異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ

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伝説のゆくえ

伝説の竜騎士が二人とも

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「オリオン…?」

フィリックスが言葉を失っている。以前も美しいドラゴンだったけれど、今の姿はそれ以上に進化している。体つきも筋肉質の逞しいカイザー号よりは細いけれども、体格はカイザー号と遜色ないほどになっていた。おそらくは記憶が戻り、本来の伝説のドラゴンの姿に戻っただけなのかもしれない。

「伝説の赤いドラゴン…やっぱり」
「やっぱり?シン?何を知ってる…?」

俺の呟きにフィリックスが怪訝な表情になった。あ、と口を塞いでももう遅い。

「フィリックスは伝説の竜騎士だったんだね、やっぱり、思った通りだ。死んだ親友ってオリオン号のこと?」

俺は上空で戦い続けるラースやエリアスを見ながら呆然と話しかけた。

「詳しいことは後で聞くとして、昔、俺はそう呼ばれてた。オリオンと共に生まれて、オリオンを失ったからもう伝説ではないと思って生きてきたんだ。俺が伝説なら…シン、シンは?」

俺はフィリックスのその問いに無言でにっこり微笑んだ。

「あーあ。伝説の竜騎士になりそこねたな」
「シン?」

フィリックスから少し離れる。

ケルベロスが俺たちを遠巻きに狙い、上空からはモンスターが飛び交っているまさに激戦の中だ。

「俺は何者でもないんだ。普通の…普通の男だよ。ラースも伝説に関係あるドラゴンみたいだけど、俺とラースは縁もゆかりもない。ラースは俺と同時期に近隣で生まれて拾われただけなんだ。だから、俺はただの人」

上空から数体のモンスターが俺をみつけたらしく、まっすぐに向かってくる。

「ちょっ…シン!お前狙われてるぞ!」

俺はそれを聞かずにラースを見た。ラースはヘラクレス号のサポートで戦っている。活躍してるなあ、さすがだ。俺は誇らしい気持ちになった。

俺が足手まといになるのは嫌だ。それに、どうせ…クビだろうな。帰ったら、荷物をまとめて帰ろうかな。ラースはここへ置いてもらおうかな…凡人の俺には遠い、偉大な人達と少しでも一緒にいられただけで幸せだったなぁ。

「シン!聞けっ!シン!!」

ケルベロスが俺を囲む。フィリックスが走って俺を庇って抱き締める。

その時、地面が大きく揺れ、轟音を立てて割れ、中から黒い大きなモンスターが現れた。見たこともない大きさで、黒いもやのような体に赤い目が光っている。そのもやが俺を取り囲んだ。そしてフィリックスをおしのけるように突き飛ばし、俺だけを捕まえる。

え?なんで俺?伝説の竜騎士はフィリックスなんだからそっち先に狙わない?
あ、取りあえず弱そうな方を選んだのか。じゃあ仕方ないな…。

「逃げろシン!」

フィリックスが怒鳴る。でも俺はしっかりと捕らえられてしまって動けないんだ。それに気づいたラースとヘラクレス号、エリアスが空の戦闘から離脱してこちらに向かってくるのが見える。

ヘラクレス号が光の攻撃をモンスターに向けて放つけれど、もやの体はそれをすり抜けていく。ラースの冷凍波も効かなかった。なんだこれ、めちゃくちゃ強くない?

エリアスとフィリックスがカイザー号とオリオン号に乗り、モンスターに攻撃を始める前に二匹で周囲のケルベロスとモンスターを雷撃と火焔で一掃した。

うわぁ、ガチギレしてる…!幼い頃、よくテレビアニメや特撮ものを見て思ってたんだけど、今まで苦戦してたのなんだったの?はじめからこのテンションで戦ってればよかったんじゃね?あ、そうなったら面白くないのか…。いや、俺ピンチなの。
でも、伝説二匹が揃うとすごいんだ…。

《やっと、見つけた…》

え?

そう思ったとき、俺の視界が真っ白になり、フィリックスがその一瞬前に俺のもとへ飛び込んできて俺を抱き締めてもやから奪いとりそのままの勢いでモンスターの手から飛び出すように転がり出た。次にモンスターを見た瞬間、それはものすごい轟音と共にエリアスの雷撃に包まれて塵と消えていった。

《シン…シン…!》

え?俺の名前をなんで知ってるの?手をこちらに伸ばしながら細く、薄くなっていく。俺を呼ぶモンスターの声も小さくなり、消えた。

どこかで聞いたことがある、この声。俺の中のどこかが知ってる…。いや、知らない人?モンスターだよ?まあ、フィリックスにあれだけ呼ばれりゃモンスターでも覚えるか。

モンスターは消滅した。それと同時にケルベロスたちの屍まで消滅するのには驚いた。
でも、聞こえてしまったんだ。最後のもやが消えるとき。

俺、フィリックス、エリアスの耳にはっきり残ったモンスターの最後の一言は。

《俺のシン…》

は?俺の?誰の?どちら様の?

その薄くなってほとんどわからなくなったもやをラースが吹き散らかしながら吠えた。

「俺のシンとか生意気な!」

いやそれ、ラースが言うのかよ?
ドラゴン全員総ツッコミだった。ラースは俺を守るように胸に抱え、鼻を頬にすりつけた。

「ごめんね、ごめんね、守れなかった…」

必死に謝ってくるラースが可愛くて、俺は首にしがみついた。

「シン…」

エリアスとフィリックスが俺に近づいてくる。俺はラースに額をくっつけて、ひと呼吸すると、二人に向き直って告白した。

「俺ね、ほんとは伝説の竜騎士でもなんでもないんだ、ラースとは幼馴染みというだけで生まれつき一緒に生まれた訳じゃないの」

エリアスとフィリックスの目が見開かれる。ほら、驚いてる。

…二人とはもう、さよならなのかな。そう思うと目の前が滲んでくる。

エリアスとフィリックスがお互いの顔を見た。目を合わせて数秒見つめ合う。俺の処遇をアイコンタクトで確かめてる?クビだよな…騙してたんだもん、嫌われて当然…

パン!と手を打つ音がして、俺はビクッと肩を震わせて目を瞑ってしまった。

殴ったの?

あれ?二人とも笑ってる。それに、どう見てもそのポーズはハイタッチしたあと…のようだ。
ハイタッチ?

「じゃあ、俺はこれから伝説の竜騎士の運命とか全く気にせずシンと結ばれていいってことだな」
「ですね、俺も伝説の竜騎士に戻れたので、エリアスと立場が同じになったということで、遠慮なくいきますね」

ん?

「ま、シンは自分で伝説の竜騎士だなんて一言も言ってないしな。だからお前は今から竜騎士団員の一人ってことで。そして俺の恋人…」
「シンは俺のです!」
「俺もう結ばれた…」
「結婚するんじゃあるまいし。シンも大人ですよ、大人の男の恋愛はフリーですよエリアス」
「フィリックス、意外…おまえ自由だな…驚かないのか」
「遅れをとりましたが今夜にでも」

何の話をしてるんだ…あんたたち。
俺のクビは繋がったもようでした。






























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