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第一話 「堕ちた女帝」
しおりを挟む【第一部のあらすじ】
城内での「影の権力者」として絶大な影響力を持つ侍女長クロミス。
若干130歳の少年王パティアスの王位継承で激化した水面下での政争に上手く乗り、その権力は最高潮に達する。
侍女長が王と王妃の房事の「お手伝い」をするという昔からの伝統を悪用し、王と王妃、そして若い侍女のリュネ達をまるで性奴隷のように扱い、自らのサディスティックな性癖を満たしていたクロミスだった。
「・・・・もう、潮時ですな・・・これ以上は・・・でしょう?エウベモス殿」
「・・・・左様・・・ご一緒にルビゴン河を渡りましょう、ベイレス様」
ミトレス城から、9スタディオンほど離れた王家専用の牧場の作業小屋。
堆肥のニオイも漂ってくるその汚い小屋の中で、金細工で飾られた鎧の上に真紅のマントを着た体格の良い壮年の男と、いかにも高貴そうな真っ白なローブを纏った初老の男が搾りたてのミルクを飲みながら対面していた。
騎士団の隊長らしい黄金の階級章を着けたその男は、「ミシレ騎士団」の団長エウベモス。
対する初老の男は、王家派の筆頭「ランズ家」の現当主ベイレスだった。
「あの男もちょっとやり過ぎたな・・・摂政テレゴノス、それに与するカドモス家の者共、ああいう小才覚と独占欲の塊のような男が政に関わるとろくなことはない」
「・・・城内での王権への越権行為、侍女達への性的虐待、王室財産の私領への移転・・既に証拠は確保しております、ベイレス様」
「・・・・逮捕は早い方がいいかな・・・・」
「・・・・今夜・・・実は既に、城の内部に30人程、団員の者を忍ばせております」
「さすがはミシレ騎士団の団長エウベモス殿!・・・準備万端ですな」
ベイレスが感心したように髭を撫でる・・・・。
「ミシレ騎士団」・・・それは普段はお城の庭師となって王の警護に当たっている、王家に直接仕える秘密騎士団である。
決して表には出ず、軍に属さず、表立って戦争にも参加しないが、貴族の限られた子弟しか入団を許されないエリート集団なのだった。
その騎士団長であるエウベモスが、現「摂政」テレゴノス一派と対立関係にある王家派の筆頭、ランズ家の当主ベイレスと田舎の牧場で密談をしているのだった。
若干130歳の少年王、パティアスの即位と共に王国の政治状況は一気に緊迫の度を増した。
それまで権力からやや遠い所にあったテレゴノスが、代々、城内で一定の影響力を保っているカドモス家を抱き込み、電撃的に摂政に就任したのである。
・・・実は侍女長クロミスもカドモス家の家系なのだ。
彼女の侍女長としての城内での影響力を使い、テレゴノスとカドモス派が権力の濫用、私物化を進めているという噂・・・それは王家派の筆頭「ランズ家」の現当主ベイレスと、ミシレ騎士団の団長エウベモスの耳にも入ってきていた。
彼らを一気に城内から排除すべく、今夜行動が起こされるのである。
「・・・それでエウベモス殿、あの女狐奴はどうしましょうな・・・」
「ははっ・・・あの色狂いは処刑するほどでもないでしょう、ただ王と王妃、そして侍女達に相当無茶をしておりますからなぁ、身柄は拘束しますので、後はどうぞご随意に」
「・・・うむ、姪のリュネが相当痛めつけられたのでな・・・」
「・・・・お察しします・・・まったくあの魔女めが・・・・」
その夜、城内には時ならぬ一陣の嵐が巻き起こった。
ランズ家を中心とする王家派と、王直々の秘密騎士団の協力によって、奸臣テレゴノス及び、カドモス家の息のかかった者達が一網打尽にされたのである。
侍女長クロミスは、事前のその動きを察して、商船に紛れ込み植民都市へ逃亡したものと発表された・・・。
「おっ、お前達っ・・・私を誰だと思っているのっ!巫山戯た事をすると承知しませんよっ!!」
・・・・ミトレス城から遠く離れた国境付近のラケシス砦。
四隅に煌々と松明が焚かれて、少し汗が流れるくらいに蒸し暑い地下室・・・その、窓が一つもない圧迫されるような堅牢な造りは、いかに美しいレリーフで装飾を施そうとも、やはり「砦」の地下室には変わりない。
この国境付近にポツンと聳え立つ古びた石造りの砦は、現在は使用されていない。
もうずいぶん前に、隣国との和平及び通商協定が成立したからである。
現在は人知れず、王直属の秘密騎士団「ミシレ騎士団」の拠点となっているのだった。
その辺鄙な廃墟同然の砦に、2日前に人目につかないように移送されてきた人物がいた。
・・・そう、クロミスである。
手枷足枷をされたクロミスが、砦の地下室の中央に据えられた大きなベッドの上に放り出される。
連行してきた四人の男達は、全員黒い覆面をしておりその人相もクロミスには判らない。
しかし、その屈強な体、鍛えられた筋肉からしておそらくは軍の者かもしれない・・クロミスはそう考えていた。
その覆面の男達はミシレ騎士団の団員達なのだったが、クロミスさえもその秘密の騎士団の存在を知らなかったのだ・・・。
あの夜、直前になって異変を察知したクロミスは、城から逃亡を図るも、すぐに変装して城内に潜伏していた騎士団員に捕らえられた。
そして秘密裏に馬車でこの砦に移送されてきたのである。
覆面の男達は、無言でクロミスをベッドに仰向けにし、大の字にした手足を鎖でベッドの四隅に固定する。
「何をするかっ!無礼な!・・・今すぐこの鎖を外しなさいっ!お前達っ、聞こえないのっ?私を誰だか知っての狼藉か?」
クロミスがバタバタと暴れるが、両手両足を開かれたまま鎖で固定された身では、もはや逃れようもなかった。
はだけた侍女服のスカートの裾を気にして、腰をくねらせるクロミス。
「・・・・もちろんっ・・・知っての「狼藉」ですわ・・・」
ギギッ・・・と音を立てて開いた、頑丈な地下室の鉄の扉から入ってきたのは、クロミスの良く知っている人物だった。
「えっ?ええっ?・・・お、お前は・・・リュネっ?・・・ど、どういう事?」
普段城内で着ている侍女服ではなく、赤糸の刺繍の入った美しい黒いドレスを纏って見違えるように大人びたリュネが嘲るような笑いを浮かべて囚われたクロミスを見下ろす。
「リ、リュネっ・・・これは一体どういう事なのっ?何でこんな所にお前が・・・」
混乱するクロミスを哀れむように見ながら、リュネが男達に合図をすると、覆面の男達は無言で地下室から出て行った。
「・・・ふうっ・・お城では随分とお世話になりました・・・リュネでございます」
「り、リュネっ・・・教えてっ、これはどういう事なのっ?摂政のテレゴノス様はご無事なの?配下の者達は?」
「・・・テレゴノスも、カドモス派の者達も、今頃は船で流刑地に向かっている頃かなぁ・・・一人も斬首にならなかったのはピュリア様のご慈悲と聞いていますが・・・」
本来ならば、奸臣テレゴノスとその一派は見せしめのために広場で公開処刑のはずなのだが、ピュリアがパティアスを通して助命を嘆願したのだった。
国は一枚岩でなくてはならない、処刑は新たな憎しみの種を撒くだけであると・・・。
「・・・・ピ、ピュリア様の・・・・」
クロミスも大方、現在の自分の立場を悟った様だ。
「・・・大丈夫よ、貴方は流刑にはならないし、当然処刑なんてされないから・・・安心してくださいまし」
「・・・リ、リュネ・・・でも、どうしてお前が・・・・」
「・・・ご存知なかった・・・私、ランズ家の者なんだけど・・・もっとも貴方の見ていた侍女名簿にはそうは書いていなかったのですから、知らなくて当然なんだけどねぇ」
リュネが、失脚した摂政テレゴノス及び、自分の出身であるカドモス家と対立していた、王家派の筆頭「ランズ家」のゆかりの者だと知って、クロミスは鳥肌が立つほど震えはじめた・・・。
「・・・・リ、リュネっ・・・し、知らなかったのっ!・・・お、お願いっ、許してっ」
「侍女長」という立場を悪用して、王と王妃をオモチャを弄ぶようにセッ〇スさせ、若い侍女達もその毒牙にかけていたクロミスの所業は、リュネを通して全て王家派に筒抜けだったという事だ。
クロミスは、実は同性を性的にイヂめることで快楽を得るサディストだったのだ。
今まで何人もの侍女達が彼女に恥ずかしい行為を強要され、増長したクロミスはついに王妃をも性奴隷のように扱い始めた。
リュネもクロミスによってその処女を奪われ、彼女の性処理人形のように使われていた被害者なのであった・・・。
「・・・あははっ、安心なさって・・・「元」とは言え侍女長様に対しては、ヒドい事などいたしませんわ・・・」
「・・・よ、よかった・・・ありがとう、リュネさん・・・」
ポフッ!・・・とベッドに腰を掛けたリュネが、大の字に鎖で固定されているクロミスのはだけたスカートの裾から見える、ムッチリとした太腿へと手を伸ばす・・・。
430歳・・・人間で言えば43歳ほどになる成熟したクロミスの太腿はムッチリとした張りがありオトナの色気をムンムンと振りまいている。
ずっと焚かれている松明の火のせいで暖かい室内、その肌はジトッ・・と汗で濡れている。
「・・・ああ、イヤっ・・・何するのっ、リュネっ・・・いっ、いえリュネさん・・・」
「・・・うふふっ、そんなに怖がらなくていいわ・・・あっ、さっき言い忘れたけど謀反人、侍女長のクロミスは商船に紛れて植民都市に逃亡したらしいわねぇ・・・」
「・・・・えっ?」
430歳のクロミスの脇から冷たい汗が流れる・・・・。
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