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11 愛が燃えるそうです

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 ロアくんに連れられてギルドの外に出た。

 パパが、ギルドと街を隔てる巨大な壁を見上げて呟く。

「この街を隔てる壁は何だ……」

 言われて気付いたけど、ここからだと街に入る方法がないよね。
 派遣ギルドのみんなは街で生活してないのかな。

「その壁の向こうにあるのはエルドラの街だ。巨大な壁は危険なモンスターの侵入を防いでくれる」

「なら、どうして派遣ギルドは街の外にあるんだ……? モンスターが出たら危険だろう……」

「国が認めた正式なギルドは街の中にある。奴らはモンスター討伐の他にも、貴族が娯楽に使うアイテム集めのクエストなんかも高額で請け負ってるからだ」

 キゾク? 偉い種類のニンゲンの事かな?

 不貞腐れた顔で話しながら、ロアくんがローブのポケットから瓶を取り出す。

「リュカがくれたこのタートルの体液もそうだ。これは手に負えなかった危険なクエストを、街のギルドがうちに回してきたんだ。あいつら、面倒事はうちに押しつけてくるからな」

 そうだったんだ。
 たまたま、エレファントタートルを狩って来て良かった。

 もしかして、街の中のニンゲンは意地悪なのかな? 派遣ギルドって色々と大変みたい。

「落ちこぼれで信用の無い派遣ギルドは、貴族からクエストを貰えない。基本は人手不足の手伝いと、街の外で害獣と呼ばれるモンスターの退治をやるしかない」

 派遣ギルド宛のクエスト依頼をロアくんから受け取り、パパと2人で目を通す。

 エレファントタートル討伐、及び体液の採取。
 私は甲羅ごと真っ二つにしちゃったけど、クエストには尻尾を切って体液を取る方法が書いてあった。

 報酬はよく分からない、結構なお金が貰えるみたい。

「これが貴族からの依頼とはな……そこまで貴重なものには思えんが……」

「この体液は飲むと愛が再び燃え上がるんだとか……つまり、熟年夫婦に愛用されていて、依頼を出すのもそう言った悩みを抱えてる人達が殆どだ」

「なるほどな……もしかしたら、オレはレギオスにとんでもない勘違いをされてるかも知れん……」

 何故か、2人だけで頷きあっている。

 何となく意味は分かるけど、除け者にされた気分。
 私も混ぜて貰おうっと。

「ねぇ、愛が燃え上がるってなに⁇」

「「リュカは知らなくていい」」

 息ぴったりに2人が声を揃える。

 知ってるのに……。

 派遣ギルドの説明を受けながら森の奥へ進む。

 大きな岩場に辿り着き、ロアくんの足が止まった。

「ここは翼竜の住む岩場だ。ここで実技テストをさせて貰うよ」
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