて風呂も入らずエリアスの腕の中で眠った俺は、そのままシャワーへ直行した。
熱いお湯が全身を洗い流す。この腕も、胸も腹も唇も…全てエリアスに触れられたところ。そこを名残惜しそうに撫でながら俺は全身を洗った。
バスルームから出ると、フィリックスがバタバタと甲冑をつけている。…気づかなかった。
「どうしたの?」
「モンスターが出て、ハムザから緊急に出動要請だ、…オリオン号が少し調子が悪いんだが…ラースも出てもらえるか?エリアスの部屋にシンを呼びに行こうと思ってたんだ」
フィリックスは俺がエリアスのところにいるのがわかってたのか…。
フィリックスが俺の髪の匂いをかいだ。
「俺と同じ匂いになった…よかった」
「え?」
「いや…。急げるか?ドラゴン舎へ先に行ってるからすぐ来てくれ」
「あ、はい!」
何か口ごもりかけながらも、急な要請なのでフィリックスは先にいってしまった。俺も急いで甲冑を身につけて準備をし、部屋をあとにした。
ドラゴン舎に行くと、オリオン号がフィリックスに色々と調べられていた。表情が冴えなくて調子が悪いのだとわかる。
「熱があるの?」
「微熱くらいかな…どこも悪くはないんだよな…なんでだろうな…オリオン号、出られるか?」
フィリックスの問いを聞かず、オリオン号がラースを離さない。
「どうしたオリオン号…?」
「どうしたの?」
俺は怪訝そうに眉をしかめるフィリックスに尋ねた。
「昨夜からオリオン号がラースを側に置いて離さないんだよな…なんで?」
オリオン号はラースを抱いて離さない。ラースは困った顔で俺をちらりと見る。
『オリオン号はラースに戦闘に出てはいけないと言ってるぞ』
俺のピアスからガラが話しかけてきた。ムスーッとしたオリオン号が、なんか変なオーラを出して俺たちを威嚇している。
「何を察知したんだオリオン号…ラースに何かあるのか?」
ラースは困った顔で俺のほうを見ている。
「急ぐんでしょ?ごめんオリオン号、いかなきゃ。ラース、いくよ」
俺がラースを呼ぶと、ラースはオリオン号を説得するように鼻をこすりつけた。渋々ラースを手放したオリオン号が悲しげに声を漏らすと、ラースがオリオン号に頬擦りをする。
取り急ぎ、ヘラクレス号と一緒に一気に飛び立ち現場に向かうと。
汎用竜が傷ついて倒れている。ケルベロスが走り回り、騎士たちが剣を奮って戦う凄惨な現場に俺は驚いた。
エリアスがモンスター相手に苦戦していた。トゥルキとハムザもドラゴンで戦うも、優勢ではない。カイザー号は肩をいからせて息をしていて、魔力をかなり消費しているのがわかる。エリアスもモンスターの返り血を浴び、かなり疲弊していた。
それもそのはず、モンスターの数が多すぎる。地上も地下も俺が見たうちでは今までの最大数だ。
現場に着くなり口から火焔を吐き散らしモンスターを焼くオリオン号。それを見た騎士団と竜騎士達の士気が上がった。
すると。
そこにいたモンスターの視線が一気に俺たちのほうを向いた。正しくは、ラース。
俺の血の気が下がり、恐怖に凍りついてしまった。
モンスターの一匹が形態変化してたくさんのコウモリに変わり、俺たちに押し寄せる。ラースは俺を乗せてヘラクレス号から飛び立ち逃げようとする。でも、コウモリの群れに直撃され、体制を崩した。
ぐらり、と俺の体が傾き、俺はラースから空中で離れた。それは落下を意味する。
「あ」
俺は真っ逆さまに地上に向かって落ちていく。
と、思ったら、モンスターが俺に向かってきた。下に回り込んで俺を背中に落とし、飛び去ろうとする。
「シン!」
フィリックスが俺を助けようとしてオリオン号と飛んできた。ラースはコウモリに襲われている。地上が近く、俺は逃げるためにモンスターの背中から地上へと飛び降り魔剣ルーカス号を抜いた。フィリックスもオリオン号から飛び降りてケルベロスを斬りつけながら俺のもとへ走ってくる。そのままオリオン号はラースのもとへ飛んでいき、ゴォ!っと火焔が吐かれコウモリが一掃されるのが見えた。
エリアスやヘラクレス号は空にいる大きなモンスターを倒すのに集中している。その一匹が俺たちに向かって急滑降して襲いかかってきた。近くの岩場が爆発しフィリックスが俺に抱きついて転がる。
フィリックスの額に血が流れている。岩の破片が当たったのかもしれない。
「シン、俺の側を離れるな」
フィリックスはそう言ってモンスターに立ちはだかった。モンスターの口がパカッと開き、奥から光が生じるのを見た瞬間、視界が真っ赤になり、目の前が爆発した。
え、何…!爆発のせいで一瞬耳が聞こえない。耳が戻るとフィリックスが大声で何かを叫んでいた。
血まみれになってモンスターに火焔を吐き、爆発させるオリオン号が目の前にいる。オリオン号が盾となって攻撃を直接受けたのだ。彼に助けられるのは2回目だ。モンスターはオリオン号の火焔で木っ端微塵となって爆発の炎を上げている。
「オリオン号!オリオンっ!何で…!」
フィリックスが叫びながら倒れているオリオン号にすがり付いていた。オリオン号は血まみれでボロボロになっている。
「フィリックス…無事でよかった…」
オリオン号の声が聞こえ、彼の体がすぅっと赤く光った。
柔らかなたてがみが固く尖ったものに変わっていく。鱗の赤がもっと赤く虹色に輝き、体を覆っていく。
翼はもっと大きくなり、体も大きく、引き締まっていく。
「オリオン…?」
フィリックスが震える声で彼を呼んだ。
「今度はあの時みたいに負けないからな」
「今度…?あの時…?オリオン?」
オリオン号の言葉にフィリックスが眉を寄せる。
「オリオン…?まさかお前、俺のオリオン…?」
前に俺に話してくれた話。幼い頃、自分を庇って死んだはずの赤いドラゴン。死体をハンターに持ち去られ、取り返すこともできなかった幼いフィリックス少年の話。それが生きていて、目の前のオリオン号だと気づいたフィリックスは、信じられないような驚愕の表情になった。
そして。
目の前のオリオン号は壮麗なオーラを纏う、伝説のドラゴンへと変貌していた。
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